課題

データは、不正確な情報や作業を行う人の判断によって、バイアスが混入してしまうことがあります。さらにそうしたデータをAI(人工知能)で処理した場合、公平性に欠ける結果や誤った意思決定につながる恐れもあります。

刑事裁判や金融業界、顔認証といったさまざまな場面で、AIの公平性について、重大な問題が多く指摘されるようになっています。この問題は、AIを活用するすべての企業に影響を及ぼします。そのため各国政府は具体的な対策に乗り出しており、一部の国や地域では、この問題に対応できる規制の確立が急務となっています。

アルゴリズムに潜むバイアスを低減するためのアプローチの多くは、まだ初期段階にあります。予測モデルのバイアスを評価、低減する定量的な手法はあくまで学術的な成果であり、現時点では理論上の問題解決にしか用いられていません。

アイルランド最大の銀行であるアライド・アイリッシュ銀行 (AIB) は、こうした手法をリテールバンキング業界の実際のシナリオに応用したいと考えました。

その狙いは、AIの公平性の領域でデータの利用方法に関する業界内のベンチマークを打ち立て、業界をリードすることにありました。これにより、AIBはカスタマーファーストという自社のブランド価値に根差したビジネスを展開し、より高い信頼と評価を獲得したいと考えたのです。

AIBは、アクセンチュアと協働して、社内データサイエンスチームのナレッジをこの分野の最新レベルまで引き上げ、意思決定支援に使用するモデルとアルゴリズムの公正性評価との統合をさらに強化することを目指しました。

"「アクセンチュアとの協働によって、アルゴリズムの公平性を評価する最新の手法を理解し、迅速に導入することができました。今日のビジネス環境において、当社をはじめ、お客様や社会全体にとっても、信頼がかつてないほど強く求められるようになっています。最新の評価手法は、お客様や社会からの信頼を維持し、さらに向上させる上での重要な役割を果たしています」"

— JOHNATHAN DUGGAN, データ&アナリティクス最高責任者-AIB

アクセンチュアの取り組み

このプロジェクトは、最先端のテクノロジーとビジネスへの適用、ビジネスデザインに関する知見を備えたアクセンチュアのエキスパートチームとAIBとの緊密な協働によって進められました。AIBが責任をもって正確かつ効果的にAIを全社規模で活用する上での課題への理解を深め、それらの克服に取り組みました。

アクセンチュアはR&Dラボにおける調査研究をもとに、クライアント企業との協業を通じて、学術的な研究成果を実際のビジネスのユースケースに直ちに応用することができます。

アクセンチュアとAIBのメンバーで構成させるプロジェクトチームは、バンキング業界におけるアルゴリズムの公平性を評価するモデルに、新たな手法を適用することにしました。アクセンチュアのレスポンシブルAIチームが英国のアラン・チューリング研究所と共同で行った1週間のハッカソンの成果をもとに、新たな評価手法に必要なツールの開発とテストを分野横断的なアプローチで実施しました。

このアルゴリズムの公平性評価ツールは、データサイエンティストやビジネスユーザーが実際の課題に応用することができ、プロジェクトチームはPoC(概念実証)で得られた知見をビジネスのユースケースに当てはめていきました。そこへマーケットで使われているデータサイエンスツールを統合して、既存のワークフローに公平性分析のプロセスを追加しました。

分析結果はビジネスユーザー用のリポジトリに保存され、ビジネスユーザーは保存された分析結果をその他のステークホルダーと共有して、意思決定に役立てることができます。

アクセンチュアとAIBはツールの有効性を検証した上で、公平性の評価を行い、開発中の2つの新たなモデルにおけるバイアスを低減するには何が必要かを分野横断的に分析しました。その結果、現在のモデル開発プロセスにおけるいくつかの問題点が明らかになりました。この知見をもとに、チームはさらにバイアスの発生しそうな領域の調査を進め、モデル開発プロセスの意思決定の見直しと改善を行いました。

結果として、AIBはアルゴリズムの公平性評価ツールを活用することで、自社のデータとモデルが生み出す結果を公平性の観点からより深く理解できるようになりました。また、モデル開発中に混入するバイアスをさらに低減し、最終的なモデルの公平性に対して強い自信が持てるようになっています。

人とカルチャー

このソリューションの開発と検証においては、大きな可能性を有している一方、複雑な課題もあったため、多くの専門家のスキルセットが不可欠でした。

アナリティクスの専門家が学術研究者と協力したり、デザイナーがデータサイエンティストと協力したり、ビジネスの専門家がコンプライアンスの専門家とそれぞれに連携し、モデリングプロセスにおいて公平性を確保するための方法を模索したのです。

アクセンチュアは、開発から実装に至るすべての過程で、AIBと緊密に協働しながらプロジェクトを進行しました。たとえば、ツールの開発を進める一方で、イノベーションの創出を支援するアクセンチュアのグローバル研究開発施設である「The Dock」 でセッションを繰り返したほか、4カ月にわたってAIBにおいてオンサイトで業務にあたり、トレーニングを実施しました。これにより、バンキング業界ならではの複雑な課題への理解を深めながら、公平性評価ツールの検証と調整を進め、最終的にAIBの既存システムとのシームレスな統合を成功させることができました。

さらにアクセンチュアとAIBは、公平性評価ツールをAIBに全社規模で導入した場合の、意図した結果と予期せぬ結果の両方についての情報を集め、高度なロードマップでそれらの分析を行いました。

本プロジェクトでは、AIBとアクセンチュアの両チームが緊密な協働を通じて、AIBの顧客、また社会全体にとっての課題解決に向けて取り組みました。この時代の最先端を行く取り組みは、顧客のために最も効率的な手法で最も公平な意思決定を行うという、AIBの企業文化をはっきりと示しています。

創出された価値

アクセンチュアは、世界のあり方と仕組みの改善という日々進化するミッションの中核的なテーマとして、正しいことを行うためのイノベーションの実現に大きな力を注いでいます。アルゴリズムの公平性評価ツールの開発は、まさにそのミッションから生まれた成果だと言えます。

本プロジェクトにおいて、アクセンチュアはAIBに新たなアプローチを提供しました。AIBのモデリングチームは現在、日々の業務で評価ツールを主体的に活用しています。

新たな評価ツールの活用によって、AIBはエンドツーエンドのモデルライフサイクルにおいてアルゴリズムの公平性という複雑な問題をデータ駆動型の手法で評価し、データサイエンティストや経営幹部が管理/理解できるかたまりへと落とし込んでいます。またこの評価ツールは、大規模データを扱う企業がAIを適用したり一般的な予測モデリングを活用する際に直面する最も重要な課題の1つとされているリスク低減にも効果を発揮しています。

さらに、本評価ツールによってAIBのデータサイエンス・チームは、最新の技術をバイアス評価に直ちに適用できるようにもなりました。

本プロジェクトによってAIBは、自社のモデル、AIの公平性、また新たなガバナンスモデルとツールに関する自信を身につけ、理解を一層深めることができました。AIBは現在、公平性と信頼性に優れたバンキングサービスの顧客への継続的な提供を実現しています。そして、AIの公平性の領域で業界リーダーとしてのポジションを確立し、来たる規制強化を予測して、それに向けた準備も進めています。

データドリブン

AIBは、アルゴリズムの公平性という複雑な問題をデータ駆動で評価する手法を、エンドツーエンドのモデルライフサイクルに統合することに成功しました。

信頼性に優れたバンキングサービス

AIBは、公平性と信頼性に優れたバンキングサービスを顧客に継続的に提供できるようになりました。

業界のリーダーポジションの確立

AIBは業界リーダーとしてのポジションを確立し、来たる規制強化に向けた準備を進めています。

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