デジタル時代の新たな大学の方向性について
あらゆるものがつながる超スマート社会「Society 5.0」の到来により、企業、組織のデジタル・トランスフォーメーション(DX)は待ったなしの重要課題となってきています。大学も例外ではなく、デジタル・テクノロジーを活用した、経営の効率化や学生サービスの強化への期待はかつてなく高まってきております。
大学におけるDXとしては、Robotic Process Automation(RPA)などの活用による事務の効率化に留まらず、データ活用による経営の高度化や、人工知能(AI)などの先端テクノロジー活用による学生・教員向けサービスの強化など、様々な場面で活用でき、今後の大学の成長を支える重要な基盤になると考えています。これらのDXで高い成果を上げる為には3つのキーポイントがあると考えています。
金融機関などの企業では、RPAやAIを活用し、事務処理は“ロボット”に任せ、“ひと”が付加価値の高い業務に注力する試みはもはや珍しくありません。金融機関同様に事務処理が多く、卒業・入学にあわせ業務量の繁閑差が発生する大学事務においても、高い効果が期待できます。
一方で、これらデジタルツールは闇雲に導入すれば良いわけでなく、効率化効果を継続して最大限享受する為には、全学横断的な取り組みとして適切なステップで導入していくことが肝となります。例えば、各ツールやエンジンにはそれぞれ得手不得手があり、更に技術的な進展は日進月歩であることから、複数のツール をHUB経由で提供・制御できる仕組みを実現することが有効となります。その他にも、導入に併せて、業務改革やセキュリティ対策を講じることも不可欠となります。
経営環境が絶えず変化し続け、個々人の志向が多様化する現代社会において、大学にても、今後はデータのチカラを最大限に活用した運営に転換してくことが求められています。例えば、学生獲得や退学防止など、経営に影響を及ぼす諸課題に対して、データによる科学的根拠に基づき早期に有効な打ち手を講じていくことは大変に有効となります。
一方で、個人情報の不正利用に対する不安増大や規制強化により、各種データの収集・取り扱いには十分な留意が必要となってきています。従って、学内外に点在する様々な情報のうち、収集すべき適切なデータを見極めた上で、DXの中核として、継続的にデータを取得・可視化できるような、セキュアなデータ・アナリティクス基盤を構築することが肝となります。一例として、明星学苑では、アクセンチュアと協創し、DXの中核として統合データベースをデジタルプラットフォームとして構築しています。
生粋のデジタルネイティブであるZ世代の学生は、普段利用している様々なサービスのように、大学が提供する学生生活や勉学を支えるサービスに対しても、いつでもどこからでも利用できる手軽さや、個々人の志向に合ったパーソナライズサービスを求めています。
学生の多様なニーズに応えていく為には、大学単体では限界があり、民間企業や自治体などとエコシステムを構築し、各種サービスを提供していくことが肝となります。教職員が対面中心に提供する従来からのサポートに加え、チャットボットなどのデジタルサービスを有機的に組み合わせ提供することは、学生の成長の手助けとなり、大学の魅力向上にも有益であると考えています。一例として、近畿大学では、アクセンチュアと協創しながら、ブロックチェーンをベースにしたデジタルプラットフォームの実証実験を実施し、より楽しく、自由に、学生生活が過ごせるようなサービスの提供に挑戦しています。