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トータル・エンタープライズ・リインベンション:持続的成長を実現する企業体質と日本企業の課題

概略

  • トータル・エンタープライズ・リインベンション(以降、TER)とは、グローバルリサーチを通じて抽出した、新たなフロンティアを探求し続けることで企業価値を持続的に高める新たな発想の戦略です。
 
  • この戦略を採用する企業は、CEOが業界・社会変革をビジョンとして掲げることで社内外の共感を集めながら、柔軟性と先進知見を具備したデジタルコアと共創型の働き方によって、飛躍的成長と経営の最適化を実現しています。
 
  • 日本に目を向けると、TERを標榜する企業の割合はグローバルと比して大きな差異はないものの、その成果期待が低いことがわかっており、ここに日本企業が抱える課題が垣間見えます。

トータル・エンタープライズ・リインベンション:“再創造企業“として産業・社会変革に挑み続ける企業の在り様

マクロ経済の不透明化、社会動向や消費者の嗜好性の多様化と急激な変化、地政学的な力関係の変化、気候変動による影響の激甚化、ディスラプティブテクノロジーの進化がますます進み、事業環境の不確実性は2017年から2022年の5年間で3倍も高まっています。

アクセンチュアのグローバルリサーチによって、こうした環境下において持続的に高い成長性を実現する企業(再創造企業)は、業界・社会変革を展望しながら新たなフロンティアを探求し続けることで、持続的に企業価値を高めていることが明らかになりました。

「Reinventors(再創造企業)」は、業界・社会変革に挑み続けることで継続的に高い成長を実現する
「Reinventors(再創造企業)」は、業界・社会変革に挑み続けることで継続的に高い成長を実現する

再創造企業は、全企業の約8%と限られた数ではありますが、その他の企業群(変革途上企業・部分最適企業)と比して、有意な成果を挙げています。

伝統的企業によるテクノロジー企業を模した成長性の獲得

「Reinventors(再創造企業)」は、テクノロジーの力を活用することで産業・社会を再定義し、その中で自社ビジネスを急拡大させるという、これまでテックジャイアントが得意としてきた戦い方に、伝統的な企業が挑んでいるとも捉えることができます。

実際、2018年から2023年までのグローバル時価総額ランキングを見ると、いわゆるテックジャイアントが上位ランクを維持するのと同時に、ヘルスケア、金融、生活必需品など伝統的産業のプレイヤーが継続して高い企業価値を実現しています。これは、伝統的企業でも戦い方を工夫すれば、不確実性を成長の糧としてデジタル企業と同様に高い企業価値を持続的に創出できることを示唆しています。

TERを実現した企業に見られる3つの特色

これらの企業の共通項を読み解くと、大きく3つの特色が掲げられます。

1.CEOによる共感性を生む野心的なビジョン

先進国を中心とした経済成熟の中において、旧来の市場・競争ルールの中でシェア競争とコスト最適を追求のみでは縮小均衡の構造に陥ることは自明です。TER型企業ではむしろ、産業自体を大きく変革させる、ひいては社会全体をも変革していくことで、これまでアクセスできていなかった潜在的な価値に触手を伸ばしています。

そのためには、CEOが高い目線で野心的なビジョンを掲げることで、既存事業の慣性力に縛られず大きな変革を仕掛ける姿勢、社内外のステークホルダーの共感を得ることで社会変革を進める体制を確保することが重要です。

2.業界・社会変革を駆動するデジタルコア

自社ならではの新たな価値を生み出すには、既存事業と新事業を横断したデータ集約とそれを活用した新たな価値創出、および自社戦略に即した先進技術の先駆的な活用が重要となります。

そのためにも、コアプラットフォームの弾力性やデータ流動性の確保と、先進技術の目利き力と活用力が求められます。

3.組織・企業を超えた共創型の働き方

探索的な成果を求めるのであれば、決められた業務を役割分担しながらコスト最適で行うオペレーションではなく、共創型の働き方が必要です。ビジョンとデジタルコアを社内のみならずエコシステムパートナーとも共有・接続し、会社という垣根を超えた共創が重要です。

図:TER - Total Enterprise Reinventionの要諦。3つの要素を併せ持つことが、Reinventors(再創造企業)として企業価値を高めるための必須条件
図:TER - Total Enterprise Reinventionの要諦。3つの要素を併せ持つことが、Reinventors(再創造企業)として企業価値を高めるための必須条件

日本企業によるTERへの取り組みと課題

グローバルリサーチを国別に見ると、日本でトータル・エンタープライズ・リインベンションに取り組んでいると申告しているReinventors(再創造企業)の割合は、グローバルと比して大きな差はありません。

一方、それらの企業が期待する成果はOptimizers(部分最適企業)と同等程度となっており、野心と成果への覚悟が低いことが懸念されます。そこで、その背景として考えられるTERに対する発想の違いと、そこから見えてくる日本企業がTER戦略により企業価値を飛躍的に向上させるための課題についてまとめます。

1. 現場主導色の強さ

日本はCEO・CFO・COOといった全社横断的な責任を負う経営による変革推進の割合が諸外国と比較して顕著に低く、部門レベルの取り組みとして変革が行われている傾向にあります。

市場の温度感や現場の自律性を重視することで社会の変化を機敏に読み解き、業界内でイノベーションを起こしていく意味では、高度成長期に日本企業が得意とした戦法を継続していると言えます。しかし、不確実性の高い世界において探索的に価値を模索すること、成熟した既存事業と短期的には競合する可能性があることを踏まえれば、より中期的かつ全社最適目線を担保できる姿勢と体制が求められます。

2. 先進技術活用に対する慎重姿勢

デジタルコアの構築がTER戦略の遂行に重要であることは疑う余地がありません。その中で、「2025年の崖」への対応やアジャイル開発の実践など、既存IT資産をアジリティの高い仕組みに転換することは日本企業も一定の取り組みがなされています。

一方、先進技術の活用に対するスタンスは、諸外国と比して保守的な傾向が見られます。

グローバル共通で見られる傾向として、Metaverse/web3に象徴される社会構造を変える可能性があるソフトウェア技術は相対的に意欲が低く(49%)、より具体的なハードウェアについては意欲が高い(75%)ことがわかります。

その上で、日本企業を見てみると、ハードウェア系はグローバルとほぼ傾向はかわらず(71%・4位)、一方でMetaverseに関しては、極めて大きな取り組み姿勢の差が明らかになっています(23%、5位)。

テックジャイアントは、ソフトウェア技術を急速に発展・浸透するものととらえ、その勢いを活用して一気呵成にグローバルに市場を席捲しています。そうした思想を当てはめると、ソフトウェア技術活用に慎重であることは、莫大な商機を逸するリスクがあるともとらえられます。

3. 企業文化への踏み込みの甘さ

TERを戦略に据えるには、一過性の対策ではなく常に変革をし続けるカルチャーの確立が必要です。

日本企業は、組織・体制面では即物的な障壁を課題としてとらえる傾向があり、こうしたカルチャーや経営モデルといったソフト面にまで踏み込んだ課題に意識が向いていないことが明らかになっています。

ビジネスパートナーとの連携においても、諸外国と比較してクラウド・ERPといった「モノ」を調達する発想が強く、ビジネスパートナーとの協業については一線を引いたクローズ主義の傾向が見受けられます。

日本企業が取り組むべきこと

日本企業のTERに対する姿勢を見る限り、その熱量と覚悟は諸外国に比して弱い傾向にあると言えます。

TER戦略のキモが、「継続的に全社を変革し、その延長線で産業・社会まで変革しながら不確実性を成長の糧として取り込み続けること」であること踏まえれば、慎重な姿勢では成果を実感する前に息切れすることが懸念されます。

地域的にみれば、日本は引き続き莫大な規模の経済が集約されており、イノベーション創出の素地もあること、また社会課題先進国であることを踏まえれば、むしろTERに相応の覚悟で臨み、足元の成長軌道の確立と社会課題解決ソリューションの海外展開によるグローバル覇権獲得を改めて模索することも一考に値するのではないでしょうか。

筆者

廣瀬 隆治

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ日本統括 兼 通信・メディア プラクティス日本統括 マネジング・ディレクター

村上 隆文

ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ日本統括 マネジング・ディレクター

中田 彰

ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ テクノロジー戦略 プラクティス プリンシパル・ディレクター