B2Bビジネスの再構築:通信サービスサービスプロバイダー(CSP)がコネクテッド市場で勝利するために
2021/10/25
2021/10/25
グローバルトレンドからも明らかなように、従来型の通信サービスプロバイダー(CSP)は現在、成長の鈍化に直面しています。2021~2024年における世界のCSP業界の収益は、前年比0.1%増とほぼ横ばいになる見通しです。こうした状況を踏まえると、B2B市場への参入に向けた大きな方向転換が不可避であることは、もはや明らかだと言えます。
結果としてCSPは、「大手クラウドベンダーといかにして差別化を図るか」といった多くの課題への対応に迫られています。CSPがB2B市場に方向転換するためには、B2C市場で培ってきたスキル、経営モデル、およびテクノロジーを刷新し、ビジネスのDNAそのものを変革しなければなりません。さらに、変革の実現に向けたジャーニーの過程では、パートナーシップを通じた新たなエコシステムを構築し、さまざまな能力を高めていく必要もあります。
CSPがB2Bポートフォリオを拡張するための2つの方向性
高度なネットワークテクノロジーを活用することで新たな製品領域を追加し、ポートフォリオを多様化する。
B2Bの顧客にとってのバリュープロポジションにつながる製品統合を行う。すぐに応用可能な統合的なユースケースとして、あるいはプロジェクトベースの業界横断型のソリューションとして顧客に提案を行う。
この2つの方向性の追求によって生み出される新たな領域において、CSPはB2B市場での真の差別化を実現し、以下の2つのサービスを提供できるようになります。
極めて高度なコネクティビティとコントロールド/エッジコンピューティングによって、リアルタイムかつギャランティ型のコネクティビティ/モビリティサービスとコンピューティングを提供するB2Bサービス。
エンドツーエンドかつキャリアグレードのサービス品質(QoS)を管理/運用する必要があるB2Bサービス。
CSPは、オンプレミスからコネクティビティ、クラウドにいたるまで、バリューチェーン全体でエンドツーエンドのオペレーションを実践し、高度なSLAを策定/保証できる資産と文化を備えた唯一の業界プレーヤーです。
CSPの変革ジャーニーは、コネクティビティプラットフォームの構築からスタートします。まず、新たなネットワーク/インフラテクノロジーを活用して、現在のコネクティビティを拡張する必要があります。次に、コネクテッドクラウドプラットフォームの構築を目指します。この段階では、エッジにソフトウェアの機能を持たせてコネクティビティサービスを拡張します。そして、最終的な目標はコネクテッド・クラウドインダストリー・オーケストレーターになることです。この段階に到達したら、エッジ機能とコネクティビティを活用して、垂直統合型のソリューションを構築します。
新たなアクセス技術、プログラマブルネットワーク、エッジコンピューティングを活用して、簡素な販売プロセスを特徴とする拡張されたコネクティビティポートフォリオとネットワーク帯域保証型のSLAを提供する。
コネクティビティプラットフォーム・サービスに、セキュリティ、データ処理、アナリティクスを組み合わせて、水平ギャランティ型のミッションクリティカルなサービスとICT SLAを提供する。
オーケストレーションと拡張によって業界向けサービスをパッケージ化し、バリューチェーン内でE2EオペレーションとQoS、および帯域保証型のE2EユースケースSLAを提供する。
5Gは、テクノロジートランスフォーメーションを成し遂げたCSPに大きな機会をもたらします。ただし、この機会を最大限に生かすためには、標準的なビジネスモデルから脱却して、成長のための新たなアプローチを模索しなければなりません。以下では、CSPにおけるB2B戦略の再構築について、アクセンチュアのリーダーたちが意見を交わした4分間の動画をご覧いただけます。
CSPにとって変革ジャーニーは、エコシステム全体を横断し、数年間にわたって全社規模で推進されるものです。さらに、このプロセスではボトムアップとトップダウンの両方のアプローチが求められます。
CSPはボトムアップのアプローチによって、コネクティビティ/コンピューティングの能力を標準化/自動化する必要があります。さらにトップダウンのアプローチによって、業界内のサプライチェーンプラットフォームに焦点を当て、以下の能力を活用したユースケースの標準化/自動化を進めていかなければなりません。
新たなユースケースとバリューケースを創造/設計する能力。
パートナーのサービスをプラットフォームに組み込むための能力。
業界固有のコンテキストに則したデータモデルを定義/再利用/進化させる能力。
エンドツーエンドのソリューションをリアルタイムで導入/運用/監視する能力。
CSPは、複雑かつミッションクリティカルな「コネクティビティ+クラウド」のQoSが求められるセグメントやユースケースに焦点を当て、エンドツーエンドのオペレーションを実現することで、大手クラウドベンダーとの差別化を図ることができます。
また、CSPはこれまで以上にエコシステムを重視することで、ボトムアップのアプローチによって有意義なパートナーシップを構築し、社内外のさまざまな能力を活用/提供することができます。さらにトップダウンのアプローチによって、ビジネスインテグレーターや業界内のパートナーとの協働も可能になります。
CSPは明確に定義された戦略によって、これまでのB2C市場における「コネクティビティ神話」から脱却し、スキルや経営モデル、プロセス、テクノロジーを刷新することができます。ここでは、新たなプラットフォームを構築してテクノロジー関連の能力を開発するだけではなく、かつてないアプローチで大規模な共同開発/イノベーションを実現するイネーブラーを目指さなければなりません。
このロードマップを体系的なB2B変革ジャーニーの1つの出発点として、CSPはそれぞれの独自の能力とエコシステム環境に基づいて、新たな機会を生かすための最適なアプローチを模索すべき時期を迎えています。
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