Skip to main content Skip to Footer

LATEST THINKING


アダプティブ・ワークフォース活用によるタレントサプライチェーンのオープン化と再構築

デジタル化を背景に、人材難は新たな局面に。多様で専門的な人材ニーズへの即応を可能にするタレントエコシステムとは


デジタルによる破壊がもたらす新たな人材難


水野 昭徳

製造・流通本部
マネジング・ディレクター
水野 昭徳

Mail to Info PRD JP. 別ウィンドウで開きます。

X.0を味方につける

デジタル技術の進展により、既存のビジネスの破壊~再構築(ディスラプション)が急激に進んでいます。オペレーショナルな業務をロボットが受け持ち、AIが判断・調整をこなすようになり、デジタルをテコにした業務の見直し、再設計や、イノベティブなイニシアチブの立ち上げおよびドライブが、今後一層求められるようになりました。「向こう3年以内に、デジタルにより仕事が大きく変容すると考えている従業員は82%にのぼる」、という調査結果(*1)がありますが、既にその未来は到来しているといえるでしょう。
*1: Digital Disruption Embrace the future of work and your people will embrace it with you, 2015

アクセンチュア著『インダストリーX.0』書籍においても、デジタル化を通じた人間と機械の協働加速を背景に、必要なスキルセットのドラスティックな変化、そしてとりわけデジタル領域での人材の獲得・育成が急務であると指摘しています(*2)。そもそも、グローバル全体(とりわけ日本を筆頭とするアジア)では、少子高齢化の進展を背景に、人不足は深刻さを増し続け、人材獲得競争は激化の一途をたどっています。
*2:エリック・シェイファー(著) 河野真一郎、丹羽雅彦、花岡直毅(監訳)『インダストリーX.0 製造業の「デジタル価値」実現戦略』 日経BP社 2017

こうした従来の人材難に加え、前述のように、新しいビジネスやイニシアチブをリードできる人材については、量に加えて質の面からも社内での調達が困難であり、また、新たに自社に惹きつけ、採用し、育成し、定着させることは特に難易度が高く、多くのグローバル企業は既にその課題に直面しています。人材難は単なる人不足ではなく、質的な変容を含む新たな局面にきているといえます。デジタルによるディスラプションは頻度を増し、グローバルいたるところで日々組成されていく新しいイニシアチブへの即応性が組織に求められる中、どのような打ち手が有効なのでしょうか。

組織の壁を超えるアダプティブ・ワークフォース

デジタル化を背景とした新しいイニシアチブに対する人材ニーズの特徴は、高い専門性が求められること、そして、ポジションベースではなくプロジェクトベース(または具体的なタスクベース)であることです。汎用的なスキルを中心とした単なる人員補充とは性質が異なるものです。また、通常、こうしたイニシアチブは組織横断的かつ時限的に組成されることが多いため、一般的な階層的組織構造や雇用形態とはなかなかマッチしません。社内の人材を育成、あるいは外部から採用するとしても、ポジションの定義やキャリアパス・報酬の設計は困難で、多くの時間、多大な労力がかかります。

このようなニーズを満たすのが、オンデマンド型の労働力(アダプティブ・ワークフォース)の活用です。具体的には、社外の専門家ネットワークを使い、必要な人材を必要なタイミングで活用するというモデルです。もちろん、社内で遊軍的な人材プールを定常的に用意しておくことも十分ありえますが、人材がアイドルすることなく、かつあらゆる人材ニーズに応えられる体制を構築・維持するのは非常に難しいことだといえます。

そのため、こうしたオンデマンド型の労働力を活用する動きはグローバルで加速しつつあります。背景には、労働力プラットフォームを提供するサービサーの台頭があります。一例として、グローバルでフリーランサーと仕事のマッチングサービスをプラットフォームとして提供しているUpwork社があげられます。Upworkが提供するプラットフォームには、およそ1200万人のフリーランサーが登録し、年間300万件の仕事が掲載されており、既に多くの企業が積極的に活用しています。例えばP&Gでは、新製品の開発にあたり、自社の従業員だけでなく、Upworkのプラットフォームを通じた社外労働力をパイロットプログラムとして活用し、自社リソースの強化・拡充を図っています。このパイロットプログラムから上市された製品のうちおよそ6割は、通常の製品と比して早く、かつ低コストで上市することに成功しています(*3)。
*3:テクノロジービジョン2017

こうした、オンデマンド型の労働力(アダプティブ・ワークフォース)の活用のメリットは大きく3つあり、①自社に不足している、あるいは高度に専門的なケイパビリティを必要なタイミングで必要な期間だけ手当てできること、②スケールアップおよびスケールダウンが容易であること、③ビジネスの状況に応じて人件費を変動費化できること、が挙げられます。

以上のように、労働市場はその流動性を増しており、自社にとって最適な形で柔軟に活用していくための、‟タレントエコシステム”の構築が求められます。もはや、企業における組織の壁・境界は姿を消し、新しいダイナミックでアダプティブな労働力の確保・活用は、ますます一般的なものになっていくと見込まれます。

オープンな‟タレントサプライチェーン”への進化

これまで述べてきたような新たな人材難、労働市場の流動化を踏まえ、人材を司る人事部門には、要員計画、採用、育成、評価、異動配置といった業務機能をあらためて見直していくことが求められます。これらは、近年、タレントマネジメントという言葉で語られることが多いですが、人材の需要計画とそれに見合った供給計画を立て、実際に人材を現場に供給していくという観点から、タレントサプライチェーンという言葉をここでは使います。


アダプティブ・ワークフォースを組み込んだタレントサプライチェーンの構築

アダプティブ・ワークフォースを組み込んだタレントサプライチェーンの構築


まず、グローバル全体で、どういった人材ニーズがどのくらいあるのか、という見通しが必要です。ポイントは、単に欠員数などから不足している人員数(=量)を把握するだけでなく、求められるケイパビリティや専門性に踏み込んだ人材要件(=質)の観点を織り込むことです。これが人材の需要計画になります。

その要員計画に沿って、既存人材をどう育成するか、どういった人材をどう採用するか、人材バランスを踏まえて配置転換をいかに進めるか、という個別の計画を立案します。これらが人材の供給計画です。こうした計画立案を受けて、計画に沿った施策実行とそのモニタリングを行っていくことになります。

以上が、基本的な考え方ですが、個別の供給計画には、社内人材のみならず、外部のオンデマンド型労働力を組み込み、社内に閉じないオープンなタレントサプライチェーンを構築することを考えるべきです。これまでの議論を踏まえると、社内の人材だけで必要な人材をすべてまかないきるのは、きわめて困難であるといえるからです。

あわせて考えるべきなのは、要員計画の見直しとアップデートを定期的に行うことです。新しいイニシアチブは様々な部署で突発的に組成される可能性があり、事前に全て計画に織り込むことはできないためです。よって、要員計画を見直し、それに合わせた供給計画を常に最新化し、実行に移していくことができないと、デジタルによりさらにギアを上げたビジネスのスピードに人材が追いつかず、ビジネスが立ち行かなくなる可能性すらあります。

以上のように、タレントサプライチェーンは、今後、社内に閉じることなく、より流動的で立体的なものとなっていきます。その司令塔となる人事部門が果たすべき役割は、今後一層高まってきます。 これからの人事部門は、単なる管理部門ではなく、タレントサプライチェーンの再構築と運用を通じ、積極的にビジネスをドライブするという戦略部門に生まれ変わる必要があります。このような人事部門の進化こそが、デジタル時代における将来の競争優位を左右する極めて大きなカギになるといえるでしょう。

インダストリーX.0インサイト・プログラム -その他の記事

事例

変革に向けて
全力チャージ

シュナイダーエレクトリック社の
新デジタル・サービスを生み出した
スマートなプロセスとは。

お問い合わせ

お問い合わせは、下記リンク先のフォームよりご連絡ください。

関連コンテンツ