課題

コープこうべは、日本で最も歴史のある生活協同組合(生協)です。同組合の情報・物流推進部はある課題を認識していました。

お客様企業の概要

生活協同組合コープこうべ(以下、コープこうべ)は、2021年に「創立100周年」を迎える日本で最も歴史のある生活協同組合(生協)です。兵庫県全域と大阪府北部、京都府京丹後市を事業エリアとし、組合員数は約170万人、供給高*は約2,441億円(ともに2018年度)に達し、さまざまな活動と事業を展開して組合員のくらしに貢献しています。
(*供給高・・・一般企業の「売上高」に相当する生協の用語)

生協は組合員一人ひとりが出資金を出し合い、利用、運営しながら、くらしの課題を解決していく組織。組合員のくらしを守り、よりよくすることを目的とし、宅配、店舗の供給事業のほか、共済事業、福祉事業、文化・利用事業など幅広い事業展開を行っています。

沿革

第一次世界大戦後の1921年、世の中のあらゆるものの価格が高騰するなど深刻な状況下にあった時代に、「確かなものを、適正な価格で手に入れたい」という消費者の切実な願いを実現するため、前身となる2つの購買組合が誕生。1962年に合併し、灘神戸生活協同組合となりました。その後、1991年には創立70周年を機に名称を「生活協同組合コープこうべ」と改称、創立以来の「愛と協同」「組合員のために」の理念は今も変わることなく、組合員のくらしを支え続けています。

現在は、「未来につながる、地域づくり・人づくりをすすめます」を事業計画に掲げ、「次の100年」に向けて、いつまでも安心してくらせる地域づくりを目指しています。少子高齢化が加速度的にすすむ社会変化の中、移動店舗、買いもん行こカー(店舗への無料送迎車)、夕食宅配などのサービスを提供するとともに、新たな組合員の仲間づくりに向けて、インターネットやスマートフォンを通じたサービス開発も順次展開しているところです。

課題

コープこうべの「情報・物流推進部」は、一般企業における情報システム部門の機能を持つ部署です。同部では、2017年頃から次のような課題を強く認識していました。

  • マルチベンダーの大型ホスト環境による運用コストの増大
    コープこうべでは、事業範囲の拡大に適応しながら、基盤となるIT活用を推進してきました。しかし、その立ち上げの経緯から、主力の店舗事業と宅配事業で異なるベンダーによるシステムが別々に稼働していました。そのため、管理業務やヘルプデスクなど、本来ならば共通化してコストを抑制すべき領域でシステムやサービスが重複しており、運用コストの肥大化が課題となっていました。
  • システムの老朽化と人材不足
    コープこうべのシステム部門を支えてきた職員も定年退職で減少し、組織全体として人材不足の解決は喫緊の課題となっていました。情報システムの保守においても、要員の約6割が老朽化したシステムの対応に時間を取られており、ホストの利用継続か、オープン系への切り替えかについて議論されていました。
  • 上流工程に注力するべき時間の確保と人材育成
    事業エリアへの競合店舗の出店が相次ぎ供給高が減少する中、本部人員の縮小を余儀なくされたため、情報システム関連の専門知識を持つ職員の育成と確保に苦労していました。限られた人員の中で、より上流工程にあたる戦略・企画業務へのさらなる注力も必要としていたことから、運用のアウトソーシングの必要性を検討していました。

アクセンチュアの役割

コープこうべとアクセンチュアは、運用アウトソーシングの委託プロジェクトから関係をスタートさせ、協働的な信頼関係を築いてきました。

2017年のシステム更改のRFPにおいて、アクセンチュアを含む複数社がAWSを活用するクラウド移行を提案したことから、コープこうべではクラウド移行が世界的な潮流であることを認識していました。しかし「もう1サイクルはオンプレミスでのオープン系サーバー構築とするか、この段階でクラウドを採用するか」を決めかねていました。

オンプレミスの採用では、顕在化している人材不足と老朽化問題の根本的改善にならないことをコープこうべは強く意識していましたので、アクセンチュアは提案において、クラウド化のメリット・デメリットや、運用方法がどのように変化するのかといった懸念点を1つひとつ解きほぐしました。

  • パイロット実施から第2、第3フェーズへと分割する段階的進行を実施
    コープこうべでは比較検討の結果、アクセンチュアをパートナーとして選定し、AWSをクラウド基盤とする計画を選択。プロジェクトでは小規模な業務システムのAWS移行をパイロット的に実施し、その成功体験と知見・経験を蓄積しながら第2フェーズ、第3フェーズとしてより高度かつミッションクリティカルなシステムのAWS移行を進めていく段階的リフト&シフトを展開しました。

一部のパッケージソフトウェアの移行では、データベースの変更などが大きく影響してしまう場合があります。そうした事象の特定には知見を蓄積しながら対応していくことが肝要なため、影響範囲が狭く、低リスクのアプリケーションから順次展開するクラウドマイグレーションを進めていきました。

成果

  • 標準化でシステムの複雑化を回避
    コープこうべにおけるクラウド移行は、単にIT基盤を移し替えるだけのものではありません。次世代型のITシステムとしての「標準化」への取り組みでもありました。当組合クラウド基盤におけるサーバスペック、ネットワーク構成、セキュリティ対策、インフラ運用などの領域は共通化していき、システムに適用する標準としました。

    基盤の設計においては、現行システムの移行だけでなく、今後の新しいシステムの追加実装も想定しておくことが不可欠です。標準化を定めておくことでシステム追加時に複雑化を回避できるほか、工数増大やセキュリティリスクの低減も可能です。

    「システムに求められる要件」は社会状況やビジネス環境に適応すべく絶えず変化します。そうした変化に柔軟に対応できる仕組みを実現することが標準策定におけるポイントです。そのために本プロジェクトでは、アクセンチュアのグローバル規模の知見が十分に活用され、合理的かつ柔軟性のある利用ガイドラインが定義されました。
  • ガバナンスの強化
    標準化は、ガバナンスの強化においても効果があります。クラウド環境でシステムを構築するうえでは、横断的な共通ルール基盤を整備することで、全体運用を効率化できます。要件定義フェーズにおいて重点的にこの方針策定に工数をかけたことが、今回のプロジェクトの成功要因といえます。

    また、クラウドサービスは機能追加・拡張が頻繁に起こり、サービス内容が定期的にアップデートされる点に大きな特徴があります。標準定義を推進しても新たな課題は必ず発生しますので、運用においてはPDCAサイクルを回すイメージで継続的にブラッシュアップし続けることがポイントです。
  • 障害対応の迅速化
    AWSはオートリカバリーを備えており、深夜に発生したシステム障害でも迅速に復旧できる点がメリットの1つです。従来のオンプレミスのように自分たちがデータセンターへ急行する必要もなくなり、監視業務の管理者は「復旧後のサービス影響状況のチェック」などに集中できるようになりました。

創出された価値

コープこうべでは、組合員により楽しく便利に生協を利用していただくための取り組みとして、新しいポイント制度や決済システムなどの機能開発を計画しています。

情報システムに関係する職員が、システム開発だけに没頭するのでなく「組合員の声に耳を傾けられるようにすること」は実現したい課題です。そのためにも、アクセンチュアとの業務分担において、適切なバランスでの体制づくりを進めていきたいと考えています。

より良い地域づくりを目指すコープこうべの基盤構築、「新たなプラットフォームづくり」をすすめるにあたり、コープこうべは、アクセンチュアをよきパートナーとして「次の100年」に向けた将来プランを実現させていきたいと考えています。

お客様からのコメント

「アクセンチュアに入っていただいたことで、職員は新たな開発業務に注力できる体制が構築できました。将来的には協働でコープこうべの業務全体の簡素化・高効率化につながる改革をすすめていければと考えています」(丸田氏)

「コンピューターリソースを自ら持たない運用を目標にしています。レガシーを段階的に減らしていき、クラウド基盤の利用や外部業務処理サービスの利用を組み合わせて、全体としての生産性の向上を目指しています」(廣瀬氏)

「私が管轄する戦略企画チームでは、日々のルーティン的運用業務から手を離すことができたので、より付加価値の高い業務に集中して取り組めています」(岩成氏)

プロジェクトチーム

左から:
王 問漁(アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 マネジャー)
廣瀬 達生氏(生活協同組合コープこうべ 情報・物流推進部 システム企画 統括)
丸田 研一 氏(生活協同組合コープこうべ 執行役員(情報・物流推進部 担当))
岩成 潤氏(生活協同組合コープこうべ 情報・物流推進部 情報物流企画 統括)
和田 祐爾(アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 シニア・マネジャー)

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