Oracle Fusion Cloud ERPの標準機能を最大限活用し、SaaSを利用するメリットの最大化を狙う
アクセンチュアは特定の製品・ソリューションを自社で持たない「ソリューションニュートラル」を大きな特長としています。そのため、ERPソリューションの選定においても、お客様に最適な提案ができる立場にあります。
ヤフーではオンプレミスのOracle E-Business Suiteに加えて、内製で構築されたシステムも長期にわたって稼働していました。今回のプロジェクトでは、それらの財務系システムも含めて刷新しなければならないことが、プロジェクトの難易度を高めていました。
プロジェクトは2019年4月に構想策定フェーズがスタートし、要件定義は同年の11月から始まりました。本プロジェクトでは複数のERP製品が比較され、機能や既存環境からの移行容易性、コストなど複合的な要素に基づく検討を経て、最終的にOracle Fusion Cloud ERPが選択されました。
Oracle Fusion Cloud ERPはグローバル標準機能が用意されたSaaSのソリューションです。そのため、標準機能を使い続けることでアップデートがすべて自動で行われ、常に最新版を利用できる大きなメリットがあります。
しかし要件定義を進める過程で、ヤフーが求める機能のいくつかがその時点のOracle Fusion Cloud ERPには未実装であることがわかりました。オラクルはユーザー企業の要望を聞き、必要とされるものは開発し標準機能として提供します。ヤフーはプロジェクトを通して、ヤフーのみならず日本企業に導入するうえで求められる一般的な機能要望についてオラクルへ積極的にリクエストしました。
ERP導入では、要件と標準機能にギャップがあればアドオンを作り込むアプローチが一般的です。しかし、本プロジェクトにおいてヤフーは、Oracle Fusion Cloud ERPの標準機能を最大限利用する方針を掲げ、標準機能の追加実装の要望を上げながら、SaaSとしてのメリット享受の最大化を目指しました。ヤフーでは過去に別プロジェクトにおいて、SaaSの設計思想をあまり考慮せずにシステム開発を行った結果、SaaSのメリットを享受できなかった苦い経験があり、本プロジェクトでは標準機能を最大限活用する方針でシステム開発を進めました。標準機能を利用するにあたり、ヤフー側の既存の業務プロセスが標準機能にフィットしないケースが多々ありましたが、今回はグローバル標準の業務プロセスにヤフーの業務プロセスを合わせるという考え方のもと、大胆なBPRも併せて実行しました。このような考え方はコーポレート部門全般の情報システムを脱内製化し、SaaSを活用してアップデートしていくという技術戦略に基づいています。標準機能に合わせてSaaSを利用することで、定期的に行われるSaaSのアップグレードによってシステムのみならず、業務の高度化や生産性向上のメリットも持続的に得られるためです。
新基幹システムでは手前側のサブシステムを作り込み、「情報を持ち過ぎないGL」を実現
一般的に日本企業は総勘定元帳(GL)に多様な情報を持たせるケースが多いですが、Oracle Fusion Cloud ERPでは、海外企業で一般的なGLにはあまり情報を持たせないアプローチが採用されています。本プロジェクトにおいてヤフーはオラクルの製品設計思想に合わせ、残高管理などはGLの手前に設置した補助元帳を利用して前方系で管理処理する方法を取りました。
以上のように、ヤフーではOracle Fusion Cloud ERPの標準機能とテンプレートを積極的にフル活用する形で要件定義と設計・構築を推進。その過程においては標準機能に合わせて業務自体の再設計も行うなど、Oracle Fusion Cloud ERPを利用するうえで、効果を最大化することを念頭にプロジェクトを推進しました。
アクセンチュアはそうしたヤフーの取り組みの支援を展開し、Oracle Fusion Cloud ERPの導入は本プロジェクトの第1フェーズとして2021年7月にカットオーバーを迎えました。