課題―求める変化

コーポレート部門のモダン化を目指すヤフー

約100のサービスを展開し、メディア事業とコマース事業を軸にビジネスを展開しているヤフー株式会社(以下、ヤフー)。同社では現在、事業やサービス、組織を越えたデータ連携のさらなる高度化を進めています。

ヤフーの服部CIOが目指しているのは、コーポレート部門のモダン化。データの流通をより活性化するシステム環境を整備し、コーポレート部門の業務の高度化と生産性向上に取り組んでいます。

加えて、社内業務システムの脱内製化にも取り組んでいます。事業やサービスに使うシステムは常に最新化される一方で、一部の社内業務システムは取り残されてきました。また、多くの社内業務システムは内製化されており、ブラックボックス化が進んでいるものもあり、刷新のタイミングで、SaaSや世の中のデファクトスタンダードになっているソリューションに置き換えてきました。それらの取り組みの一環として、今回の財務系システムの刷新PJに取り組んでいます。

DXを熟知しており、ヤフーでのプロジェクト経験も豊富なアクセンチュアをパートナーとして選定

このプロジェクトのパートナーとして、ヤフーが選んだのはアクセンチュアでした。アクセンチュアは、業界や業務を問わず幅広い領域でのDX経験をグローバル規模で有しています。また、オラクルのグローバル最大のアライアンスパートナーでもあり、Oracle Fusion Cloud ERPの導入実績も多数有しています。加えて、これまで、ヤフーでも大小様々なプロジェクトに参画した実績があり、ヤフーのビジネスや企業文化、コーポレート部門の現状や課題についてよく理解していました。

またアクセンチュアは、グローバルのプラットフォーム先進企業のコーポレート部門のDXや、基幹システムの刷新においても幅広い実績を有していました。ヤフーが目指すコーポレート部門の将来ビジョンを的確に理解している点なども高く評価され、コンペを経て本プロジェクトのパートナーとしての取り組みを2019年にスタートしました。

取り組み―技術と人間の創意工夫

Oracle Fusion Cloud ERPの標準機能を最大限活用し、SaaSを利用するメリットの最大化を狙う

アクセンチュアは特定の製品・ソリューションを自社で持たない「ソリューションニュートラル」を大きな特長としています。そのため、ERPソリューションの選定においても、お客様に最適な提案ができる立場にあります。

ヤフーではオンプレミスのOracle E-Business Suiteに加えて、内製で構築されたシステムも長期にわたって稼働していました。今回のプロジェクトでは、それらの財務系システムも含めて刷新しなければならないことが、プロジェクトの難易度を高めていました。

プロジェクトは2019年4月に構想策定フェーズがスタートし、要件定義は同年の11月から始まりました。本プロジェクトでは複数のERP製品が比較され、機能や既存環境からの移行容易性、コストなど複合的な要素に基づく検討を経て、最終的にOracle Fusion Cloud ERPが選択されました。

Oracle Fusion Cloud ERPはグローバル標準機能が用意されたSaaSのソリューションです。そのため、標準機能を使い続けることでアップデートがすべて自動で行われ、常に最新版を利用できる大きなメリットがあります。

しかし要件定義を進める過程で、ヤフーが求める機能のいくつかがその時点のOracle Fusion Cloud ERPには未実装であることがわかりました。オラクルはユーザー企業の要望を聞き、必要とされるものは開発し標準機能として提供します。ヤフーはプロジェクトを通して、ヤフーのみならず日本企業に導入するうえで求められる一般的な機能要望についてオラクルへ積極的にリクエストしました。

ERP導入では、要件と標準機能にギャップがあればアドオンを作り込むアプローチが一般的です。しかし、本プロジェクトにおいてヤフーは、Oracle Fusion Cloud ERPの標準機能を最大限利用する方針を掲げ、標準機能の追加実装の要望を上げながら、SaaSとしてのメリット享受の最大化を目指しました。ヤフーでは過去に別プロジェクトにおいて、SaaSの設計思想をあまり考慮せずにシステム開発を行った結果、SaaSのメリットを享受できなかった苦い経験があり、本プロジェクトでは標準機能を最大限活用する方針でシステム開発を進めました。標準機能を利用するにあたり、ヤフー側の既存の業務プロセスが標準機能にフィットしないケースが多々ありましたが、今回はグローバル標準の業務プロセスにヤフーの業務プロセスを合わせるという考え方のもと、大胆なBPRも併せて実行しました。このような考え方はコーポレート部門全般の情報システムを脱内製化し、SaaSを活用してアップデートしていくという技術戦略に基づいています。標準機能に合わせてSaaSを利用することで、定期的に行われるSaaSのアップグレードによってシステムのみならず、業務の高度化や生産性向上のメリットも持続的に得られるためです。

新基幹システムでは手前側のサブシステムを作り込み、「情報を持ち過ぎないGL」を実現

一般的に日本企業は総勘定元帳(GL)に多様な情報を持たせるケースが多いですが、Oracle Fusion Cloud ERPでは、海外企業で一般的なGLにはあまり情報を持たせないアプローチが採用されています。本プロジェクトにおいてヤフーはオラクルの製品設計思想に合わせ、残高管理などはGLの手前に設置した補助元帳を利用して前方系で管理処理する方法を取りました。

以上のように、ヤフーではOracle Fusion Cloud ERPの標準機能とテンプレートを積極的にフル活用する形で要件定義と設計・構築を推進。その過程においては標準機能に合わせて業務自体の再設計も行うなど、Oracle Fusion Cloud ERPを利用するうえで、効果を最大化することを念頭にプロジェクトを推進しました。

アクセンチュアはそうしたヤフーの取り組みの支援を展開し、Oracle Fusion Cloud ERPの導入は本プロジェクトの第1フェーズとして2021年7月にカットオーバーを迎えました。

お客様からのコメント

「ヤフーは社内に多数のエンジニアを擁するテクノロジー企業としての顔も持っています。内製で自前のシステムを作り込むことは技術的には可能ですが、このプロジェクトでは内製ではなく、業務プロセスをグローバル標準に合わせる変革を行いました。SaaSに振り切った今回のプロジェクトを足掛かりとして、ヤフーのコーポレート部門のさらなるアップデートを進めていきます」

【写真右】服部 典弘氏(ヤフー株式会社 執行役員 CIO(最高情報責任者) 兼 テクノロジーグループ グループCTO

服部 典弘氏(ヤフー株式会社 執行役員 CIO(最高情報責任者) 兼 テクノロジーグループ グループCTO

「SaaSを活用した業務改革・システム更改をする上で、ヤフーの業務を意識するだけでなく『日本企業』の代表として、一般的な企業でOracle Fusion Cloud ERPの効果を最大化する為にどうするべきかを考え、今回のプロジェクトの方向性を決めていきました。オラクルに要望した一部機能は既に採用され、導入済みの他の企業様の本番環境にも反映されていることを思うと、SaaSの特性である「常に最新であること」の優位性を肌で感じています。ヤフーのみならず、他の日本企業へも貢献できることをうれしく思っております」

【写真右】 江川 卓秀氏(ヤフー株式会社 コーポレート技術室 テクニカルディレクター)

江川 卓秀氏(ヤフー株式会社 コーポレート技術室 テクニカルディレクター)

「ヤフーのコーポレート部門に求められることは、『Yahoo! JAPANの約100もあるサービスが成長することを支援する』これをいかに迅速に・正しく・生産性高く提供できるかが重要です。我々はこれまで業務にあわせたシステムを内製で構築することで、その要求にこたえてきました。しかしサービスが多くなり、個々のニーズにカスタマイズした業務設計・システム構築を行う事で複雑さが増し、かえって生産性や迅速さが徐々に失われてきたのです。これらを改善するために改めてERPソリューションが持つ標準プロセスにあわせることでコーポレート部門として求められる価値を発揮しようと考えました。ただ、長きにわたって行ってきた業務を標準プロセスにあわせていくことは容易ではありませんでした。この標準プロセスとのギャップを正しく把握し、目的に対してどうERPソリューションを活用すればよいか、本当に足りていないところがどこか、それをRPAなど補完ツールも活用し、どう補っていくと継続的にメリットを享受できるか。こういったアプローチを業務改革と併せて一緒に考えて頂けたアクセンチュアの支援によって、あるべき姿に近づけたと考えています。」

【写真右】 吉竹 志保氏(ヤフー株式会社 財務統括本部 ビジネスサポート本部 本部長)

吉竹 志保氏(ヤフー株式会社 財務統括本部 ビジネスサポート本部 本部長)

成果―創出された価値

アクセンチュアとオラクル・コンサルティング・サービス(OCS)によるコラボレーション

本プロジェクトはヤフーの新基幹システムをSaaSにて構築する革新的な取り組みだといえます。本格稼働による成果創出に対し、同社の経営層をはじめ、コーポレート部門の社員も厚い期待を寄せています。

また、本プロジェクトにおいて非常に重要なポイントとなったのがプロジェクトを遂行するうえでのチームビルディングです。プロジェクト体制として、オラクルの「オラクル・コンサルティング・サービス」(以下OCS)とアクセンチュアのリレーションシップに基づく協業体制が作られた他、最適な役割分担によるコラボレーションで高い価値を創出した事例となりました。

標準機能を熟知したOCSと、お客様内部で必要とされる業務要件などを把握しているアクセンチュアが対話し、必要に応じてコンフィグ設定を先行してアクセンチュア側で仮決めするなどの工夫をしたことで、スピード感を損なうことなく最適な着地点を模索しながらのプロジェクト遂行を実現できたといえるでしょう。

全体のプロジェクトマネジメント、BPR、周辺システムとのインターフェースなどをアクセンチュアが担当し、標準機能はOCSが担当。特に新規の売上管理機能はヤフーの財務経理部門の要望も踏まえて構築されています。

国内における大規模なOracle Fusion Cloud ERP導入を経て、ヤフーのコーポレート部門のDXは次のステージへ

本プロジェクトは、日本国内におけるOracle Fusion Cloud ERPの大型の導入事例となります。同製品の活用を検討している企業にとってSaaSを活用する取り組みとして多くの知見が得られるものとなっています。

ヤフーでは今回の新基幹システムの構築をコーポレート部門のDX実現に向けたフェーズ1と位置付けており、引き続き他の業務領域にも変革プロジェクトを展開していく予定です。アクセンチュアは、これからも同社コーポレート部門における本取り組みを支援してまいります。

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