バグバウンティプログラムは2010年代半ばに登場した「未知の脆弱性の発見者に報酬を提供する仕組み」の総称です。代表的なプラットフォームの1つである「HackerOne」では、バグバウンティプログラムを以下のように紹介しています。*1
“Trusted hackers continuously test vulnerabilities in public, private, or time-bound programs designed to meet your security needs.”
(信頼できるハッカーが、お客様のセキュリティニーズに最適化された脆弱性テストを継続的に実施します。テストプログラムには、公開、非公開、または期限付きなどの形式があります。)
この文章はシンプルな表現でバグバウンティプログラムの核心を突いており、バグバウンティプログラムとは「信頼されたハッカー」が継続的に脆弱性についてのテストを行うプログラムであることが容易にイメージできます。昨今ではバグバウンティプログラムの報奨金を目的として対象のサービス・製品の脆弱性の発見に従事する技術者・組織を「バグハンター」と呼称するケースも増えています。
バグバウンティプログラムの日本語訳として、一般的には「脆弱性報奨金制度」や「バグ報奨金プログラム」が当てられています。しかし日本ではバグバウンティプログラムについて、“ハッカー”という言葉のイメージに引きずられ、実際の取り組み状況との間に乖離があります。
たとえば、以下のような誤解が日本企業では見られます。
- 脆弱性の発見者への対価の支払いが、あたかも犯罪者への資金提供であるかのような誤解
- そもそも企業・組織が“ハッカー”と関係性を持つことにより、犯罪やリスクに巻き込まれるのではないかといった誤解
- 不正確な情報による不安や抵抗感に基づく誤解
しかし、バグバウンティプログラムは情報セキュリティの分野では世界的に広く知られており、すでに多くの活用事例が公開されている取り組みです。海外では以下のような大企業がバグバウンティプログラムを展開しています。*2
- Spotify
- Google
- Twitter
- Snapchat(Facebook)
- Slack
上記のようなWebサービス、SaaSとは無関係と思われる企業・組織においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れを受け、積極的なアプリケーション活用やWebサービスの提供を行っている背景から、バグバウンティプログラムを提供する企業が増えています。*3
- GM(ゼネラルモーターズ)
- Lufthansa(ルフトハンザドイツ航空)
- Starbucks Coffee(スターバックス コーヒー)
- アメリカ国防総省
- Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)
前述のHackerOneをプラットフォームとして使ってバグバウンティプログラムを提供している日本企業もすでに多く存在します。2021年3月15日時点でActive Programとなっている日本企業を抜粋すると、以下のような例があります。*4
- 任天堂
- Yahoo! Japan、LINE
- JR東日本、JR東海、JR西日本
- JAL(日本航空)
- ルネサス エレクトロニクス
- シャープ
- JT(日本たばこ産業)
日本においては株式会社スプラウトが運営する日本初のバグバウンティプラットフォーム「BugBounty.jp」が、日本のインターネット関連企業や航空会社、自治体などがプログラムを提供していることで知られています。*5