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ブログ

金融サービスグループ - 金融機関の基幹系レガシーシステムの刷新に向けた支援体制

所要時間:約3分

2022/11/08

はじめに

テクノロジーコンサルティング本部 金融サービスグループ アソシエイト・ディレクターの谷岡 真です。

前回、「金融機関の基幹系システムのクラウド移行を担うクラウド人材の育成 #1」*1と題して、AMO/J2Cチームにおけるクラウド人材の育成についてご紹介しましたが、今回はレガシー言語で構築された基幹系システムのアプリケーションを刷新(モダナイゼーション)するAMO(Application Modernization & Optimization)について、アクセンチュアの金融機関への取り組みをご紹介します。

アクセンチュアのAMOの取組み

アクセンチュアは、メインフレームに代表される旧来型の基幹系システムの刷新支援に力を入れており、COBOLやPL/Iといったレガシー言語で開発されたアプリケーション資産を、若手開発者が豊富なJAVAなどへ移行・変換する戦略立案と技術支援を行うAMOの専任組織を2016年に設置しました。このような基幹系システムのモダナイズ案件は製造業で事例が先行していましたが、保険会社など金融業でも増加してきたこと、加えて多くがクラウド化を伴っていることから、2022年1月に金融サービスグループ内にAMO/J2Cプラクティスと呼ばれるグループが設置されました。基幹系レガシーシステムのAMOとJourney to Cloudのご支援を目的として、クラウドサービスに必要となる特定技術(AWS/Azure/GCP)のスペシャリストと、レガシー解消とデジタルトランスフォーメーションを同時に実現するソリューション(Mod2DX)アーキテクトの専門家集団を目指しており、私はそのAMOリードを担当しています。

レガシーシステムをめぐる状況の変化

2018年経済産業省が「DXレポート」で「2025年の崖」という言葉を使って、レガシーシステムに対応できるエンジニアやDX人材不足に警鐘を鳴らしました。これは様々な業界で基幹システムを支えてきたメインフレームで深刻さを増しており、市場の縮小を見越したサービス環境の悪化が既に現れています。

具体的には、2017年5月に日立がメインフレームのHW開発から撤退を発表。2018年7月の半導体大手ブロードコム社によるソフトウェア開発ベンダーのCAテクノロジーズ買収では、メインフレーム領域の製品が大幅値上げされました。2021年11月にIBMがレガシーインフラ事業をKyndrylに分社化完了、2022年2月には富士通が2030年度でのメインフレーム製造・販売からの撤退を発表し、8月にはカナダの情報管理ソフト会社オープンテキストがCOBOL言語の開発ツールを中心としたソフトウェア会社のマイクロフォーカス買収を発表し、クラウドへの移行加速を表明しました。

メインフレームユーザーの動向

相次ぐサービスの縮退や製品価格の上昇や開発・保守人材の減少など、メインフレームを取り巻く環境の悪化に対して、多くのお客様が基幹系システムの刷新は避けられない流れと捉えて、出来る範囲で可能な業務から検討に着手されていますし、既に開発に着手されたお客様も多くいらっしゃいます。

メインフレームの基幹系システムのモダナイゼーションでは、レガシー言語で開発された大量のアプリケーション資産をJavaへ変換ツールでリライトすると共に、ミドルウェア製品のオープン系製品への置き換えやインフラ基盤のクラウド化を行うことが主流ですが、将来のデジタルトランストランスフォーメーション(DX)への発展を可能とすべく、柔軟なシステム連携を可能とするAPI化やマイクロサービス化などに併せて取り組む事例が増えています。

メインフレームのAMO検討時の考慮点

基幹系システムのモダナイゼーションは、高いデリバリー品質が求められる一方で、構築当初の開発者が不在で現行仕様がブラックボックス化しているケースが多く、非常に難易度の高いプロジェクトになります。成功させる為には以下4つの勘所が挙げられますが、いずれもAMO固有のノウハウが求められますので自社だけで取り組むにはハードルが高いのが実情です。

 メインフレームのAMO検討時の考慮点
 メインフレームのAMO検討時の考慮点

例えば現行保守ベンダーの協力について、メインフレームの場合は専用のハードウェアとソフトウェア(OS、DBMS、各種ミドルウェア)がベンダーから提供されており、端末からホストまでEnd-to-endでトランザクションの完全性を保証するトータルコーディネートを特徴としています。このモダナイゼーションを行う場合、ブラックボックス化した大量のアプリケーション資産のJavaへの変換という大事業に加えて、メインフレームが実現してきた包括稼働保証と同等の信頼性をどう維持していくか、といった困難な課題が立ち塞がります。

現行保守ベンダーの協力を求めつつ、十分な情報が得られない場合は同じ悩みを持つユーザーを巻き込んでソリューションを共同で開発したり、業種を跨ってそのノウハウや資産を活用したりするなど、様々な案件をオーガナイズする能力を持つ専門家たるサービスプロバイダーの存在が重要になります。

また、Java変換ツールはその精度を上げる為に、予め現行のアプリケーション資産を分析して適切な設定を行う必要があります。大量のアプリケーション資産の自動変換の品質がプロジェクト全体の工数を大きく左右しますので、その知見と十分な実績を備えた専門家が欠かせません。

我々の目指すサービス

アクセンチュアはIES-AMOという専任組織が各業界を広くカバーして、レガシーシステムの単なるオープン化に留まらず、デジタルトランスフォーメーションを組み合わせたMod2DXソリューションのサービスプロバイダーとして実績を積み重ねています。*2その開発・テスト手法に関しては、オフショア・ニアショア拠点を含む技術者の養成・拡大が着実に進んでいます。また、製品ベンダー各社とパートナーシップを締結しており、様々なソリューションを提案することが可能です。

このメリットを金融業界に還元すべく、我々金融サービスグループのAMO/J2Cが案件ニーズに対して金融機関システムのアプリケーションの特性を踏まえながら、AMOを始めとする社内の専門家と一緒に適切なソリューションの選定と案件組成のお手伝いをしたいと考えています。基幹系レガシーシステムのモダナイゼーションをご検討のお客様は、是非お声をお掛け下さい。

筆者

谷岡 真

テクノロジー コンサルティング本部 アソシエイト・ディレクター