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ブログ

AWS東京リージョンと大阪リージョンのAZ間レイテンシを比較してみた

所要時間:約5分

2022/01/26

アクセンチュアの積田です。

今回は、可用性の設計をする中で必ずと言って良いほど話題にあがる"AZ(アベイラビリティゾーン)間のレイテンシ"の測定結果と考察を記載します。一般的に可用性を向上させるために複数のAZを利用するとレイテンシが増加するため、”AZ間のレイテンシ”は「利用ソフトウェアの要件や性能要件」と共に話題に上がることが多いです。

まず初めに、AWSでは1つ以上のデータセンターを論理的にまとめたものをAZと呼んでおり、”1つの地理的エリアにある複数のそれぞれが物理的に分離しているAZ”を集積したものをリージョンと呼んでいます。

あるAZと他のAZの間は、物理的に意味のある距離(数キロメートル)離れていますが、同一リージョン内のAZはすべて100km(60マイル)以内に配置されており、AWS公式の資料に「各AZ間は2ms未満で大抵の場合は1ms未満」と記載があります。また、各AZを識別するためにAZ IDが存在しています。詳しくはAWS公式ドキュメント「リージョンとアベイラビリティーゾーン」を参照してください。ap-northeast-1aなどのAZ名は各AWSアカウントでマッピングが異なっているのですが、AWS公式手順を利用することでマッピングの確認が可能です。

「2011年3月に正式なリージョンとなった東京リージョン」と「2021年3月に正式なリージョンとなった大阪リージョン」を対象に測定を行います。
※昔に作成されたAWSアカウントではapne1-az3のAZが利用できる場合がありますが、今回使用したAWSアカウントでは利用できないため測定対象外としています。

測定概要

以下の条件で各AZ間のレイテンシについて測定を行います。

  • 単一のVPC中にPublic SubnetとPrivate Subnetを各AZに1個ずつ作成する
  • 作成したSubnetにEC2(m5.large)を1台ずつ作成する
  • 測定用パッケージのnetperfをインターネットからダウンロードするためにNAT GWを作成する
  • netperfTCP_RRテストを利用してTCPベースでレイテンシを測定する
  • 測定はPublic SubnetからPrivate Subnetに向けて10.0.0.0/16帯のPrivate IPアドレスを利用して60秒間行い、測定期間内の平均レイテンシを測定結果とする
    ※Public SubnetとPrivate Subnetは同じ10.0.0.0/16帯のアドレス帯を利用しており、逆向きの通信でも同様の結果となるため、今回は測定を行わない

構成図

今回のレイテンシ測定のために作成するリソースの構成図は以下の通りです。

構成図
構成図

測定結果

東京リージョンと大阪リージョンの測定結果を以下に記載します。

例:

Fromが送信元(Public Subnet)、Toが送信先(Private Subnet)となっており、apne1-az1からapne1-az2へのレイテンシは994.27(μs)となります。

東京リージョン

 東京リージョンの測定結果
 東京リージョンの測定結果

大阪リージョン

大阪リージョンの測定結果
大阪リージョンの測定結果

考察

以下はあくまで今回の測定結果からの考察なので、参考程度として下さい。

  • 単一のAZのみ利用する場合、同一AZ内でレイテンシの差はどのAZでもない。
  • 今回の測定結果では、"東京リージョンで冗長化を行う場合"かつ"2AZの冗長化で良い場合"、「apne1-az1」と「apne1-az2」を利用するのがレイテンシの観点では良いという結果となった。
  • 今回の測定結果では、"大阪リージョンで冗長化を行う場合"かつ"2AZの冗長化で良い場合"、「apne3-az1」と「apne3-az2」を利用するのがレイテンシの観点では良いという結果となった。
  • 東京リージョンに比べ、大阪リージョンの方がAZ間のレイテンシが低いため、AZ間でのレイテンシ要件が厳しい場合は大阪リージョンを利用するのも1つのオプションとして考えられる。

まとめ

AZ間のレイテンシを測定しましたが、大阪リージョンのAZ間レイテンシが想定以上に低く驚きました。東京リージョンと大阪リージョン以外のAZ間レイテンシを測定したことはありませんが、AWS公式の資料に「各AZ間は2ms未満で大抵の場合は1ms未満」と記載があるので、東京リージョンのAZ間レイテンシが高いだけかもしれないです。

また、今回の測定結果についてはあくまで参考データとしていただき、レイテンシ要件の厳しいシステム設計・構築する際には実際に測定を行うことを推奨します。

今回、レイテンシを測定するにあたりIaCツールのTerraformを利用して構成図に記載されているリソースを作成しました。利用したTerraformのコードはGithubにて公開していますので、興味がある方がいればご覧いただければと思います。

この記事を見てくださった方が少しでもAWSに興味を持ち、世界が今より少しでもより良くなっていくことを心より望みつつ筆を置きます。

筆者

積田 優生

テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントクラウド アンド インフラストラクチャー グループ シニアアナリスト