ソーシャルコマース体験で重要なこと

ソーシャル・ショッピングを実現するためには、プラットフォームとブランドが一体となって、インタラクティブなソーシャルエクスペリエンスと商取引の最適なマッチングが必要となります。

ソーシャルメディア体験とオンライン・ショッピングがシームレスに融合した世界でのショッピングの様子を想像してみてください。

一体何が起こっているのでしょうか？従来の商取引とは根本的に異なる、人とコミュニティの力を活用した、ショッピング体験を日常生活に織り込むという、まさに、ソーシャルコマース革命が起きているのです。

初回論考の「ソーシャルコマース革命がもたらすショッピングの新たな未来」では、この市場が1兆ドル以上の規模になる要因について考察しています。さらに、ソーシャルメディアのプラットフォームとブランドが、ソーシャルコマースの可能性を実現するために、どのように連携を図るのかについても検証しました。本論考では、買い物客が真に望んでいるソーシャルコマース体験を紐解き、収益性の高いチャネルに導くための重要な鍵を明らかにしています。

この機会逃さないために企業は、進化するソーシャルコマースとソーシャルショッパーに対応していく必要があります。

アクセンチュアの調査によると、最大の価値をもたらすソーシャル機能を活かすために、ブランドとプラットフォームは、顧客が望む機能と体験を確実に提供する必要があります。つまり、未成熟なソーシャルショッパーをターゲットにする場合は、まず基本機能を正しく理解し、信頼を得ることに投資するべきなのです（下図参照）。

まずはこうした土俵に立つことが、競争に勝つための最低条件となるのです。

初回ユーザーを獲得するためには、プラットフォームとブランドは、その体験を通じて信頼を確立することに注力しなければなりません。優先順位としては、購入者を保護し、信頼を築くために、手間のかからない購入と返金、製品の品質/真正性を確保するための手段を講じるなど、信頼性の確保に重きを置くことが挙げられます。

アクセンチュアの調査によると、ソーシャルコマースで最近買い物をした人と、買い物をしたことがない人とでは以下の違いが見えてきました：

ソーシャルコマースでの購入を躊躇しているユーザーを取り込んだ後は、ソーシャルコマース特有の力を発揮させる時です。アクセンチュアの計量モデルによると、ソーシャルコマースへの支出を増加させる主な要因は、消費者のライブストリーミング、キュレーションされたコンテンツフィード、販売者相談、インフルエンサーの推薦など、ソーシャルコマースでより多くの消費を促す主な機能が挙げられます。

確かに、完璧なソーシャル体験を作り出すための画一的な万能アプローチは存在しませんし、消費者が様々なカテゴリの製品を購入する際に、異なるソーシャル機能を評価することは明らかです。あるカテゴリがより高価であったり、「ハイリスク」であったりするからといって、ソーシャルコマースに市場がないわけではありません。消費者が商品を評価する、より早い段階での体験がより重要になるということです。

消費者の約3人に1人（30％）が、高級品を購入する際のソーシャルコマース体験で「必要な機能」としてVRテストを挙げています。その一例として、プラダとファーフェッチが挙げられます。プラダとファーフェッチは、スナップチャットのARツールを使用し、ユーザーが服やアクセサリーを試着できるようにした最初のブランドです。

また、ブランドへの親しみが、消費者の特定ソーシャル機能を重視することに影響を与えることもわかりました。買い物客は、ブランドをよく知っている場合、ショッパブル投稿(実際に商品を購入することが可能な投稿)やビジュアル検索のような、個人と会話しながら商品情報を取得する機能が求められます。一方で、ブランドがあまり知られていない場合、買い物客は、バーチャルオークションやライブグループチャット、VRテスト、ライブストリームなど、購入の意思決定に役立つ機能をより重要視するようです。

ソーシャルコマースが成熟していない欧米市場のブランドやプラットフォームは、このような機能を優先させる前に、基本的なことを正しく理解することが必要です。

他の成熟した市場、特にアジアでは、既にソーシャルコマースの機能と購買活動が、消費者の日常生活にシームレスに溶け込んでいます。その結果として、ソーシャルコマースが発展することは明らかです。

一部の市場で先行

例えば、中国では、ソーシャル・ショッピングはさまざまな方法で実現できます。消費者は、友人とチャットしながらWeChatの公式アカウントから直接商品を購入することもできますし、友人のソーシャルサークルで広告を出したブランドのWeChatやAlipayの「ミニプログラム」から購入することもできます。エンターテインメントとショッピングが完全に統合されているのです。Taobao Liveでライブストリームを視聴している中国の消費者は、直接商品をカートに入れ、購入することができます。あるいは、友人の勧めに従って、Pinduoduoで商品を割引価格で購入するためのグループに参加することもできます。

ソーシャルコマースは中国市場において先行していますが、その他の市場では、ブランドやプラットフォームが未だ完全には統合されておらず適切な顧客体験を提供できていないのが実態です。ソーシャルコマースを強く望む消費者のためにも、こうした課題を乗り越えていく必要があります。

非公式な回避策はあるが…

このような課題の非公式な解決方法として、ブラジルのある買い物客の一例が挙げられます。彼女は、地元の衣料品店のインスタグラム・ストーリーを見て、気に入った商品のスクリーンショットをWhatsAppで店に送り、Pix上で店に支払うためのリンクを受け取ったと言います。

このような工夫は、ソーシャルコマースとも呼べますが、シームレスなショッピング体験であるとは言い難いでしょう。真のシームレスな体験がもたらす可能性を想像してみましょう。

画一的なアプローチでは成功できない

ソーシャルコマースがその可能性を最大限に発揮できるように進化するために、すべてのところで、同じ道をたどるわけではありません。アクセンチュアの調査によると、チェックアウト体験の質やセキュリティといった基本的な要素はすべての消費者にとって重要ですが、その嗜好は市場によってさまざまです。つまり、成功するために必要なことは、地域によって異なるということです。

様々な要因が絡み合って、そのすべてがソーシャルコマースのスタイルに影響を与えているのです（下図参照）。これらのファクターには、ソーシャルコマースに慣れていることはもちろん、市場のモバイルファーストの程度や消費者のショッピング行動、メッセンジャーアプリのエコシステムの有無、経済状況などその他多くの要素が含まれます。

ブランドとプラットフォームは、ソーシャルコマース戦略をカスタマイズする際に、ターゲットとなる消費者の相対的な成熟度を考慮する必要があります。その際に、考慮すべき点は以下の2つです。

1. ソーシャルコマースに不慣れな消費者にとっては、基本的な機能を充実させることで信頼を獲得することが重要です。買い物客がソーシャルコマースに慣れてきたら、ソーシャル機能の強化が焦点となるでしょう。
2. 成熟したソーシャルショッパーに対しては、ソーシャルとコマースの最適な組み合わせにより、差別化された体験を提供することが最も重要となります。

ブランドへの示唆：ケイパビリティへの投資判断は、全体的な構成におけるチャネルの重要性と結びつきます。現時点では、ほとんどのブランドにとって、パートナーシップを通じた試用が望ましいと思われます。ソーシャル機能を自社で構築しない場合であっても、ソーシャルコマースで「勝つ」ための、オペレーティングモデルの見直しやエンゲージメントモデルや市場ルートの検討は独自で実施する必要があるでしょう。この点については、次回の論考で詳しく説明します。

プラットフォームへの示唆：構築/購入/パートナーが鍵になります。多くのソーシャルプラットフォームにとって、ショッパージャーニーの初期段階における機能、または幅広いユーザーベース（例えば販売者、インフルエンサー、クリエイター）をサポートするツールに投資することが好ましいと推察されます。プラットフォームがこれらを独自に構築する意味はあまりありません。なぜなら、（a）正しく構築することがソーシャルコマースの採用に不可欠であり、（b）差別化し市場で勝つための策は他にもあるからです。

ブランドとプラットフォームは、それぞれの戦略的目標を可能な限り迅速かつ効率的に達成するために、それぞれの強みと能力を生かしたエコシステム・パートナーシップが必要です。また、エコシステムの運営モデル全体における透明性とデータの共有も重要となってきます。

適切なパートナーシップの構築により、プラットフォームとブランドの双方が新たな機会を得ることができるでしょう。適切なコマース機能を構築することで、ソーシャルメディア・プラットフォームは、ソーシャルコマース導入の急増による有利な立場を得ることができます。広告収入への依存度を下げるだけでなく、コマースを通じてユーザーとより深く関わることができるようになるのです。

一方、ブランドは、オムニチャネルアプローチを採用し、新しいデータソースと強化されたデータ分析を活用することで、ソーシャルコマースを通じて直接的に売上を伸ばすことができるでしょう。直接消費者と関わることで、消費者を理解し、ブランドエクイティから利益を得ることが可能になるのです。

次回の論考では、ブランドがソーシャルコマースにおいて、どこで勝負し、どのように勝ち抜くべきかについて焦点を当てます。また、ブランドのソーシャルコマース戦略が、販売する製品カテゴリやターゲットとする消費者、より広い戦略的目標を考慮した上で、どのように差別化を図るべきかについても明らかにしていきます。