調査レポート

概略

概略

  • アクセンチュアは世界7カ国のバイオファーマ企業とIT企業の経営幹部を対象に、新たなテクノロジーの導入・活用に関する調査を実施しました。
  • 5つの新たなテクノロジートレンドが特定され、ライフサイエンスのリーダー企業がより良い未来を構築するために、人々の働き方や暮らし方、つながり方をどのように再定義しなければならないかが明らかになりました。
  • 新型コロナウイルスにより、患者さん、顧客、一般の人々に対する目的意識とコミットメントが変化し、その影響を受ける中で、テクノロジー活用で何が実現できるのかが明らかになりました。
  • バイオファーマ企業の経営幹部の92%が、ビジネス戦略とテクノロジー戦略は切り離すことはできないと考えています。


今、治療するタイミング・場所・方法は変化しつつあります。ニューサイエンスと治療のコストの上昇、そしてより総合的な治療モデル・エクスペリエンスを求める声が高まっていることから、ライフサイエンス業界は不可能と思えることを実現しようと挑戦しています。カスタマイズされた治療とソリューションをより効果的、低価格で生産・提供すると同時に、新たな働き方を導入しなければなりません。

アクセンチュアの調査レポート「テクノロジービジョン2021」により、リーダー企業は「ニューノーマル」を待たずに、自らそれを構築していることが明らかになりました。現在大きな変化の中で、テクノロジーを重視した大胆で革新的なリーダーシップが求められています。それは、単に既存ビジネスを修正するのではなく、これまでの慣習を覆し、未来への新しいビジョンを創出するということです。

96%

バイオファーマ企業の経営幹部の96%が、将来の成長には、市場を再定義する必要があると考えています。

より良い未来を形作るために発想を変える

パンデミックが混乱と新たな需要をもたらす中、ライフサイエンス企業にはクリアすべき高い基準が設定され、多くの期待に応え、もしくは上回ることが求められています。ライフサイエンス企業はオペレーションと従業員のモチベーションを維持する一方で、世界中の患者さんと企業に製品とソリューションを提供する方法を再評価しなければなりませんでした。不安定さが極端に増した昨年、業界の規範が破られ、患者・顧客・一般の人々に対する目的意識や焦点、コミットメントが変化し、その影響を受ける中で、テクノロジーで何が実現できるのかが示されました。

97%

バイオファーマ企業の経営幹部の97%が、今年新たなパーパス(社会に対する姿勢や存在意義)を持って組織を運営していると回答しました。

ニューサイエンスがパンデミック後のバイオファーマ市場のけん引役となり、メドテック(MedTech)企業がテクノロジープラットフォームについて一段と戦略的になっている中で、これらのシフトの実現には治療と患者アウトカムを改善するための新たな人材、プロセス、技術力が求められます。

成功するには、ビジネスとテクノロジーを統合した戦略だけでなく、治療の各ステップで患者のニーズを考慮したトップダウン型の持続可能なオペレーションが必要です。

患者と顧客のアウトカムを改善するために、デジタルファーストアプローチの意識をこれまで以上のスピードですべての経営陣、研究開発、サプライチェーン、患者サービス、サポートファンクション全体に浸透させなければなりません。

2021年の5つのテクノロジートレンド

  • テクノロジーの戦略的集積:ライフサイエンス業界がかつてないペースで変化する中、企業は、ビジネスモデル戦略、テクノロジー戦略、デジタル戦略を統合したアーキテクチャで勝負することになるでしょう。
  • ミラーワールド:データ、AI、デジタルツインテクノロジーへの投資を増やすことで、新たな治療開発・実施方法が生まれています。
  • 一人ひとりがテクノロジスト:デジタルネイティブを育成することは、個人がテクノロジーを使いこなせるようにすることを意味します。リーダーが今、取り組まなければならないことは、創造性を高めるために、テクノロジーを通じて知恵を結集することです。
  • あらゆる場所が仕事場に:今こそ、バリューチェーン全体における新たなハイブリッドオペレーションモデルの適切な導入を理解することで、仮想テクノロジーのメリットを最大限活用すべき時です。
  • 「個」から「全体」へ:ライフサイエンスが、新型コロナウイルスをきっかけに、パートナーシップのあり方を見直す動きが活発化し、マルチパーティシステムが新たに注目されるなど、他のどの業界よりも積極的に取り組んでいます。

トレンド1:テクノロジーの戦略的集積

ライフサイエンス業界は、テクノロジーアーキテクチャ上で競争する新たな時代を迎えています。他社よりも一歩先に進むために、社内のテクノロジー環境を新たに検討する必要があります。テクノロジーの集積をビジネスに沿って新たに戦略的に考案することは、社内オペレーションを効率化するだけではなく、成功に必要なビジネスモデルの創造を促す、境界のないエコシステムの構築を意味します。

ライフサイエンス業界の多くの企業がレガシーテクノロジー、データ、サイロ化されたオペレーションによる制約の問題に直面しています。ライフサイエンス企業は短期的なニーズには対応していましたが、今日の新たなビジネスの現実に柔軟に対応できず、将来への備えもできていません。マイクロサービスの変革により、企業はアプリケーションを再利用可能なコンポーネントとして設計し、柔軟性を高めることができます。

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バイオファーマ企業の経営幹部の96%が、企業のビジネス価値を生み出す力は、今後ますますテクノロジーアーキテクチャの制約と機会次第だと考えています。

トレンド2:ミラーワールド

デジタルツインは以前から普及していましたが、ライフサイエンス分野ではCOVID-19が正念場となりました。パンデミックに対処するためのワクチンの開発と流通のプロセスは、事実上、何年もかかっています。それはデジタルツイン技術によって、ここぞという最も重要なときに生産性を爆発的に高めるためのプラットフォームを提供したためです。医療機器の分野において、研究者や製品開発チームが手術のシミュレーションや臨床機器の接続・連携など、複雑なシナリオをモデル化するのにデジタルツインが役立っています。

AI、アナリティクスとともにデジタルツインがさらに導入されることで、ライフサイエンスのリーダーは、自社のデジタルツインプロジェクトをインテリジェントツインネットワーク(工場、製品ライフサイクル、エンドツーエンドサプライチェーン全体の実際のモデル)に拡張するようになるでしょう。これらのモデルは、すべての企業のデジタル戦略にすぐに不可欠となる、データ連携を作り出すと同時に、企業がイノベーションを起こし、開発コストを削減し、リスクを抑えることを可能にします。

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バイオファーマ企業の経営幹部の97%が、デジタルツインが戦略的エコシステムパートナーシップでのコラボレーションに不可欠になると回答しました。

トレンド3:一人ひとりがテクノロジスト

将来、理想の治療を実現するにはサイエンスだけでは不十分です。ローコードプラットフォーム、自然言語処理、ロボティクスによるプロセス自動化を通じて、誰もがテクノロジーにアクセスできるようになることで、さまざまな機能にわたって、人々は強力なケイパビリティを手にすることができます。現在、「企業全体でのデジタルネイティブの育成」や、「組織全体での知識・専門性の連携」、「エコシステム全体のデータ交換」、「テクノロジーによる創造性の活性化」などに注目が移りつつあります。

テクノロジーの民主化により、最新のテクノロジーへの認知度が高まり、より多くの人が使いこなすことができる時代になってきています。個人がテクノロジストとして自覚し、行動できるようにスキルの向上を図ることが課題になります。

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バイオファーマ企業の経営幹部の90%が、テクノロジストと同等に思考できる従業員を育成すべきと考えており、この割合は調査対象の業界の中で最も高い数値です。

トレンド4:あらゆる場所が仕事場に

テクノロジー、データ、イノベーションが変化する中、ライフサイエンス企業は新たな働き方に素早く順応する必要があります。「自分の環境を持参する(BYOE)」モデルを踏まえて、接続性、コラボレーション、これらを可能にするツールとプラットフォームに関する業界のテクノロジーアジェンダが策定されるでしょう。

研究所と工場の業務には管理された環境が求められる一方で、リモートワークが可能な業務は幅広く存在します。ハイブリッドな働き方は、ライフサイエンス企業の機能にとって明らかにメリットがありますが、新たなレベルのプロフェッショナルとしての信頼性が求められます。市場のイノベーションと混乱への対応には、患者ニーズとエクスペリエンスがキーとなります。従業員満足度と企業目標はリーダーとチーム、従業員同士の信頼性を構築するうえで適切なバランスが求められ、また維持するための新たなルールづくりが求められます。

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バイオファーマ企業の経営幹部の92%が、リモートワークによって人材発掘が困難になり、企業間の人材獲得競争が激しくなると考えています。

トレンド5:「個」から「全体」へ

通常、企業がイノベーションを推進するには、「自社内での立ち上げ」、「買収」、「提携」の3つの方法があります。ライフサイエンス業界では「自社内での立ち上げ」や「買収」より、「提携」がより重要視されてきています。パートナーシップにより、迅速に知見とテクノロジーを獲得することができます。当然、M&Aと社内で適切なスキルを高めることも今まで同様に重要です。しかし、パートナーシップをより重視し、スキルとテクノロジーへのアクセスを加速させることで、実験やビジネスモデルのイノベーションをこれまで以上に速く実現することができます。

今日のイノベーションのほとんどはデータドリブンであるため、データの信頼性が重要です。企業と消費者は、データが安全かつ最適に利用されるのを期待しています。整合性と信頼性を損なうことなく、データをどのようにイノベーションのために共有することができるでしょうか。答えはテクノロジーそのものにあります。

医療における豊かな体験に対する消費者の要求が高まる中、効果的なデジタル・エコシステムのパートナーシップを構築することが大きな前提となっています。自社での新たなケイパビリティの構築および買収は依然、重要な手段である一方で、ライフサイエンス業界ではパートナーシップが主流になっています。パートナーシップでは、信頼性、セキュリティ、医療の公平性が主な原則であることに変わりありません。今こそ、正統的な考え方に挑戦し、混沌から秩序を生み出すためにマルチパーティシステムを利用する時です。

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バイオファーマ企業の経営幹部の98%が、エコシステムにマルチパーティシステムが導入されることで、よりレジリエントで柔軟な基盤を構築し、パートナーと新たな価値を創造することができると回答しています。

業界をリードする

ビジネスプランそのものではなく、テクノロジーをいかに選択するかが優れたリーダー企業を決定づけるでしょう。5つのテクノロジートレンドでの挑戦を実行に移すために、アクセンチュアは以下を提案します。

テクノロジーの戦略的集積

事業機能に沿って、クラウドおよびマイクロサービスを利用して、将来に向けたデジタル・デカップリング型アーキテクチャの構築に集中投資する。

ミラーワールド

デジタルツイン機能により最高の価値を得られる分野を評価する。実験に続き、中核オペレーションに拡張し、適用する。

一人ひとりがテクノロジスト

デジタルネイティブを育成するジャーニーに乗り出し、従業員のスキルを向上させ、従業員が自らをテクノロジストと認識し行動できるようにする。

あらゆる場所が仕事場に

信頼性に基づくソーシャルコントラクトを推進、採用して、企業の文化を反映した上で、いつ・どのように・どのような条件で「働く」のかを特定する。

「個」から「全体」へ

患者価値を持つ新しい革新的なビジネスモデル・ソリューションを、より迅速にプラグイン、実行、実験、発見するためのエコシステムを構築する。

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最後に

今、私たちは新しい未来を迎えようとしています。しかし、その未来はこれまで世界が予想していたものとは異なり、過去に囚われていては成長することは難しいでしょう。ライフサイエンスの企業は、持続的かつ適切な方法で、新たな働き方に移行し、デジタルネイティブを育成し、エコシステム型のコラボレーションを促していく必要があります。今こそ新たな環境に対応し、バイオファーマ企業と医療テクノロジー企業が新しいジャーニーに乗り出す時です。



著者について

Shalu Chadha

Managing Director – Life Sciences Lead, Technology


Geoff Schmidt

Managing Director – Cloud First, Life Sciences


David Hole

Senior Managing Director – Life Sciences, Talent and Organization Lead


Anne Marie O'Halloran

Managing Director – Life Sciences, Global Supply Chain and Industry X


Frances Bruce

Accenture Ventures Principal, Life Sciences Lead


Tim Durst

Managing Director – Life Sciences, Global Medical Technology

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