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調査レポート

リスク管理の再創造

5分(読了目安時間)

2025/09/09

概略

  • リーダーは、規制に準拠するだけでなく、不確実性を効果的に管理するために、リスク管理手法を再評価し、再構築する必要があります。

  • アクセンチュアの調査では、「設計段階からのリスク管理」、「データ、分析、テクノロジー」、「人材」の3つを重要な改革領域として取り上げています。

  • 各企業機関で出発点は異なりますが、進む方向はますます明確になっています。今こそ行動するときです。

リスク管理におけるリーダーシップの転換点

数十年にわたり数十億ドルを費やしたにもかかわらず、リスク管理チームは需要の高まりに遅れを取っています。リスク管理領域に世代交代レベルの変革が必要です。

600億ドル以上

金融犯罪対策のみにかかる年間コスト

1,000超

2024年に米国連邦政府機関が発したMRAとMRIA*の件数

最大30%

一部機関で是正に費やされた運用コストの割合

ビジネス環境の要求とリスク管理チームの対応力の間で、ギャップが拡大しています。コストが上昇、人材はひっ迫し、これまでの対策では不十分となっています。

対策を怠ることのコストが高まっている一方で、改革の機会も拡大しています

*要注意事項の喚起(MRA)と要注意事項の即時喚起(MRIA)

単調な繰り返しからの脱却:リーダーシップに求められるもの

金融機関が真に変革を実現し、持続可能なリスク管理を実現するために重視すべき3つの重要な要素:

設計段階からのリスク管理

日々の業務、製品設計、意思決定にリスクとコンプライアンスの観点を組み込み、規制遵守と企業価値の創出を両立します。

  • 設計段階からのリスク管理は、規制の目的を活用して金融機関の管理を改善する方法であり、規制上の義務を中核業務プロセス、新サービス、データインフラに直接組み込みます。

  • 文化が役割の中心:トップの姿勢と明確な役割分担が積極的なリスク管理を強化します。しかし、第一線と第二線の役割が明確に定義されていると回答したのはわずか24%、戦略レベルと業務レベルの両方にガバナンスを組み込んでいると回答したのは39%に留まっています。

  • 取締役会は、トップの姿勢を形成する上で重要な役割を担っています。明確で一貫したメッセージを発することで、ビジネス戦略の中核要素としてリスク意識を組み込むことができます。

コンプライアンスを業務プロセスに組み込む

71%

義務プロセスの中核にコンプライアンスと規制義務が組み込まれている割合

設計段階におけるリスク

40%

新製品やサービスの設計段階で、リスクとコンプライアンスがすでに組み込まれていると回答した割合

三つの防衛線の明確な役割

24%

第一線と第二線の役割が明確に分離されている割合

意思決定におけるガバナンス

39%

戦略的・業務的意思決定にガバナンス責任が組み込まれていることに強く同意した割合

データ、分析、テクノロジー

AIやクラウドなどの新しいテクノロジーに高品質のデータを適用して、旧式のインフラストラクチャから脱却して、リアルタイムかつ思考主導型のリスク管理を実現します。

  • 金融機関は、リスク管理能力を強化するために、データや分析、新たなテクノロジーの活用が求められています。

  • しかし、最適なデータでも、拡張性と効率性に優れたワークフローと組み合わせなければ、価値を発揮しません。多くの機関が、新しいツールの導入の必要性を認識しており、42%がリスク管理とコンプライアンス領域へのAI投資を優先していますが、必ずしも成果につながるとは限りません。

  • 分析を日常業務に直接組み込むことが、決定的な変化となります。強固なガバナンスのもとでアクセスを民主化し、イノベーションを促進する企業は、レジリエンス、競争優位性、収益性の向上を実現します。

リスクデータガバナンスの優先度

73%

リスクデータガバナンスの実践を完全に実施し、一貫して適用している割合

効果的なスケールが可能な割合

32%

R&Cのニーズに対応するように技術基盤を効果的にスケールさせることが可能と考えている割合

利用される分析の種類

37%

4種類の分析(記述的分析、予測分析、診断的分析、処方的分析)をリスク管理に使用しているとした回答の割合

投資の優先順位付け

42%

高度なAIへの投資をリスクおよびコンプライアンス管理分野に優先している割合

人材

将来に備えたスキルを組織全体で構築

  • 金融機関のリスク管理の変革には、適切な人材構成が必要不可欠です。シニアリスクリーダーの間ではこの認識が高まっています。90%が、非経済的リスクのリテラシー向上が最優先事項であると答えています。

  • 有意義な変化を推進するには、「業務と分析を自動化するデータ・プロンプトエンジニア」「知識を洞察に知識変換する専門家」横断的な思考で戦略を立てるリスクアスリート」という、3タイプの人材が必要となります。

  • しかし、スキルの変化は、リーダー自身の即応力を評価し、コラボレーション、イノベーション、継続的な変化の文化を育むことが求められます。

非財務リスクリテラシー

90%

AIリスク、サイバー脅威、オペレーションレジリエンスなどの非財務リスクリテラシー向上を最優先事項と認識している割合

積極的なリスク人材戦略

56%

リスク管理の人材育成に対して、全社的な戦略をもち、積極的なアプローチを採用している割合

リスクスキル

88%

3つ以上の分野でリスク管理スキルを積極的に強化している割合

新しいテクノロジーリスクの管理

30%

新たなテクノロジーによる脅威を理解・管理するための人材が十分であると考えているCFOの割合

変革の成熟度は3つの側面により異なる

設計段階からのリスク管理、人材、データ、分析、テクノロジー

組織のリスク管理の成熟度を測定するために、選定した調査項目に基づいてインデックスを作成。回答は標準化され、以下3つの主要素で集計。0(最低成熟度)から1(最高成熟度)までのスコアが付与されます。

今こそリスクリーダーシップを発揮すべき

「設計段階からのリスク管理」、「データ、分析、テクノロジー」、「人材」という変化の3つの要素において進歩的な金融機関は、より効果的で将来に対応したリスク管理を主導する態勢が整っています。

まだ後れを取っている金融機関にとって、能力のギャップ解消はもはや選択肢ではなく必須条件です。準備を怠ったことによるコストは、あまりにも非常に高額になります。今決断力を持って行動する組織は、単に衝撃に耐えるだけでなく、それを主導して乗り越えることができる、よりレジリエントで未来に対応したリスク機能を形成することができます。

筆者

David Maya

Senior Managing Director Lead – Finance Risk Compliance

Laura Bray

Senior Managing Director – Finance Risk Compliance

Ozan Karan

Managing Director – Finance Risk Compliance

Ben Shorten

Managing Director – Finance Risk Compliance