調査レポート

概略

概略

  • 近年、多くの企業が重要な経営課題の1つに掲げてきたデジタルトランスフォーメーションは、今や市場で生き残るために必要不可欠です。
  • アクセンチュアの調査では、デジタルフルーエンシー(デジタル活用力)の高い企業はイノベーションの実現や顧客体験価値の向上を通じて、確実に利益を上げていることが分かりました。
  • 「2020 Accenture Global Digital Fluency Study(企業のデジタルフルーエンシーに関するグローバル調査)」では、優秀なデジタル人材に共通する4種類のペルソナが明らかになりました。
  • デジタルに関するこれら4種類のペルソナの特性を理解することで、リーダーは社内の優秀なデジタル人材を特定し、スキルギャップを埋めることができます。


デジタルトランスフォーメーションは企業の生き残りのための必須課題

新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらしたパンデミックをきっかけに、世界中の企業は一夜にして多くの仕事とオペレーションを在宅環境へと移行することになりました。これは、デジタルやテクノロジーなしでは不可能だったはずです。近年、企業は重要な経営課題の1つにデジタルトランスフォーメーションを掲げています。経営環境の変化を注視しながら、従業員のデジタルスキルの習得を支援し、その中でクラウド化も推し進めてきました。今日、このような変革の実現はもはや「未来に向けた願望」ではありません。デジタルトランスフォーメーションは、すでに企業の生き残りの中で避けて通れない必須課題となっているのです。

「デジタルフルーエンシー(デジタル活用力)」は、企業のデジタルワークフォースのテクノロジーリテラシー指数(TQ)+デジタルオペレーション+デジタル基盤+デジタルリーダーシップ/文化のスコアを測定するためのフレームワークです。

従業員の潜在能力を引き出す

アクセンチュア・リサーチでは、企業の最高情報責任者(CIO)10人以上に調査を実施し、デジタル変革に関する各社の成功事例や今後の懸念事項について見解を聞きました。驚くべきことに、多くのテクノロジーリーダーはコロナ禍において18カ月間にわたるデジタルトランスフォーメーション計画を導入し、わずか数日でこの計画を実行に移したことが分かりました。これはまさに、かつてないスピードです。とはいえ、すべての企業がこのような機会を最大限に生かし、持続的な成長が約束された企業へと生まれ変われたわけではありません。

2020 Accenture Global Digital Fluency Study」によると、現時点においてデジタルフルーエンシーの高い企業は全体のわずか14%にとどまっています。これらのデジタルフルーエンシーが高い企業では、従業員がアジャイルの重要性を理解しているため、イノベーションの実現や顧客体験・価値の向上を通じて、確実に利益を上げることができています。

ビジネスリーダーも従業員も、これからはテクノロジーを活用した働き方が当たり前の環境で奮闘していかなければなりません。企業が成功を収めるためには、従業員がデジタルツールやトレーニングへのアクセスできるようにするだけでなく、強いリーダーシップと組織文化に支えられた環境の中で働けるようにしなければ、従業員の潜在能力と創意工夫から生み出す価値を最大化することはできません。

デジタルフルーエンシーの高い組織になるには?

デジタルフルーエンシーは、言語能力と同じように捉える必要があります。ある言語を「使える」人とは、読む・話すといった言語の基本的な機能を使える人のことを指します。これに対して、ある言語を「流暢に使える」人は、これらの基本的な機能を超えて、新しい何かを生み出すことができます(例えば、詩を書く、中身の濃い対話をする)。つまり、ある言語を流暢に扱うことができる人は、その言語で、新しいナレッジを生み出し、創造性や、革新性を発揮します。これらは、読む・話すといった基本的な機能だけでは不可能なことです。

デジタルフルーエンシーも同様です。デジタルフルーエンシーが高い人は、テクノロジーを単に業務に活用するだけではなく、テクノロジーを基盤として創造性を発揮し、新しい働き方を実践できます。私たちの調査において、デジタルフルーエンシーがワークフォースの俊敏性を引き出す鍵になるという結果が得られたのも当然と言えるでしょう。調査では、デジタルフルーエンシーのフレームワークを用いることで、従業員の俊敏性の54%を予測し説明できることが明らかになりました。

デジタルフルーエンシーは、多くの企業のデジタル変革戦略において、欠けている要素です。大抵の場合、従業員のデジタル変革を妨げる要因はテクノロジーそのものではなく、デジタルインフラや文化、リーダーシップ、スキルの不足にあります。大切なのは、テクノロジーの進化と共に、これらの要因について改善を図ることです。

Digital Fluency Framework

なぜデジタルフルーエンシーが重要なのか。デジタルフルーエンシーの高い企業は収益成長率が抜きんでていることが分かっています。

2.7

過去3年間にわたって高い収益成長率(20%以上)を実現している可能性が2.7倍。

5.4

今後3年間にわたっても高い収益成長率(20%以上)を実現する可能性が5.4倍。

69%

従業員から、とても良い職場だと評価されている企業の割合。

68%

顧客満足度で他社に勝っている企業の割合。

62%

イノベーションで他社に勝っている企業の割合。

61%

業務効率で他社に勝っている企業の割合。

4種類のデジタルペルソナとは?

デジタルフルーエンシーのフレームワークを用いることで、企業はデジタルワークフォースを活用して、デジタル力に磨きをかけるための本来複雑なプロセスを、簡素化できます。ただし、このフレームワークも決して万能ではありません。私たちは調査データを詳細に分析し、優秀なデジタル人材にいくつかのタイプがあることを明らかにしました。さらに、そこから統計学的に異なる以下の4種類のデジタルペルソナを見いだしました。

  • リモート・コラボレーター(帰属意識が高く協力的)
  • ディシプリンド・アチーバー(真面目で意欲的)
  • アダプティブ・チームプレーヤー(柔軟性が高い)
  • リレントレス・イノベーター(専門性が高い)

4種類のデジタルペルソナは、業界、地理、職能を問わず存在します。ただしペルソナごとのデジタル体験は、個々のニーズや在職期間、在宅勤務への適合性、デジタル関連のサポートレベルによって異なります

また、デジタルフルーエンシーを高める上でのニーズや心構えもペルソナごとに異なります。企業はこれらのペルソナを備えたデジタル人材を社内で特定することにより、デジタルスキルのギャップを迅速に埋めて、さらなる俊敏性を獲得することが可能です。

Digital workers on the digital fluency spectrum

デジタル力を増強する

多くのビジネスリーダーは、これまでもデジタル化を推し進めてきました。しかし、リーダーは今こそワークフォースのデジタルスキルとデジタル適応性を高めて、企業のデジタル力を磨かなければなりません。最高経営責任者(CEO)から最高情報責任者(CIO)、最高人事責任者(CHRO)に至るすべての幹部は、従業員に適切なデジタルインフラと文化、リーダーシップ、スキル開発の機会を提供して、テクノロジーの進化との連携を図る責任を負っています。

デジタルフルーエンシーフレームワークは、企業における今後のデジタルトランスフォーメーション・プランの策定をスマートに支援します。

デジタル基盤を構築する

コロナをきっかけに、ハイパフォーマンスでデジタルに精通した企業と、そうではない企業の差異が如実になりました。デジタルトランスフォーメーションは、企業がより効率的で変化に柔軟な組織へ生まれ変わるだけでなく、従業員と顧客の両方に新たな体験を生み出す機会をもたらします。クラウドなど、デジタルフルーエンシーの重要な側面を担う最新のテクノロジーを活用することで、企業は変化の時代においても新たな分野にスピーディに方向転換し、人工知能(AI)の全社的導入やロボティクスの活用、従業員のセルフイネーブルメントを実現できるようになります。ただし、企業がデジタル力を磨くには、全社的な変革をリードするキーマンの存在が不可欠です。

特にCIOの役割は欠かすことができません。とはいえ、その役割も変化しています。CIOの主な役割は、もはや会社にITサービスを提供することだけではありません。デジタルが全社のオペレーションに浸透した現在、CIOに求められているのは変革プロセスをリードする役割です。CIOは、アプリケーションやデータのクラウドベース・ソリューションへの移行や、自己実現と自動化の機会に恵まれたデジタルワークプレイスの構築まで、デジタル基盤の構築に向けた旅をリードしていく手助けをすることができます。

ワークフォースのTQを改善する

ワークフォースのテクノロジー指数(TQ)、つまりデジタルテクノロジーについて従業員が持っている熱意+専門知識+価値は、デジタルフルーエンシー フレームワークの重要な構成要素の1つです。組織心理学者の間では、かねてからデジタル化を推し進めるには以下の3つの要素が必要だとされてきました。

  • 適切な態度(姿勢)。デジタル化に対して、人々が積極的な関心を持っていなければならない。
  • 適切なスキル。成功を収めるには、人々が実践的なスキルと能力を備えていなければならない。
  • 社会的必要性。人々はデジタル化が仕事と組織に価値をもたらすと認識していなければならない。

組織におけるデジタルスキル開発のイニシアチブで、これら3つの要素をすべて考慮している例はほとんどありません。私たちの調査でも、多くの組織がデジタルツール/テクノロジーを重視する一方で、従業員のスキル向上を著しく軽視していることが分かりました。

大切なのは、業務でテクノロジーを利用する従業員の状況をデータ分析によって見極めることです。それにより、熱意、スキルセット、価値のどこにギャップがあるか、従業員ごとにどのTQレベルを上げる必要があるのかを把握することができます。そこから、デジタル人材のタイプ別にパフォーマンス、リワード、および学習に関する施策を設計する必要があります。

Understanding the current global digital workforce TQ

デジタルオペレーションを実践する

企業はクラウドなどのデジタルテクノロジーを日常業務に活用して、パフォーマンスを向上しなければなりません。デジタルテクノロジーは従業員のより効率的な業務遂行、データに基づいたスピーディな意思決定、変化し続けるビジネスニーズへの迅速な対応を可能にします。ただし、単にプロセスをデジタル化するだけでは意味がありません。デジタルトランスフォーメーションは、それがプロセスやポリシー、従業員の働き方、顧客とのインタラクションなどに与える影響を考慮しながら、より包括的に実践する必要があります。

テクノロジーを導入し、それを活用する適切なスキルを従業員が身につけたなら、次は彼らの働き方を変革してビジネス全体にメリットを波及させることができます。たとえば、情報へのアクセスが向上すれば、従業員はより効果的に業務を遂行できるでしょう。ただし、その前提として従業員はこれらのイノベーションがもたらす価値を理解していなければなりません。そうでなければ、テクノロジーがただそこに存在するだけで、日常業務の改善にはつながっていきません。

デジタルリーダーシップの文化を醸成する

デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスのあらゆる側面に影響を与えます。この影響を波及させるには、デジタル基盤、デジタルオペレーション、デジタルスキルを身につけたワークフォースのすべてを、デジタル志向のリーダーシップと組織文化によって支援しなければなりません。新たな組織体制はどのようなものであるべきか、役割や責務をいかにして進化させていくか、デジタルを活用して知識共有や協働を促すにはどうすればよいか、リーダーのコミュニケーション能力や共感力、在宅勤務中の従業員の信頼を高めるためにリーダーに必要なトレーニングはどんなものか、といったことを考える必要があります。

デジタルは従業員に新たな課題をもたらす一方、それらの課題の多くを解決するツールにもなります。たとえば、在宅勤務が一般化すれば、従業員はフレキシブルな就労形態を一層求めるようになるかもしれません。協働によるイノベーションの機会、給与の高い職位への異動、あるいは新たな役割や他業界への転職を目指して、トレーニングを受けて適切なスキルを身につけたいといった要望を持つ人もいるでしょう。デジタルは、こうしたさまざまなニーズに応えることができます。

未来を生き抜き、成長を遂げる上で、鍵を握るのはデジタルフルーエンシーです。私たちの調査では、多くの企業にこれから長い道のりが待っていることが分かりました。従業員は学ぶ意欲と心構えを持っています。さあ、貴社はどこから始めますか。

植野 蘭子

ビジネス コンサルティング本部 人材・組織 プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクター


Eva Sage-Gavin

Senior Managing Director – Talent & Organization / Human Potential


Emma McGuigan

Global Lead – Intelligent Platform Services


David Shaw

Managing Director – Talent & Organization / Human Potential

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