業界ごとに濃淡が異なる日本企業のクラウド活用状況

今日の日本の大手企業においては、業界・業態を問わず、クラウドの活用を「まったく考えていない」という企業は皆無といってよい状況です。アクセンチュアの調査でも、世界の各業界におけるリーダー企業の95%が「クラウドを利用中または利用を検討」の状況にあり、日本もほぼ同様です。ですが実際の導入率においては、ワークロードの20〜40%¹ほどであるため、本格的な移行は緒についたところだと言えます。

日本のクラウド移行状況は、業種・業界によって差が顕著です。先行しているのは製造、小売、流通、そして天然資源などの業界です。これらの業界では80%近い企業が向こう数年のうちにビジネスプラットフォームの全面クラウド移行を推進・完了するものと見られ、クラウド活用の経験や知見を蓄積しつつあります。

追随しているのは、金融機関や電力(ユーティリティ)業界などです。これらの“追随中の業界”でも、2025年頃までにレガシーシステムのモダナイゼーションの議論と合わせ、クラウド移行が促進されるものと予想されます。

このように、ビジネスのプラットフォームとしてクラウドを活用することは、いまやビジネストレンドとしてあらゆる業界の企業における「共通の方向性」となっています。

クラウド活用は「DX」の御旗のもと、CEOアジェンダに

とはいえクラウドの活用は手段であり、それ自体が目的ではありません。多くの経営者の「クラウドへの期待」は、過去においてはITコスト削減や、データセンター運用の負荷からの脱却(DCエグジット)といった、狭いIT領域を対象としたテーマでした。

しかし昨今ではクラウドを、成長するビジネスのビークル(乗り物)として活用したいという考え方が広く浸透しつつあるのです。

たとえば「クラウド活用によって新しいビジネスケースを仕立てる」「クラウドを前提として新規ビジネスを設計・創出する」といった観点での議論が活発化しています。このようにクラウドは、ビジネス機能やエコシステムの連携の中心的な存在として見られており、経営のトップライン向上に貢献する役割が期待されています。

その典型例が、「デジタルトランスフォーメーション(DX)のプラットフォーム」としてのクラウド活用です。いうなれば、「DXの御旗のもと、クラウド活用のイニシアチブが進んでいる」と表現できるのが昨今のクラウドを取り巻く状況です。中期経営計画に「基幹システムの迅速なクラウド移行の実現」を明記することが当たり前となってきており、経営者の関心は次世代の事業創造のプラットフォームとしてのクラウドに移っているといえるでしょう。

一方で、業界の垣根がディスラプト(破壊)されつつあるいま、レガシーの足かせがない「クラウドネイティブ」の企業と既存企業との競争が激化しています。既存企業はこれまで四半世紀近くにわたってビジネスを支えてきたメインフレームからの脱却という難事業に挑戦しています。チャレンジングなこの取り組みにおいては、いかにして「ジャーニーマップ」を描き、クラウド移行を戦略的に推進していくかが重要です。

クラウドによるビジネスプラットフォーム構築への「3レベル・アプローチ」

日本企業がビジネスプラットフォームとしてクラウドを活用してトップライン向上などの飛躍的成長を実現するために、アクセンチュアではクラウド移行における「CIOCEO、エンタープライズ全体」の3つのレベルを対象とするアプローチを提唱しています。

  • CIOアジェンダ:まず移し、人とモノの効率性を刈り取る
    クラウドをテコにして、ITシステムの「足回り」の効率化とIT人材の高度化を目指すことがテーマです。多くのCIOが、クラウドをプラットフォームや基盤として、全社規模でのビジネス・業務の標準化への効果を狙っています。
  • CEOアジェンダ:ビジネスにアドレスしてトップラインを伸ばす
    次世代の商品・サービスをどのように貢献するか、自社のトップラインを伸ばすためにクラウドをテコにしたいと考えているCEOが増えています。お客様企業の事業成長にコミットしているアクセンチュアでは、お客様のビジネス成長にダイレクトに貢献するクラウドを提案しています。
  • ビジネスケースのマネジメント:エンタープライズ規模でのスケールを仕立てる
    上記2つのアジェンダをいかにしてビジネスケースとして確立させるかがポイントです。アクセンチュアでは以下の章で紹介する9つのエントリーポイントで、お客様のクラウド活用とスケールの実現のシナリオを提唱しています。このアプローチではCFO向けの「セルフファンディング的なITコスト削減と投資」をバンドルすることで、ビジネスケースのマネジメントも支援しています。

クラウドをビジネスケースに仕立てる「エントリーポイント」

アクセンチュアがお客様へ提供しているサービスの特長は、経営層との戦略策定や現場業務部門との調整と合意形成、開発や移行といったITシステム関係の実業務、そして移行後の運用や保守による継続的な支援、目標達成へのコミットを含めたEnd-To-Endでサービスを提供している点にあります。

アクセンチュアではお客様のクラウド移行へのプロセスを「ジャーニー・トゥ・クラウド(J2C)」として体系化し、グローバル規模での経験や知見を取り入れた方法論として整理しています。このJ2Cでは、クラウド移行をビジネスとしてスケールに仕立てるための9つのエントリーポイントを提唱しています。

これらはクラウドをテコにして、実現すべきビジネスケースにフォーカスしている点が重要です。アクセンチュアは単にクラウド環境を構築するだけでなく、クラウドネイティブのアプリの実装や、コンサルティング、アウトソーシングのサービスを含めてお客様における「クラウドによる価値の最大化」を実現しています。

クラウド移行の第1歩は「スケール拡大」と共に

2020年7月にアクセンチュアが公開した新しい論考レポート『Coud Ascent(クラウド・アセント)』では、海外企業の数々のクラウド移行に携わった経験に基づく知見や情報を体系化して公開しています。

このレポートで、特に日本企業のお客様に注目いただきたい点は、5段階あるクラウド移行の効果的なプロセスの第1歩を「マイグレーションとスケールアップ」と定義していることです。

マイグレーションとスケールアップ

多くのクラウドベンダーやSI企業が「まず移行する」というアプローチを提唱していることはご承知かもしれませんが、最初のステップで「最初に目先の効率性を刈り取る」と踏み込んでいる点が『Cloud Ascent』の特筆すべき点です。

また、この論考レポートでは、AWSMicrosft AzureGoogle Cloud Platformを「ハイパースケーラー」と呼び、飛躍的なスケール化を実現する存在と定義しています。限られた時間の中で、いかにしてお客様のビジネス価値を最大化するかにもフォーカスしており、そのためにどのようなパートナー関係を構築するかが重要なテーマの1つとなっています。

そして「マイグレーションとスケールアップ」と「ハイパースケーラーで最大化する」の先のステップには「モダナイゼーションとアクセラレート」「実行と最適化」「イノベーションと事業成長」を位置付けており、クラウドをテコとして、最終的にはイノベーションの実現と企業のトップラインを伸ばすアジェンダへと展開していくことが明記されています。

つまり、単純な「移行」ではなく「スケールの拡大」こそがクラウド移行の第1ステップの本質です。アクセンチュアではこの成果をお客様が実現するために、クラウドの技術に関する専門アーキテクトを組織化した「Cloud Pod」を専門組織のCloud Center of ExcellenceCloud COE)の中心に据えています。

Cloud Podは幅広い業界のお客様のクラウド活用を支援する組織です。アクセンチュアのインドやフィリピンの拠点に所属する専門家集団と連携し、グローバルネットワークの強みを発揮してお客様に高い価値をご提供しています。

クラウドをテコにDX実現を支援

クラウドの活用はお客様の事業成長を「テコの原理」でスケールする手段です。アクセンチュアのクラウド専門チームは、お客様がクラウドを使って創出したいビジネス価値は何かという「目的」にフォーカスし、目的達成のためのジャーニーやプラン、ロードマップの策定を戦略レベルからご支援しています。

なぜアクセンチュアはそのようなアプローチを採っているのでしょうか。その理由はクラウドが「ITとビジネスの両方にまたがるアジェンダ」だからという点に尽きます。日本国内でクラウド活用に成功し、大きな成果を挙げている企業はクラウドをDXの文脈で位置づけ、戦略に合致する明確な目的性を持って取り組んでいます。

クラウドについて「セキュリティの懸念」をおっしゃるエグゼクティブは、今も少なくありません。しかしクラウドは、セキュリティはもちろん、業務プロセスや組織のガバナンス、人材のスキルなどを含み、包括的にトランスフォームしていくべきテーマです。

お客様企業のビジネスケースのトランスフォームを、クラウド起点でご支援していくアクセンチュアは、お客様における最適なパートナーとして成果にコミットしてサービスをご提供しています。

出典

1Cloud Ascent

西村 雅史

テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントクラウド アンド インフラストラクチャー グループ日本統括 マネジング・ディレクター

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