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知見

革新的なイノベーション:変革のメガトレンド

所要時間:約9分

概略

  • テクノロジーが急速に進化する中、企業は革新的なイノベーションを創出し、前例のない不確実な時代に成功するための新たな戦略が必要です。
  • レガシーテクノロジーは企業変革の障壁となります。一方で、クラウド、AI、メタバース上に構築された強力な「デジタルコア」は企業の継続的変革を促進します。
  • 今こそ、クラウド、AI、メタバースの力を活用した「デジタルコア」を確立し、次世代テクノロジーが持つ真価を享受する時です。

革新の新時代

クラウド、AI、メタバースといったテクノロジーの誕生でビジネスは創造的破壊に直面する一方、これらはビジネスの生産的改革に不可欠でもあります。

この数十年間で、テクノロジーは加速度的に飛躍しました。企業は、大きな変曲点ごとに絶えず自ら変革を行わなければ、競合他社に追いつくことはできず、また、長期にわたって存続することもできません。93%以上の企業がIT基盤の拡張を続けています。またその半数以上が、AI(51%)とクラウド・サービス(50%)への投資水準を今後1年間で引き上げる予定です。また、3分の1以上の企業が、データテクノロジー(42%)、セキュリティ(39%)、通信ネットワーク(37%)といった分野でデジタルコアをさらに発展させる予定です。企業が注力しているのは採用領域だけでなく、テクノロジー領域も同様に注力しているのです。

75%

すでにAIをビジネス戦略に組み込んでいる企業の割合です。その目的は研究開発期間の短縮や、顧客体験の向上などさまざまです。

1兆ドル

メタバース領域で2025年末までに到達すると予想されている商業的価値です。

6倍

相互運用性が高い企業は、相互運用性が低い企業に比べ6倍のスピードで売上を伸ばし、年間売上成長率をさらに5%ポイント押し上げています。

革新的なイノベーションを創出するために何が必要なのでしょうか?以下3つの特徴のうちのいずれか1つが必要です。

1. カテゴリーを定義する新しい製品、サービス、体験の確立

革新的なイノベーションの原動力は、成長や収益性だけではありません。革新的なイノベーションは事業全体や事業カテゴリーを創出します。時には新たな業界すらも生み出すことがあります。製品であれ、サービスであれ、体験であれ、これまでにないものを生み出すことによって、イノベーションは起こります。スマートフォンに組み込まれた生体認証センサー技術、あるいは、インドで確立されたUPI決済インフラを思い浮かべてください。後者はユーザーが決済基準に関係なく、プラットフォーム内やプラットフォーム間での送金を可能にしました。巨大な成功例やその他の新製品を業界に生み出しただけでなく、世界中の持続可能な経済発展の基礎を築いたのです。

2. 価値実現までの時間を大幅に短縮する

革新的なイノベーションは素晴らしいアイデアから始まりますが、成功の鍵は、そのアイデアを大幅に短縮された時間で実現することです。例えば、COVID-19ワクチンにつながった、細胞が病気と闘うタンパク質を産生するための命令を伝えるmRNAを設計したモデルナ社のプロセスを考えてみましょう。これはモデルナ社に利益をもたらしただけでなく、製薬業界全体を活性化させました。一流企業は、ひとつの分野でひとつのアイデアの可能性に賭けるのではなく、さまざまな開発段階にある新製品やベンチャー企業のアイデアをダイナミックにポートフォリオ化します。そうすることで、成功の確率を高めながら、リスクを分散させるのです。

3. 開発コストの大幅な削減

研究への投資が急増しているため、イノベーションにかかるコストは高い一方、そのリターンは不確実です。しかし、新たなテクノロジーはこの傾向を劇的に逆転させる可能性を秘めています。デジタル・ツイン、クラウドによるコンピューター・ビジョン、エッジ、プライベート5Gといった破壊的テクノロジーを既存の製造オペレーション管理(MOM)アーキテクチャと並行して導入することで、メーカーは長年のテクノロジー投資からより多くの価値を引き出し、"リッピング&リプレース"を回避することができます。これにより、開発時間と関連コストが大幅に削減されるでしょう。

次世代の革新的なイノベーションはどのように起こるのでしょうか?

1. プラットフォーム経済の可能性を解き放つ

企業がお互いに協力することで、差別化された新しい製品やサービスをお客様・ユーザーに提供することができます。これは、ソーシャル・グラフ(基本的にはソーシャル・ネットワークのモデル)の力をビジネスの世界に取り入れるということです。その典型的な例が、自動車保険業界での新しい形の保険提供です。ドライバーは、いつ、どこで、どのように運転するかに合わせて個々にカスタマイズされた自動車保険サービスを受けることができます。企業は、既存市場と隣接市場の両方において、これまで関わりのなかったパートナーや他の業界関係者と協力関係を築くべきです。そうすることで、プラットフォーム・ベースのビジネス・モデルを活用し、差別化された顧客価値を提供する新しい商品やサービスを導入することができます。

2. 次世代インテリジェンスの展開

企業がデータを自社で管理できるようになれば、次世代のインテリジェンスを目指すことができます。それは、ライブで、マルチモーダルかつクロスファンクショナルで、社内外のソースから推論を引き出すことを可能にします。中国を拠点とするSheinは、次世代インテリジェンスを利用して需要主導型の商品デザインを刷新したことで、世界最大のファッション小売企業となりました。商品チームは、クリック数と売上に基づいて素早くデザインを変更します。そして、アルゴリズムが生産計画を決定し、必要な資材を自動的に発注し、似たようなプロフィールのユーザーにアイテムを推薦することで購買につなげます。このようなモデルは他の産業にも応用でき、大量の在庫が無駄になるのを防ぎ、在庫にかかる現金を最小限に抑えることができます。

3. 計算とアルゴリズムの進歩を利用する

私たちはスーパーコンピューティングと高度なAIの時代に突入しており、イノベーションがより安価に、より身近に、よりリスクが少なく、より多くの選択肢を提供するようになりました。しかし、量子コンピューティングのような高度なコンピューティング・システムの恩恵を享受する時代はまだ先です。それまで間、エンジニアは従来のコンピューティング・システムと次世代コンピューティングの要素を融合させたハイブリッド・アプローチを取らなければならなりません。そうすることで、従来のコンピューティング・システムの拡張性と信頼性を活用しながら、先進的なコンピューティングのパフォーマンスと効率の向上を達成することができます。このようなブレンド・ソリューションは、今後12~24ヶ月の間に正当な価値を提供することができるでしょう。

テクノロジーを革新的なイノベーションに導くことは可能である

次世代テクノロジーを斬新な方法で応用し、ホワイトスペースのビジネスチャンスを獲得し、急務のビジネスニーズに対応します。

私たちは、すでに創出された革新的なイノベーションに関する多くの事例や、クラウド、AI、メタバースといった創造的破壊を可能にするテクノロジーの有望性から刺激を受けています。こうしたメガトレンドであるテクノロジーを活用してデジタルコアを確立し、次世代テクノロジーの進化を活用することで、デジタル・ネイティブ企業だけでなく、あらゆる企業が収益成長、業務効率化、イノベーションの拡大によって企業を改革することができます。ビジネスリーダーが漸進的なイノベーションという考え方を捨て、革新的なアプローチを採用すれば、企業、業界全体、そしてより広い社会を劇的に作り変えることができるでしょう。

筆者

ポール・ドーアティ

アクセンチュア グループ・チーフ・エグゼクティブ(テクノロジー担当)兼チーフ・テクノロジー・オフィサー

Karthik Narain

Group Chief Executive – Technology

Jim Wilson

Global Managing Director – Thought Leadership & Technology Research