概略

概略

  • DXに向けて「攻めのIT」分野への投資を強化するには、維持コストが課題となるレガシーシステムの刷新が必要
  • メインフレームベンダーもメインフレームビジネスからの撤退を表明しており、ユーザー企業の対応は急務
  • AWSではメインフレームのクラウドマイグレーションを支援する「AWS Mainframe Modernization」を2021年から提供開始
  • アクセンチュアではAWSのソリューションに独自の知見を加え、日本市場にフィットしたメインフレームモダナイゼーションサービスを提供可能


(左)テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービス グループ アソシエイト・ディレクター/中野 恭秀 (右)アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 マイグレーション&モダナイゼーション事業開発本部 シニアマイグレーションスペシャリスト/清水 大紀氏

コストや人材の問題からモダナイゼーションは前途多難

メインフレームユーザー企業が直面する課題とは?

中野 恭秀(以下、中野): 経済産業省が2018年9月にまとめた「DXレポート」は、「2025年の崖」を克服してDXを実現するために「レガシーシステムの刷新」が急務であることを指摘しています。しかしながら実際には、多くの企業でレガシーシステムと呼ばれるメインフレームによる基幹業務システムがいまなお稼働し続けており、新たな基盤への刷新・移行が進んでいない状況にあります。

刷新・移行が進まない理由としてまず挙げられるのが「IT予算」の配分にあります。特にレガシーシステムを抱える企業では、既存の基幹業務システムを保守・運用する「守りのIT投資」にIT予算の半分以上を支出しています。そのためにDXを推進し、デジタル領域で新しいビジネスを創造する「攻めのIT投資」に回せる予算に限界があります。したがって、レガシーシステムにかかる予算を圧縮しなければならないことは、多くの企業でも認識されているところです。もう1つ、理由として挙げられるのが「人材」です。攻めのIT投資を進めていくには、自分の業務をデジタルの力を使ってどのように発展させ、ビジネスを創造するのかを考え、実践する人材が必要になります。しかしながら、会社組織の中に業務とITの両方に精通した人材はほとんどいません。

レガシーシステムとはいえ、当初は業務効率化を図るためにシステムを構築したわけですが、そのシステムが稼働して30年、40年と経過する中で社内の人材が2代目、3代目と代替わりし、ブラックボックス化が進んでしまいました。日々の業務が安定稼働しているのにもかかわらず、実は業務とシステムのつなぎがどうなっているのかを理解できていません。こうした人材面の課題を抱えたままでは、新しい基盤へ刷新・移行するのは非常に困難と言えるでしょう。

アクセンチュア株式会社/中野 恭秀

清水 大紀氏(以下、清水): まさにおっしゃる通りだと思います。レガシーシステムを運用している企業であっても自社の財務状況や人材リソースに応じた、身の丈にあったIT投資しかできません。DXを推進するには攻めのIT投資が必要なのに、レガシーシステムの固定費用がかかってそちらに予算を回せないのです。また、レガシーシステムがブラックボックス化して触れないので、継ぎ足しでシステムを拡張するしかないという状況に陥ってしまっています。さらにインターネット技術の発展、オープンソースの台頭といった技術トレンドが著しく変化したのに対し、若い世代の人材はいつまでも古い技術を学ばなければならないことにモチベーションが保てないことも課題でしょう。

中野: 技術トレンドという意味では、メインフレームを提供してきたベンダー各社が相次いでビジネス撤退に動いていることにも注目すべきでしょう。例えば日立製作所はすでにメインフレームの生産を終了し、IBMからのOEM調達に切り替えています。先日は富士通が2030年にメインフレームの生産、2035年にサポートを終了するというインパクトのある発表もありました。このように、特に国産メインフレームを利用しているユーザー企業は、メインフレームからの脱却が待ったなしの状況と言えます。

もちろん、メインフレームユーザー企業の多くはこうした危機感を強く認識しており、課題解決に向けた取り組みを進めようとしています。アクセンチュアにもレガシーシステムのモダナイゼーション、メインフレームのマイグレーションに関する引き合いが非常に多く寄せられています。しかしながら刷新・移行にはコストも時間もかかります。DXレポートでは「2025年の崖」と問題提起しましたが、実際には金融機関の多くが2030年を目標にした長期計画で刷新・移行を実現するプランを描いています。ただし、コストや人材面の課題を考えると、2035年ごろまでかかるのではないかと予想しています。

"ブラックボックス化してしまったために継ぎ足しでしかシステムを拡張できないという状況から脱却することが必要"

– 清水 大紀氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)

AWSのソリューションに日本市場独自のノウハウを融合

COBOLベースのレガシーシステムをクラウドへ移行する方法とは?

清水: レガシーシステムのモダナイゼーション、メインフレームのマイグレーションについては、Amazon Web Services(AWS)でも長年にわたり注目してきました。そうした解決策として、2021年11月に開催された「AWS re:Invent」でAWS Mainframe Modernization」という新しいサービスを発表しました。

このサービスは、レガシーシステムで稼働するアプリケーション資産をクラウドへマイグレーションしていくために必要となる道具立て一式をそろえ、マネージドサービスとして提供します。メインフレームユーザー企業だけでなく、移行を支援するソリューションパッケージベンダーやシステムインテグレーターも利用することができます。さらに、アプリケーションのソースコード分析ツール、開発・テストツール、本番環境に使えるプラットフォームを用意しています。特にサービス提供にあたっては、2つの重要な機能を実装しました。

1つは、レガシーシステムのアプリケーションをそのまま保持し、既存のCOBOLやPL/Iのコードを最小限の変更で再利用しながら、AWSクラウド上にリプラットフォームする機能です。これは日本国内でも以前からビジネスを展開する英Micro Focus社のソリューションを採用したものです。最近ではCOBOLのままAPI経由でプログラムを呼び出したりマイクロサービス化したりする機能拡張が図られています。

もう1つは、2021年10月にAWSへ合流した仏Blu Age社が開発したツールを使った機能です。このツールはCOBOLやPL/I、RPGといったレガシーシステムのプログラムコードを解析し、ソースコードをリファクタリングした上でモダンなJavaに変換します。Blu AgeはこれまでにAWS Lambdaのサーバーレス環境でCOBOLシステムを稼働させる「Serverless COBOL for AWS」を提供してきましたが、このBlu AgeAWS Mainframe Modernizationに含まれるようになりました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社/清水 大紀氏

中野: アクセンチュアでは、いま清水さんが言及されたさまざまなソリューションを扱っていますが、我々の役割は単にツールを提供することではありません。あくまでもお客様の立場に立ってレガシーシステムの刷新・移行をお手伝いすることにあります。

その中では、AWS Mainframe ModernizationをはじめとするAWSのサービスを活用することになりますが、必ずしもAWSのサービスだけで賄えるわけではありません。特に日本は国産メインフレームベンダー製品の導入比率が高いという世界でも稀有な市場なので、さらに多くの道具立てが必要になります。例えば、清水さんから紹介もあったServerless COBOL for AWSについては、アクセンチュアでも従来から活用実績があるものの、これですべてに対応できるわけではありません。

そこでアクセンチュアでは2019年3月、メインフレームをはじめとする業務システムの開発・移行支援で実績のある大阪のカルテック・エスキューブ社からシステム移行支援関連の知的財産を譲り受け、同社が保有していた各種レガシーシステム向けソースコード変換ツールなどをアクセンチュアのソリューションとして取り込みました。

これによりAWSがグローバルで用意したものに加え、アクセンチュアが日本市場にフィットするツールを組み合わせたソリューションサービスが提供できるようになりました。こうして刷新・移行した次世代のシステム基盤は、アプリケーション開発や運用管理を担う若手人材のモチベーションアップにもつながっていくと考えています。

"AWSがグローバルで提供するソリューションをベースに、日本市場にフィットするツールを組み合わせてメインフレームモダナイゼーションを支援する"

– 中野 恭秀(アクセンチュア株式会社)

ツールだけでは解決できないシステム移行を独自のノウハウで支援

AWSとアクセンチュアが組むメリットとは?

清水: メインフレームからAWSのクラウド環境へ基幹業務システム基盤を刷新・移行した事例はすでに多数存在しています。例えば米国では米空軍、大手新聞社のニューヨークタイムズ、大手金融会社のキャピタル・ワンなどがメインフレームからAWSクラウドへ移行し、AWSの事例でも紹介しています。同様の事例は日本国内にも存在しています。

すでに移行した事例ではレガシーシステムをクラウド環境に人海戦術でリビルドしたケースもありますが、最近は当時の業務を知る人材が現役を退いていることも多く、そう簡単には移行できません。そこでまずは可能な範囲でパッケージに移行し、それで対応が難しい場合にコードを自動変換するツールを使ってクラウドへリプラットフォームするという二段階の移行がトレンドになっています。ただし、多くのお客様はレガシーシステムのソースコードを自動変換するツールを持っていません。アクセンチュアのように刷新・移行のノウハウと知見、ツールを併せ持ったパートナーに支援してもらうことは極めて重要だと思っています。

中野: アクセンチュアは、2015年に「Accenture AWS Business Group(AABG)」を立ち上げ、AWSと協働でお客様のクラウド活用推進、新たなビジネス価値創出の支援に取り組んできました。2017年からはベストプラクティスをまとめた「AWS Well-Architected フレームワーク」も取り入れながら、協業を本格化させています。レガシーシステムを刷新・移行する案件についても、移行の際の中間的な開発・テスト環境を中心に、AWSクラウドを積極的に活用してきました。メインフレームからAWSクラウドへの移行については現在、パイロット的なプロジェクトから本番移行中のプロジェクトまでステータスが異なる大小10以上のプロジェクトが同時進行しています。

2020年2月にはCOBOLの登場から60年を迎えたことを記念し、「IT温故知新! COBOLハッカソン 2020」というイベントを開催するなど、COBOLエンジニアのすそ野を広げる活動にも取り組んでいます。このイベントでは『COBOLでクラウド連携やってみた!』というテーマのもと、AWSを用いて、自然言語処理やサーバーレスなどを含む最新技術をCOBOLと組み合わせ、レガシーな技術が最新のデジタル技術と連携できることを証明しました。

アクセンチュアはツールベンダーではないので、中立的な立場でお客様の状況に合わせたさまざまな選択肢を用意できるところに強みがあります。レガシーシステムの刷新・移行については、経営課題の解決に向け、あるべきITの姿を考えるためにも、プランニングのところからお客様の支援に参画することが最も価値を感じていただけると考えています。

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