商品の真の機能性を消費者に伝えるためには、どのような没入型体験を提供すればよいのでしょうか。デジタルコマースにおける近接性の課題を解決するために、デジタル世界と現実世界の境界を感じさせない有意義な没入型体験を創出している企業の事例をいくつか見てみましょう。

仮想現実(VR)体験を通して現実世界にアクセス

没入型体験は実際の物理空間における状況をシミュレートして設計します。目指すべきは、実店舗における購買体験の次善の策ではなく、それを上回る卓越した体験を提供することです。消費者に企業やブランドとのつながりを感じてもらいながら、購入に至るすべてのプロセスで、よりクールかつ本質を見極める体験を提供することが重要になります。エミレーツ航空では、ウェブサイト上で仮想現実(VR)技術を使用した機内の3Dモデルを提供しています。3Dモデルの情報に基づいて座席を選択し、機内の環境をプレビューできるため、旅行者は実際に機内で有意義な時間を過ごすための準備をすることができます。また、ビューティ業界の老舗であるディオールでは、パリの旗艦店を拠点とする仮想現実ストアを開設しています。消費者は360度の3D体験サービスを通して店舗内の商品を見て回ることができるため、オンラインショッピングサイトにおける手続きの負荷を軽減することができます。

47%

没入型技術を通して商品とのつながりを感じることができると回答した消費者の割合。

納得するまで吟味したい消費者心理

消費者は没入型体験を利用して、商品を身に着けたり、配置したりする際にどのように見えるのかを知ることができます。YouTubeが提供しているデジタル空間で化粧品を試すことができる拡張現実(AR)ソリューションを、最初に活用した企業がMAC Cosmeticsです。消費者はメイクアップのチュートリアルを視聴しながらMACの口紅を試したり、購入したりすることができます。同社のサービスはテクノロジー、実店舗における顧客体験、インフルエンサーの活用、独創性を融合した斬新な手法を用いています。また、イノベーターの旗手であるNikeでは、AR技術を使用して消費者がシューズの履き心地を試すことができるサービスを提供しています。Nike公式アプリのNike Fit機能を使用してスマートフォンのカメラで足を撮影するとサイズを採寸することができ、購入の際には登録したサイズに基づいた最適なシューズを提案してくれます。2社が実現しているような没入型ソリューションは、オンラインショッピングにおける古くからの課題であった「フィット感」に対する消費者の不安を払拭する画期的な可能性をもたらします。その一方で、企業はプライバシーに関する消費者の懸念を十分に理解し、没入型体験における個人情報の保護と使用に関するポリシーを消費者に明示し、透明性を維持して運用する必要があります。

57%

パーソナライズされたレコメンデーションなどの没入型体験における企業の個人情報の取り扱いについて懸念があると回答した消費者の割合。

より多くの情報を届ける

没入型体験では、企業は分厚い取り扱い説明書を通じてではなく、体験型アプローチによって消費者に商品価値を伝えることができます。購入前だけではなく購入後も消費者に定期的に商品情報を届けることで、顧客エンゲージメントを構築するアプローチは、すでに多くの自動車メーカーで採用され始めています。トヨタ自動車では、「あなたならどれを選ぶ?」というスタイルで消費者が自己学習できる拡張現実(AR)体験を提供しており、消費者は調べたい車種や装備を選択することで仮想自動車を体験できます。専用アプリは不要でソーシャルメディアのバナー広告などからアクセスできるため、リーチの拡大も見込めます。またエレクトロニクス業界のBang & Olufsenでは、消費者がいつでも、どこからでも商品を見ることができ、スピーカーをオンにして音質をテストしたり、商品の機能やオプションについて調べたり、ストアに問い合わせしたりできるAR体験アプリを提供しています。

53%

没入型技術を使用したサービスを通じて定期的に交流している企業やブランドは強く印象に残ると回答した消費者の割合。

不格好なVRヘッドセットを必要としない、誰もが快適に利用できる没入型技術の時代

これまでの没入型技術には、特定の人だけが所有するようなずっしりと重たく不恰好なVRヘッドセットが欠かせないアイテムでしたが、没入型技術の普及にともない、誰もが快適に利用できるように進化しています。

モバイルAR(拡張現実)

カメラに対応したサービスで、スマートフォンからアクセスして利用できます。商品ビジュアル、ナビゲーション、ゲーム、エンターテインメントは人気のモバイルARアプリです。

ウェブXR(クロスリアリティ)

忠実度の高い3Dグラフィックや360度動画にウェブブラウザからアクセスして利用できるサービスで、さまざまなデバイス間で互換性のあるエクスペリエンスを提供します。

ゲームエンジンソフトウェア

広範なプラットフォーム上に構築され、3D商品検索を可能にする製品コンフィギュレーター機能などの背後で仮想体験を強化しています。

全て見る

黒川 順一郎

執行役員 インタラクティブ本部 統括本部長​


加藤 圭介

インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター​

関連コンテンツはこちら

「デジタルツイン」の最新活用事例
Fjord Trends 2020

ニュースレター
最新コラム・調査をニュースレターで 最新コラム・調査をニュースレターで