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調査レポート

レジリエンスを身につけ、企業全体を再創造する:CEOガイド

2023/04/27

概略

  • アクセンチュアの最新分析によると、創造的破壊の前、途中、後に利益を維持しながら成長できた企業は、わずか5分の1以下でした。

  • グローバル企業1,615社のデータを分析し、なぜこれらの企業がよりレジリエントであるかを特定するため、3つのパフォーマンス指標に基づいて分析しました。

  • そして、「長期的利益成長」を成し遂げた企業は、全ての指標で特徴を持ちながらバランスよくケイパビリティを獲得していることが分かりました。

  • さらに、テクノロジーと人材の両方で高いスコアを示した企業は、レジリエンスを強化する確率が4倍になることが分かりました。

不確実性が高い世界で成功するために

今日のCEOは、極めて複雑なビジネス環境を乗り切ることを課せられています。また、CEOが直面する創造的破壊は過去最高となり、5年間で200%増加しました。93%ものCEOは、自社ビジネスで10以上のグローバルな課題に対処しています。将来のショックと新たな創造的破壊は確実にやってくるため、レジリエンスの必要性は、かつてないほど緊急性を帯びているのです。

 

数字で見るレジリエンス

売上成長と収益性(2017年~2022年)に基づき企業をセグメント化すると、5つの業績グループが見えてきます。
売上成長と収益性(2017年~2022年)に基づき企業をセグメント化すると、5つの業績グループが見えてきます。

図1:売上成長と収益性(2017年~2022年)に基づいて企業をセグメントすると、5つの業績グループが見えてきます。

グローバル企業1,615社を対象としたアクセンチュアの最新分析によると、混乱に耐える顕著なケイパビリティを持つ企業は5分の1以下であり、パンデミックの期間にレジリエンスを発揮した企業はわずか15%でした(図1参照)。これら長期的な利益成長を成し遂げる企業は、同業他社よりも高い成長と収益性を達成しています。

さらに興味深いことに、長期的な利益成長を成し遂げる企業は、混乱が収まるとさらに高いレベルの業績を達成します(図2参照)。このような企業は、良い時も悪い時も、長期的な利益成長を示しています。不確実性の中で進化し、成功し、繁栄しながら、常に "適応力 "を状況に合わせて高めているのです。

 

アクセンチュアのレジリエンス・インデックス

各グループの平均企業のパーセンタイル位置が、過去の中央値に対してどの位置にあるかを表します。

長期的に利益成長を成し遂げる企業は、レジリエンスのすべての指標において常に同業他社を上回り、危機からより強く立ち直っています。
長期的に利益成長を成し遂げる企業は、レジリエンスのすべての指標において常に同業他社を上回り、危機からより強く立ち直っています。

図 2: 長期的に利益成長を成し遂げる企業は、レジリエンスのすべての指標において常に同業他社を上回り、危機からより強く立ち直っています。

長期的利益成長を成し遂げる: リーダーたちからの教訓

これらの企業がどのように利益成長を継続的に実現しているかをより深く理解するため、アクセンチュアのレジリエンス・インデックスを用いて、2018年年初から2022年第3四半期まで、財務管理、ビジネスケイパビリティ、テクノロジーの成熟度という3つのパフォーマンス指標における企業の強みを分析しました。分析の結果、トップパフォーマーは3つの重要な点で際立っています:

レジリエンス・インデックスのすべてのパフォーマンス指標で強靭なケイパビリティを発揮。
長期的な利益成長を成し遂げる企業の半数近くが、財務、ビジネス、テクノロジーの各指標で平均を上回るスコアを達成しています。また、各指標内すべてのケイパビリティで同業他社を上回っています。レジリエンスを構築するためには、あらゆる指標、あらゆるケイパビリティを強化することが重要なのです。

創造的破壊に負けないレジリエンスを備える。
長期的収益成長を成し遂げる企業は、混乱や危機の後、より早く、より強く立ち上がることができます。私たちは、パンデミックの前、途中、後にこれを目撃しました。長期的収益成長を成し遂げる企業は、一貫して高いレジリエンスを示し、パンデミック の前後でさらにリードを広げ、業績格差を拡大させたのです。また、レジリエンス・インデックスのすべての指標でスコアが上昇しました。これに対して低成長・低収益の企業は、各指標でスコアが低下しています。

強力なデジタル・コアが、競争優位を実現する。
長期的な利益成長を成し遂げる企業は、テクノロジーの面で低成長・低収益の同業他社に大きな差を付けています。企業全体に組み込まれた強力なデジタル・コアが、長期的な利益成長を生み出す源泉なのです。

業界の視点

長期的な利益成長を成し遂げる企業は、低収益・低成長の同業他社に比べて、レジリエンス・インデックスの各項目でバランスの取れた強さを持っています。これは、すべての業界に当てはまります。しかし、これは長期的な利益成長への道筋が一様であることは意味していません。最も業績の良い業界でも、レジリエンス・インデックス の 1 つまたは複数のケイパビリティ領域で相対的な弱点が見られるからです。

長期的に高い業績を上げている企業グループを業界単位で比較すると、例えば、ソフトウェアやプラットフォーム業界は人材と持続可能性の分野で低いスコアを示し、航空宇宙・防衛業界は顧客能力が不足しています。また、ライフサイエンス業界では、サプライチェーンとオペレーションの問題が足かせとなる傾向があります。これらの弱点を克服することで、企業はさらに高いレベルのパフォーマンスとレジリエンスを達成することができるのです。

さらに、オッズ分析と機械学習を用いて業界内で他社との業績比較をし、企業が長期的な利益成長を達成する可能性を算出することが可能です。その結果、同業他社との比較で優れた業績を上げた場合、その企業が長期的な利益成長を成し遂げる確率は、他業界との比較よりも70%高いことがわかりました。

CEOへの提言

長期的な利益成長を保証するレジリエンスを実現しようとするCEOは、今すぐ以下3つのアクションを起こすべきです:

ジェネレーティブAIなどの画期的な技術進展を含め、クラウド、データ、AIなどの力を活用し、俊敏性の獲得、イノベーション、そして大規模な変革を推進します。そして、レジリエンス・インデックスの各ケイパビリティ領域を効果的に構築するためには、人間を中心に考えたアプローチを採ることが重要です。人材戦略と統合を図り、現在の課題に対処し、将来の機会をつかむために必要なスキルを持つ多様なチームを組成することが求められるのです。

短期的な利益と長期的な業績を考慮した資本配分を行い、強固な財務基盤を維持します。費用構造を管理し、金融リスクを最小限に抑え、過度に拡大することなく変革に投資するために、堅牢なチェックとバランスの体制を確立します。財務規律を持つ企業は、よりレジリエントであり、同業他社の中で長期的なリーダーシップを確立する可能性が高まります。

レジリエンスを高める主要なケイパビリティに同時に投資することで、強力なデジタルコアと財務基盤の両方が持つ競争優位性を倍増させます。また、強力なESGアジェンダを推進し、優秀な人材を惹きつけ、消費者の認知度を高めます。顧客中心のビジネスを展開し、新規および既存顧客のロイヤルティを向上させ、顧客体験を改善します。さらに、現在および将来の困難やショックに対処するため、サプライチェーンと業務遂行能力を強化し続けます。

出典


[1] アクセンチュア, “トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)” 2023年1月16日

[2] アクセンチュア & 国連グローバル・コンパクト(UNGC), “2030年に向けたアジェンダの再考” 2023年2月1日

筆者

藤井 篤之

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター

Muqsit Ashraf

Lead – Strategy

Jack Azagury

Group Chief Executive – Strategy & Consulting

Arjun Bedi

Lead – Diamond Client Leadership Council

Michael Brueckner

Lead – Strategy, EMEA