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調査レポート

AIの民主化

所要時間:約10分

概略

  • ChatGPTを支える技術は、仕事を変革し、ビジネスを再創造するでしょう。
  • ChatGPTのようなアプリケーションを支えるテクノロジーである言語ベースのAIの進歩は、「トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)」という新時代の到来を告げています。
  • 科学からビジネス、そして社会そのものに至るまで、あらゆるものが変革されます。人間の創造性や生産性にも莫大な影響を与えるでしょう。
  • 企業は、仕事の進め方を根本的に見直す時期にきています。テクノロジーだけでなく、オペレーションの進化と人材育成にも焦点を当てる必要があるのです。
  • 企業が責任あるAIの価値を享受するためには、強力なデジタルコアと人への投資が必要です。

 

AIの新たなターニングポイント

ChatGPTの爆発的な世界的人気は、AIが一般に普及する上で最初のターニングポイントをもたらしたと言えるでしょう。ついに、世界中の誰もが、この創造的で破壊力のあるテクノロジーの可能性を、自分の目で確かめることができるようになったのです。

ジェネレーティブAIの進化を支える大規模言語モデル(LLM)と基盤モデルは、重要なターニングポイントです。LLMは言語の複雑さを解明し、マシンが文脈を学び、意図を推測し、独自の創造性を発揮できるようにしただけでなく、さまざまなタスクに対して素早くファインチューニングすることができるようになりました。

このテクノロジーは、例えば科学、ビジネス、ヘルスケア、そして社会そのものに至るまであらゆるものを根本的に変革し、人間の創造性や生産性にも莫大でポジティブな影響を与えるでしょう。

企業はこれらのモデルを用いて、仕事の進め方を再創造する必要があります。人間がAIのピアワーカー(同僚)と共に働くことが当たり前になり、人が達成できることが劇的に増幅されるため、あらゆる企業のあらゆる役割が再創造される可能性を秘めています。ジェネレーティブAIが影響を与えるのは、職業ではなく、タスクです。あるものは自動化され、あるものはAIの支援によって変容し、またあるものは影響を受けません。

さらに、ジェネレーティブAIの正確で責任ある使用を保証するなど、人が行うべき新しいタスクが多数発生することも予想されます。だからこそ、ジェネレーティブAIと共に働く人材の育成に投資する企業は、大きな競争優位を得ることができるのです。

ChatGPTは、ジェネレーティブAIの変革の可能性に世界を目覚めさせ、注目を集め、創造性への情熱を高めました。

ジェネレーティブAIの民主化

あなたの会社の社員全員が、自社事業の歴史、背景、ビジネスの意図、運営方法などすべてを"知っている"アシスタントを持ち、その情報を数秒のうちに処理、分析、利用することができると想像してみてください。

今、私たちはジェネレーティブAIの採用を検討する中で、ほとんどの組織が基盤モデルを "既製品 "として利用し、実験的に取り入れ始めている段階にあります。しかし、多くの企業にとって最大の価値が生まれるのは、自社企業が持つ独自データを使って基盤モデルをカスタマイズしたりファインチューニングしたりして、自社のニーズに対応できたときです。

活用を開始する

ジェネレーティブAIや大規模言語モデル(LLM)のアプリケーションは、すぐに契約でき、アクセスも簡単です。企業はAPIを通じてそれらを利用し、プロンプトチューニングやプレフィックス学習などのプロンプトエンジニアリング技術によって、自社のユースケースに合わせて多少なりとも調整することができます。

カスタマイズする

特定のビジネスユースケースにおけるジェネレーティブAIや基盤モデルの価値を高めるため、企業は独自データを使ってファインチューニングすることでモデルをカスタマイズし、新たな領域でパフォーマンスを発揮しています。

98%

グローバル企業経営者98%が、今後3年から5年の間にAI基盤モデルは組織戦略において重要な役割を果たすと考えています。

40%

全労働時間の40%が、GPT-4のような大規模言語モデル(LLM)の影響を受けると言われています。

テクノロジー、規制、ビジネスの急速な進化を先取りする

今後数年間は、ジェネレーティブAI、大規模言語モデル(LLM)、基盤モデルへの投資が大幅に増えるでしょう。この進化の特徴は、テクノロジー、規制、ビジネスへの導入のすべてが同時に指数関数的に加速していることです。

技術スタック

ジェネレーティブAIの基盤を成す複雑なテクノロジーは、各レイヤーで急速に変化すると予想されるため、ビジネスにも大きな影響が生じます。多くの報告によれば、AIモデルを学習させるために必要な計算量が急増しており、今や指数関数的に増加していることが分かっています。このため、エネルギー集約型のジェネレーティブAIを導入するにあたっては、コストとCO2排出量が中心的な懸案事項と言えるでしょう。

リスクおよび規制環境

ChatGPTは、AIの責任ある使用に関する重要な問題を提起しています。テクノロジーの進化と導入の速度から、企業は法的、倫理的、そして評判上のリスクに細心の注意を払わなければなりません。知的財産権、データプライバシーとセキュリティ、差別問題、製品責任、信頼性とアイデンティティに関する主要な課題に対処する必要があるのです。

ビジネスでの導入規模

企業は、ジェネレーティブAIの価値を最大限享受するため、業務を再編する必要があります。また、企業経営者は変革をリードし、職務やタスクの再設計および人材の再教育に今すぐ着手しなければなりません。最終的には、現在の仕事が自動化またはジェネレーティブAIがアシスト可能なタスクに分類され、人間+マシンによる仕事の新しい進め方が再構築され、企業内のあらゆる役割に再編の可能性が生じます。

63%

大規模言語モデル(LLM)はあらゆる業務に影響を与え、影響が低いところでは1日の業務の9%、高いところでは63%にも及びます。

一歩進んだAIケイパビリティの活かし方

企業は、ジェネレーティブAIと基礎モデルを適用して効率を最大化することで、競争優位性を高める方法を何千通りも持つことができます。しかし、このテクノロジーからビジネス価値を見出すために、働き方を再創造する必要があるでしょう。企業経営者は、仕事の再設計、タスクの再設計、人材の再教育において、今すぐ変革をリードしなければなりません。

ジェネレーティブAI時代への対応:導入時における6つの基本原則

ビジネス主導のマインドセットで取り組む

組織は2つの実験アプローチを並行して実施する必要があります。1つは、既成モデルとアプリケーションを用いて迅速なリターンを実現する、比較的容易なものです。もう1つは、組織のデータに応じてカスタマイズされたモデルを用いてビジネスを再編するものです。ビジネスケースを定義し成功に導くためには、ビジネス主導のマインドセットが重要です。

人材ファーストのアプローチ

ジェネレーティブAIを用いて成功に導くには、テクノロジーと同様、人材の再教育にも焦点を当てる必要があります。このため企業は、人材への投資を大幅に拡大し、AIの構築と使用という2つの異なる課題に対処しなければなりません。

専有データの準備

基盤モデルを学習させるためには、膨大なデータが必要です。そのため、データの課題を解決することは、すべての企業にとって緊急の優先事項となっています。企業は、データを取得、拡大、改良、保護、展開するうえで、戦略的かつ統制の取れたアプローチが必要です。信頼性の高い再利用可能なデータ製品を備えた、最新の企業データプラットフォームをクラウド上に構築することが求められます。

持続可能な技術基盤への投資

企業は、ジェネレーティブAIと基盤モデルを活用するために、インフラストラクチャ、アーキテクチャ、運用モデル、ガバナンス構造の要件を検討し、コストと持続可能なエネルギー消費に細心の注意を払わなければなりません。

エコシステム変革の促進

パートナー企業は長年にわたって培ったベストプラクティスを有しており、特定のユースケースで効率的かつ効果的に基盤モデルを使用する有効なインサイトを提供できます。テクノロジー企業、専門サービス企業、学術機関など、適切なパートナーネットワークを持つことが、急速な変化に対応するカギとなるでしょう。

責任あるAIの向上

ジェネレーティブAIの急速な導入を受けて、企業は責任あるAIの強固なコンプライアンス制度を整備することが急務となっています。これには設計段階からジェネレーティブAIのユースケースで想定されるリスクを評価して管理し、責任あるAIアプローチを全社に浸透させることが含まれます。

62%

全労働時間の51%が、言語を使うタスクに費やされています。

42%

42% の企業が、2023年にChatGPTに大規模な投資を行いたいと考えています。

加速化するAIの未来

このような瞬間に立ち会えるチャンスは、そうそう訪れるものではありません。私たちは今、情報へのアクセス、コンテンツ作成、顧客ニーズへの対応、ビジネス運用などの方法を根底から変える、極めて刺激的な時代の幕開けを迎えています。

企業のデジタルコアに組み込まれたジェネレーティブAI、大規模言語モデル(LLM)、基盤モデルは、業務を最適化し、人間の能力を拡張するとともに、成長に向けた新たな道筋を切り拓くでしょう。その過程で、これらのテクノロジーは「トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)」に向けた全く新しい言語を生み出していくことになるのです。

一方で、組織の働き方を再構築し、テクノロジーによる変化に対応できる人材へと再教育することが、これらのテクノロジーの可能性を最大限に引き出すためには不可欠です。

企業はテクノロジーへの投資と同様に、発展途上の業務と人材の再教育にも投資することが必要です。

企業はまさに、AIの飛躍的な進歩を通じて新たな領域でパフォーマンスを発揮するため、自社のみならず業界全体の再編を図る時期にあるのです。

全社的なTQ(テクノロジー指数)の構築

TQ(Technology Quotient)とは、変革的なテクノロジーへの理解を深め、テクノロジーと人間の創意工夫がもたらす成果をどのように実現するかを示すものです。企業経営者から現場に立つ社員に至るまで、全社員が改革を成功に導くためにTQを開発する必要があります。

アクセンチュアでは、全社的に継続的なトレーニングに投資しており、社員一人ひとりに個別のTQスコアが付与されます。アクセンチュアのTQラーニングシリーズは、すべてのチームメンバーがテクノロジーについて、適用方法、なぜ重要なのか、他のテクノロジーとの連携について学ぶためのシンプルで効果的な方法です。

 

筆者

Paul Daugherty

Group Chief Executive – Technology & Chief Technology Officer

Bhaskar Ghosh

Chief Strategy Officer

Karthik Narain

Group Chief Executive – Technology

Lan Guan

Chief AI Officer

Jim Wilson

Global Managing Director – Thought Leadership & Technology Research