Skip to main content Skip to footer

ブログ

JVモデルでのシェアードサービスセンターの共同運営

所要時間:約3分

2023/04/25

シェアードサービスセンター内の効率化の難しさ

カンパニー制や事業部制を導入されているような大企業を中心に、社内またはグループ子会社にシェアードサービスセンター(以下SSC)の機能をお持ちの企業は多いと思います。

SSCを設立する手法は、主に組織のスリム化、効率化の手段として用いられるものですが、単に各部門・グループ会社から業務機能を切り出して集めるだけではその効果を最大限に享受することは難しいことは周知のとおりです。ところが、いざ集約した業務を効率化しようと試みても、当初想定したような効率化の効果が得られなかったり、場合によっては集約化自体が実現しない結果になってしまうことも。

私たちがお会いする企業の皆さまからも、

“SSCは作ってみたけれど、思うように効率化が進まない/コストが高止まりしている”

“標準化や自動化に取り組んでいるが範囲が限定的”

“抜本的に改革すればまだ余地はありそうだが、そこまで先行投資できる予算や改革に携われる人材も十分にない”

といった課題を抱えるお悩みの声をお聞きします。

それもそのはず。“効率化”と一口に言っても、その実現には長い道のりがあるのです。今回は、アクセンチュアがBPOとして業務を受託する中で行う効率化活動の進め方についてご説明したいと思います。

効率化の進め方

まず、効率化の活動自体を効率的に進められるよう、“手を打つべき場所”を明確にする必要があります。もうすでに磨かれている業務、もしくは性質的に手をかけることが必要な業務(例えば受付や守衛といった、常にそこにあることが目的の1つである業務など)については優先度を下げ、まだ余地が大きい業務から施策を考えるほうが費用対効果は高まります。では、ここでいう“余地が大きい”とはどういうことか。言い換えれば、“何か非効率な点がある”ということになりますので、例えば、多くの人員が携わる業務、何人もの人の手を経て完了になる業務、紙が多い業務(必ずしも紙が悪いわけではないですが)、繁閑差が大きい業務などが該当しそうですが、実際に非効率なのかどうかは、確かめてみないと分かりません。つまり、効率化を進めるためにはまず、業務の性質と現状のパフォーマンスを正確に把握することがスタート地点になります。

これを踏まえて効率化の手順を記すと、徹底的に業務とパフォーマンスを可視化し、そのデータと現場の定性的な状況から総合的に改善点を見出し、新しい業務を設計し、そのやり方を担当者にレクチャーし、安定して業務が出来るようにしていく、という一連の流れになります。この流れの中で最も重要なのは、最初のステップである「徹底的な可視化」です。

効率化の進め方
効率化の進め方

問題が正確に捉えられれば、正しい解決策を導き出すことはそれほど難しいことではありません。逆に誤った問いを設定すれば正解には辿り着けませんので、アクセンチュアでは、この可視化には十分なリソースを投入して常に可視化された状態を保つ仕組みを導入することが重要と考えています。

SSCでの業務運営の型づくりを支援するJVスキーム

アクセンチュアには、これまで多くのクライアントの皆さまにBPOサービスをご提供する中で培ってきた、前述のような“運営状況を可視化し、そのデータに基づいた対応策の検討・実施によって業務を効率化した上でリーンな状態を維持する”ためのノウハウが蓄積されています。この知見を活用して、BPOサービスとして業務を受託するところからさらに踏み込んで、クライアント様と共同出資でSSC子会社を設立(場合によっては既存センターに出資)して、共同運営する中でJV型SSC内にノウハウを蓄積していくスキームも増えてきております。

実は、SSCを活用した効率化の取り組みには、もう一つ大きなチャレンジがあります。それが組織を超えた業務効率化への取り組みのムーブメントを作ることです。

SSC化によって業務機能を集めたことで、各部門・グループ会社からするとこれまで“自分たちの業務”だったものが“SSCの業務”に変わることになります。業務を効率化していく際には、複雑な業務プロセスを簡素化するための業務ルールの変更や、イレギュラー処理を少なくして自動化するための割り切りといった、委託元部門にも影響のある業務判断が必要になることが多々あります。SSCにとってはコア業務での改革であり、自社の採算をとるため、または利益をグループ内に還元していくために優先度高く推進したいこれらの業務見直しですが、委託元部門からするとすでに他人の仕事になってしまい、いま自部門が抱える業務や課題に対応することに比べて優先度が下がってしまいがちで、十分な協力を得ることが難しいという構造上の問題があります。

ここにアクセンチュアが共同出資者として間に挟まることで、委託元部門に対して効率化の成功を前提とした業務コスト削減をコミットし、委託部門に対して効率化の協力依頼を取り付け、SSCとは共同運営者として効率化の実現に向けて協働する、という構図が作れ、改革が進みやすくなるというメリットもあります。アクセンチュアは、SSC運営を改革したいとご検討されている企業の皆さまにとって共に解決の道を考えるパートナーでありたいと思っておりますので、ご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。

筆者

草間 美香

オペレーションズ コンサルティング本部 マネジング・ディレクター