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調査レポート 5分(読了目安時間)

生成AI時代のIT運用モデル再考

2025/03/31

生成AIとエージェンティックアーキテクチャによってもたらされる変革の幅とスピードは、もはやIT領域だけにとどまりません。従来のIT運用モデルの更新だけでは、問題の解決には至らないのです。

テクノロジーとITの役割を見直す

テクノロジー戦略は、ITを超えてビジネス戦略の領域にまで影響をおよぼしています。つまり、企業はITの役割と責任を再考しているのです。テクノロジーのリーダーが引き続き経営陣に助言を行う一方で、一部のIT担当者は各組織に分散し、独立してテクノロジーを活用する事業部門に報告を行っています。

企業が従来型IT運用モデルからビジネステクノロジー運用モデルへ移行する方法は以下の通りです。

従来

大規模な独立したITチームが企業全体のテクノロジーニーズに対応し、CIOが監督する

今後

生成AIにより多くのルーティンワークを処理する

AIは業務に革新をもたらしています。反復作業を自動化し、ワークフローを最適化することで、データに基づいたより良い意思決定を可能にしています。

結果:ITチームが戦略的で価値の高い活動に専念し、テクノロジーイノベーション戦略を推進することが可能になります。

63%

のグローバルな経営幹部が、今後3年間でIT機能の再創造を予定しています

従来

CIOは、ITガバナンス、ソリューションの提供、アプリケーションのメンテナンス、インフラ管理を担当する

今後

CIOは、テクノロジーとインフラのガイド役となり、ガバナンスとサイバーセキュリティの標準を設定する

生成AIはテクノロジー戦略をIT部門の枠を超えて、ビジネス戦略の領域まで押し広げています。

生成AIの時代においてCIOは、テクノロジーのガイド役となり、標準とポリシーを定義する責任を負います。一方で、従来CIOが掌握していたITアクティビティを、企業全体で実行できるようになります。

75%

テクノロジーを重視する企業の75%には、テクノロジーに精通したCEOと経営幹部が揃っています

従来

IT担当者は、ソフトウェア開発、テクニカルサポート、トレーニングなど、全社的な業務を担う

今後

IT担当者は、ビジネス上最重要なIT業務を担当し、AIエージェントのチームを監督する

生成AIは、企業運営やITの役割に対して根本的な見直しを促しています。その結果生まれるビジネステクノロジー運用モデルでは、IT担当者がデータ管理やクラウドアーキテクチャの管理など、ビジネス上最重要なIT業務を担当します。さらに、AIエージェントのチームを管理し、責任あるAIの使用に関する教育も行います。

従来、IT部門の一員だったIT担当者の一部は、今後は各事業部門に組み込まれることになります。

従来

CIOは、エンタープライズテクノロジーとIT従事者への支出を管理する

今後

CIOは、企業全体としてのIT投資を促進し、ビジネス部門が自律的に行動できるようにする

ビジネステクノロジー運用モデルでは、全社的なIT投資に関する支出は引き続きCIOによって評価され、ガイドされます。一方で、一部のビジネステクノロジー投資は事業部門によって管理・投資されます。企業の各機能部門—人事、財務、マーケティング、サプライチェーン、法務、オペレーションが、生成AIを主眼としたテクノロジー活用を主導するようになります。

従来

IT予算は収益に対する割合として割り当てられ、「従来型業務」が優先される

今後

テクノロジー予算は各投資の創出価値により評価される

テクノロジー予算は、AIエージェントの導入やコグニティブコンピューティングの活用といった、人と機械の相互作用を改善する革新的なテクノロジーやプロセスを優先します。投資ガバナンスと資金調達の決定は、CIOのサポートを受けて、企業レベルで行われます。

4.7倍

2020年以降、最もパフォーマンスの高いAI導入企業の成長率

35%

アクセンチュアのセールスチームが生成AIを使用して向上させた生産性

ITを再定義する上で着目すべき4つの視点

コアITによるビジネス価値の再創造に向けて、4つの視点からなる評価フレームワークを開発しました。

人と機械の能力を統合することで、企業は大幅な効率向上を実現し、大きな変革を起こすことができます。

考慮すべき主なポイント:

  • 人間+機械の知能を飛躍させるには、ビジネスリーダーがテクノロジーの理解力と洞察力を持つ必要があります

  • AIエージェントとコグニティブコンピューティングにより、ITチームがテクノロジー武装を進め、新時代への躍進を促します

  • 新たなビジネス価値を創造するには、新しいテクノロジーへの信頼が不可欠であり、責任あるAIをスケールさせる必要があります

ITの潜在力を最大限に引き出すためには、新しいツールやサービス提供モデル、役割を企業全体で継続的に学び、スキルを向上させていく必要があります。

考慮すべき主なポイント:

  • AIを梃子にしてワークフローを強化することで、ITチームは効率化と成長の加速に専念できるようになります

  • AIに対応したパートナーによるマネージドサービスを利用することで、ITチームは主要なワークロードの自動化、サービスの迅速な提供、従業員の退職や再配置に伴う知識のギャップの解消を実現できます

  • CEOとテクノロジーリーダーの関係は、テクノロジー戦略とビジネスアジェンダが融合するにつれて進化していきます

データとテクノロジーの民主化が進むにつれ、サイロ化されていた部門がより緊密に協力してビジネスを推進していきます。

考慮すべき主なポイント:

  • 生成AIツールを広く利用できるようにすることで、ビジネスチームとITチームの境界が曖昧になり、ビジネステクノロジーとして統合されます

  • 経営層と役員は、成長を実現するためのテクノロジーに精通していきます

  • データ基盤の近代化は、新しいテクノロジーで成果を達成する鍵となります

加速度的に進むAIのワークフロー活用により、テクノロジーに関する提供価値や組織の役割分担に対する期待は大きく変わります。

考慮すべき主なポイント:

  • インセンティブを設けて信頼を築くことで、AIを当たり前のものとし、適用を促進することができます

  • 従業員の意識改革が、AIの適用と信頼醸成に必要です

  • デリバリーサイクル圧縮のために、アジャイルな働き方と要員配置モデルが求められます

そこで、問いたいのは…

新しいビジネステクノロジー運用モデルでビジネスを再創造しますか?

レポートを読んで、すぐに実行できるアクションを確認してください。

筆者

Muqsit Ashraf

Group Chief Executive – Strategy

Frédéric Brunier

Lead – Technology Strategy & Advisory, EMEA, and Global Lead – Technology Strategy

Jenica McHugh

Managing Director – Technology Strategy, Global

村上 隆文

ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリー プラクティス日本統括 マネジング・ディレクター