課題―求める変化

「富裕層のお客さまが求めているソリューションは、実はお客さまご自身にとっても明確ではない将来イメージの中に隠れています。MUFGではグループ全体で業務の効率化とサービスの高度化を追求しつつ、お客さまを深く理解した上で、MUFGグループが一体となった顧客視点の価値提供を実現しなければならないと考えていました」

中村 和人 氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 部長)

日本は世界有数の富裕層大国で、ウェルスマネジメントは今後も成長が期待されているビジネス領域です。MUFGにおいても、お客さまの財産を「まもり・つなぎ・ふやす」ことに存在意義を見出し、様々なサービスを展開していますが、個別の商品提案に留まり、顧客目線での包括的なサービス提供にまで至らないケースがありました。同社では、顧客の過去・現在・未来を理解し、顧客の人生観や将来像に寄り添う「顧客視点のビジネスモデルへの転換」を課題として認識されていたのです。

また、MUFGは日本屈指の金融グループとして銀行、信託、証券を中心とした多数の企業で構成されていますが、システムやデータ基盤は各社で異なっています。MUFG横断で包括的なサービス提供を実現するためには、グループ各社がデータを共有し、グループ各社の経験豊富な人材が一体となって価値を提供することが求められていました。

こうした課題に対する取り組みとして、三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部FG戦略グループ 次長 三藤 維之 氏は「グループ各社が持つデータやノウハウの有機的な連携による、顧客視点でのサービスの最適化を目指しています。重要な外部環境の変化として日本社会の高齢化が進む今、MUFGウェルスマネジメントでは資産承継などのお客さまの課題にアプローチしたいと考え、お客さまの『ゴール』をキーワードに位置付けて、プロジェクトを進めてきました」と話します。

MUFGのアドバイザーが顧客と対話を重ねることで、顧客の想いや顧客自身も気づいていなかった潜在ニーズ、実現したい未来といった「人生のゴール」を描き、徹底した顧客視点で取るべきアクションを導き出す「ゴールベースアプローチ」への転換がMUFGウェルスマネジメントのテーマです。

中村 和人 氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 部長)

岩崎 真之 氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 FG戦略グループ 調査役)

三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 FG戦略グループ 調査役 岩崎 真之 氏は次のように説明します。「グループ各社が連携して新たな価値をお届けするには、エンド・ツー・エンドでサービスをご提供する体制に加えて、MUFGグループ横断のデジタルプラットフォームが必要という結論に至りました。最新のテクノロジーとMUFGが蓄積してきた顧客基盤や知見を掛け合わせることで、これまでにないウェルスマネジメントサービスを再創造することを目指して、MUFG独自のデジタルプラットフォームの開発に着手しました」。

取り組み―技術と人間の創意工夫

本プロジェクトでは、約1万人におよぶ顧客アンケートやインタビュー調査を実施し、従来の金融機関のウェルスマネジメントサービスがどのように評価されているかの実像を炙り出しました。大きな期待を寄せる意見がある一方で現状に対する厳しい意見もありましたが、MUFGは真摯に耳を傾け、今まで以上に顧客に寄り添う新しいウェルスマネジメントのあるべき姿を模索しました。

また、グループ横断のサービス提供を高度化するためには、データ連携が不可欠です。しかし、グループ各社が有しているデータ基盤やデータ定義が異なるため、単純な統合や連携はできません。加えて、データ利用に関する情報共有同意の取扱いといった問題もあります。個人情報保護やファイアウォール規制などをクリアする形で、アドバイザーやお客さまにとって価値のあるデータ連携の姿を実現することは一筋縄ではいかない問題でしたが、MUFGでは業界の先陣を切って挑戦しました。

この取り組みはMUFGにとって前例のないプロジェクトであるといえます。第1に、銀行、信託、証券のグループを横断したビジネスモデル変革を伴うプロジェクトで、グループ各社のマネジメントから現場メンバーまでが一体となって創り上げる取組みが求められたことです。第2に、MUFGにとって初となる本格的なアジャイル開発の採用です。ビジネス・システムのメンバーの距離感を近くして、機動的な検討を進めました。

三藤 維之 氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ ウェルスマネジメント戦略部 FG戦略グループ 次長)

「グループ各社の枠組みを超えて全体最適なアドバイス提供を実現するためには、新たなアドバイスモデルに基づく業務設計が必要となりました。グループ各社と一体となって新たな業務フローを検討し、並行して、業務・システムの両面で必要となる仕組みを洗い出していきました」と三藤氏はプロジェクト初期を振り返ります。中村氏も「これはビジネスモデル変革のプロジェクトであると社内で繰り返し発信しました。グループ各社が一体となって価値提供する体制の実現こそが目指す姿であるからです。グループ各社や多岐に亘る関係部門・部署とのボタンの掛け違いのような認識のズレを丁寧に解消していくことを心掛けました」と強調します。

デジタルプラットフォーム「MUFG Wealth Management Digital Platform」の開発は、アドバイザーや顧客の視点を重視し、段階的な機能リリースと試行運用を繰り返すために、アジャイル開発を採用しました。MUFGグループ各社のビジネス部門とシステム部門、さらにはアクセンチュアが小規模なチームを複数組成して、近い距離感と透明性の高いコミュニケーションを通じた機動力の高いプロジェクト推進を行いました。

「プロジェクトメンバーには『システム部門への丸投げは絶対に認めない』『言いっぱなしで終わってはいけない』と言い続け、マインドチェンジを促しました。部門を越えて一体のチームとして推進することで、課題を早期に発見して解決に動く俊敏性や軌道修正する柔軟性を向上できたと思います」(中村氏)

成果―創出された価値

ゴールベースアプローチを体現するために、お客さまの過去・現在・未来を踏まえてニーズを深く理解し、グループ横断で適時適切なサービスを提供することを目指しました。それを支える仕組みとして、「MUFG Wealth Management Digital Platform」は大きく3つの機能で構成されています。

1つ目は「統合View」で、銀行・信託・証券で散在していたお客さまの情報を一元的に表示できる画面です。

2つ目は「ゴールプランニングシステム」で、お客さまの人生のゴール、ライフイベントに応じたキャッシュフローや総資産に対する課題・ニーズを見える化した上で、アドバイザーがポートフォリオ運用や、資産承継、事業承継の対策案をお客さまにお示しすることを支援します。ここでは、バランスシートアプローチを採用しており、金融資産だけでなく不動産や自社株式なども含まれるため、今までは見えにくかった将来に向けての資産の全体像を明らかにすることを可能としています。海外のシステムソリューションを採用しつつも、日本に合わせたカスタマイズを行ったことも特徴です。

3つ目は「ネクストベストアクション」で、アナリティクスモデルを活用することで、アドバイザーに対してお客さまの状況に合わせた適時適切なアクションをレコメンドします。

MUFGウェルスマネジメントのDXは、これから具体的な成果を創出する段階ですが、すでにお客さまから新たなニーズに関する相談を受ける機会や成約に至る事例が出ています。

「ご自身の資産やキャッシュフローの将来像をイメージしやすくなった、とお客さまからは好評です。『子どもに資産を残してあげたい』という希望をお持ちのお客さまにシミュレーション結果をご説明することで、『20年後の目標を叶えるためには、今すぐ手を打つ必要があると分かった』などのご理解をお手伝いできています。運用などの商品が登場するのは最後です。ゴールベースアプローチは営業手法における順序を逆転させた、新しい営業スタイルの確立でもあります」(中村氏)

「お客さまからは『心の動く話が聞けた』『感動を生む提案だった』という嬉しいお声をいただけています。これはウェルスマネジメントのビジネスモデルの再創造です。営業担当者はお客さまの声に真摯に耳を傾け、自信を持ったご提案ができています。現場のアドバイザーからは『新たな気づきや潜在ニーズの掘り起こしに活用できている』との声も届いています。今後MUFGはワンチームとなって、お客さまに最適なウェルスマネジメントサービスをご提案できると確信しています」(中村氏)

前列右から、中村氏、三藤氏、 後列右から、石田、岩崎氏、直井
※新型コロナウイルスの感染予防のため、インタビューはマスク着用およびソーシャルディスタンスを確保して安全に行いました。マスクの取り外しは写真撮影時に限った一時的なものであり、飛沫等に配慮して撮影しております。

3 to 1

銀行、信託、証券をグループ横断で融合したビジネスモデル変革

100兆円

MUFGの顧客基盤が有する個人プロファイリング資産に対して総資産ベースのコンサルティング提供

0 to 1

ゴールベースアプローチやバランスシートアプローチといった新たな取組みを推進し、日本市場にとって最適なウェルスマネジメントサービスを再創造

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