災害用Heart Stock 九州へサービス拡大
November 11, 2022
November 11, 2022
インダストリーX本部所属の川越です。ソフト・ハードの両面からクライアントを支援できるフルスタックエンジニア集団Forgeのメンバーとして、主にPoC(概念実証)フェーズでの新規サービス開発に携わっています。また、アクセンチュアの社会貢献活動であるコーポレート・シチズンシップ(以下CC)のプロジェクトの一つ、災害時支援物資マッチングプラットフォームHeart Stockプロジェクトに参画し、日本最大級の国際医療NGOである特定非営利活動法人ジャパンハート(以下、ジャパンハート)の支援をさせていただいています。
アクセンチュアのCCは、経済的な合理性のみでは解決できない社会問題に対し、アクセンチュア社員の専門的な知識やスキルを無償提供するプロボノ・プロジェクトを通じて課題解決に取り組む活動です。
CCのさまざまな活動の中でも私が参画している医療福祉機関向け物資支援プロジェクトは、元々はコロナによる混乱で物資不足に悩む医療機関を支援したいという有志の社員が、3Dプリンターでフェイスシールドを作成して寄付し始めたことがきっかけでした。この活動により寄付したフェイスシールドは約1,600個もの数になりましたが、一方で支援を必要とする医療従事者とのマッチングの過程には課題も多く、効率化の必要性が浮き彫りになりました。この課題に対応すべく、ジャパンハートとアクセンチュアが協働し、物資支援を必要とする医療従事者×寄付を希望する企業のマッチングプラットフォームとして開発したのが、Heart Stockです。Heart Stockを通じてこれまで17,000個以上の物資が医療機関に寄付され、現在も、現場で奮闘される医療従事者の方々を支え続けています。
さらに、今年の8月にはHeart Stockの仕組みを災害時の物資支援に応用し、被災した高齢者や乳幼児などに向けて備蓄物資を迅速にお届けする仕組みである、災害用Heart Stockの拠点を富山に立ち上げました。その1か月には、台風8号による被害を受けた静岡の高齢者福祉施設に物資をお届けするなど、早くもその効果を上げています。
<<< Start >>>
<<< End >>>
<<< Start >>>
<<< End >>>
私は、この災害用Heart Stockのプロジェクトでプロジェクト管理、業務設計、そしてアプリケーション開発を担当しています。災害時という特殊な環境の元でもしっかり被災者に物資をお届けするにはどうしたらよいか。このプラットフォームの主な運営者であるジャパンハートと密にコミュニケーションを取りながら日々取り組んでいます。
今年8月の富山拠点立上げ、そして災害を想定した訓練が無事に終わったことで、災害用Heart Stockの仕組みは確立できました。さらに11月、富山に続いて佐賀に新たな拠点が立ち上がり、高齢者向けと乳幼児向けの物資が追加で300人日分備蓄され、九州地域の災害に備えています。富山と佐賀の2拠点体制になったことで、支援できる地域は大幅に広がりましたが、佐賀拠点立上げは単純にカバーエリアが増えただけではありません。これは、災害用Heart Stockが拡大するための重要なターニングポイントであると考えています。
災害大国の日本では、いつどこで災害が起こるかわかりません。災害発生後の混乱したさなか、迅速に物資を届けるためには国内に複数の拠点が不可欠です。しかし、複数の拠点を運営するには、単拠点であったこれまでにはないハードルがいくつもあります。そこで、私たちは複数拠点を運営できる仕組みの確立を次のテーマに掲げ活動を続けました。その実証第一弾となるのが、佐賀拠点なのです。
複数拠点を運営する上で大きな課題となるのが、十分な物資の確保です。災害用Heart Stockの物資の多くは企業からの寄付によるものです。拠点を1か所増やすだけでも大量の物資が必要となるため、寄付の拡大が不可欠でした。そこで寄付企業と強いつながりのあるジャパンハートによる呼びかけと、活動の意義を地道に社内外にPRすることで寄付の拡大に取り組んできました。
次に挙げられる課題は、複数拠点運営による作業負荷の増大です。拠点立上げでは、保管倉庫を提供する現地の協力者との調整、ボランティアの募集、物資のパッキングなど乗り越えるべきハードルが多くあります。さらに拠点を立ち上げた後も、物資の経年劣化に応じてメンテナンスが必須になります。拠点が増えるほど業務負荷も大きくなる一方、運営主体であるジャパンハートの担当者を大幅に増やせるわけではありません。そこでメンテナンスの手間を可能な限り減らした支援パックへの改善、ITツールの導入による業務効率化、そして富山拠点のノウハウをフィードバックした業務改善を図っています。
<<< Start >>>
<<< End >>>
複数拠点を運営する際の課題が克服されているか、そして他に課題がないか。それを検証することも佐賀拠点立上げの大きな意義です。そしてそれらのハードルを乗り越えた先にある災害用Heart Stockのさらなる発展と、“いつでも・どこでも必要とする人へ届ける仕組み”の実現があると考えています。これが佐賀拠点立上げを災害用Heart Stockの重要なターニングポイントと捉えている理由です。
<<< Start >>>
私は米国の大学院で公衆衛生を学びました。人類の歴史の中には幾度となく感染症との戦いがあり、それゆえ公衆衛生を支える大きな柱の一つに、感染症、パンデミックがあります。COVID-19パンデミックは近年長きにわたってその出現が危惧されていたパンデミックが現実のものになったものでした。
COVIDが出現当初、得体の知れない未知の感染症であるフェーズから、徐々に地域に特化した問題が浮き彫りになるフェーズにかけて、まずは医療者の身を守るフェイスシールドから、地域のニーズを満たすマッチングプラットフォームへと、その姿を変えて対応していく様は、まさに医療・災害の現場に知見を持つジャパンハート、多くのご協力者・寄付者の方々、そしてアクセンチュアの多彩なメンバーという三者によって織りなされるアジャイルな成果の現れと感じます。この活動が、一人でも多くの支援を必要とする人に対し、迅速に手が差し伸べられる助けになることを願っています。
小川 貴久
ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジャー / 医師
長野県で総合診療を経験した後、整形外科専門医として日本各地で多数の手術を経験。ハーバード公衆衛生大学院を卒業後、リアルワールドデータベースを用いた研究に従事、高齢者やリハビリを中心とした臨床研究を行う。現在は、公共サービス・医療健康を担当
<<< End >>>
<<< Start >>>
プラットフォームはつくるだけでなく、プラットフォーム上で活動が行われ続け、そのカバーエリアが拡がることで価値を発揮します。
物資寄付企業様、災害時支援パックの準備・保管場所の提供者様、支援物資のパッキングや運搬を担う地域ボランティアの皆様、多くの方々がそれぞれの善意を自分らしく持ち寄ってプラットフォームに乗せ、個人や企業・行政機関というよりコミュニティとしての共通資本(高齢者・乳幼児向け災害時支援物資のストック及び支援物資をお届けする仕組み)が創出・維持されています。
そういった善意の輪が富山に続いて九州にも拡がり、より多くの方々の安心を支える一助となっていることに、発起人兼プロジェクトリーダーとして喜びを感じますと同時に、この場を借りて、ご協力いただいております皆様に深くお礼申し上げます。
藤田 絵理子
インダストリーX本部 シニア・マネジャー
デジタルトランスフォーメーション(DX)を専門としつつハイテク企業やインターネット企業の幅広い領域にわたるコンサルティング案件を手掛ける傍ら、同社の社会貢献活動(コーポレート・シチズンシップ)の一環として、医療・福祉機関支援プロジェクトの立ち上げから、その発展に携わる。
<<< End >>>
佐賀拠点が立ち上がり、災害用Heart Stockの役割がさらに充実することを、メンバーの一人としてとても嬉しく思っています。しかし、いつどのような形で襲ってくるかわからない災害への備えとしては、まだこれからが正念場と感じています。日々コロナのクラスター対策支援や災害支援で各地を奔走し、助けを求める人々のために力を尽くしているジャパンハートの皆様と接することで、自分も“どこかにいる誰か”のために何が出来るかを自問するようになりました。そして、今自分にできること、災害用Heart Stockが一人でも多くの被災者の助けとなる仕組みにしていくことに、今後もしっかりと取り組んでいきたいと思います。
フェイスシールド作成・提供から始まったアクセンチュアの取り組みについては、こちら。
アクセンチュアのコーポレート・シチズンシップについては、こちら。
コーポレート・シチズンシップのSkills to Succeedについては、こちら。