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調査レポート

責任あるメタバース - 今すぐ始めるには

所要時間:約5分

概略

  • 人々はメタバースに興味を持つ一方、メタバース空間上で良いユーザー体験をするためには、安全、セキュリティ、プライバシーの3要素が必須だと考えています。
  • メタバースに関連して様々な技術要素が融合し、いわば新たなテクノロジースタックが形成される中、従来になかった課題が生まれる可能性があります。よって企業はメタバースにおけるデータ、所有権、ガバナンスに関する新たな概念といったものに対して、過去の教訓を生かしながら柔軟に対応する必要があります。
  • メタバース上で信頼され、人間中心のエクスペリエンスを構築することは、大小、民間・公共を問わず、あらゆる企業にとって重要です。

信頼と人間中心主義で導く

責任あるメタバースの基盤

人類史上最も破壊的なイノベーションのひとつがインターネットの登場です。友人、家族、同僚、お客様、あらゆる人との関わり方が変わりました。また、コミュニケーション、買い物、仕事、そして旅行という体験さえも変革しうる、高度なバーチャル体験への扉も開かれました。一方で、19カ国17,500人を対象としたグローバル規模のメタバース関連調査から得られた重要かつ包括的な洞察は、人々は見たり、触れたり、体験するといったフロントエンドの体験以上のものを重視しているということです。これは、年齢層、性別、地域を問わず一貫しています。つまり、このインターネットの次なる進化の世界において、セキュリティやネットいじめ(SNSいじめ)、そしてその間にあるあらゆるものに関してこれまでの遅れを取り戻す余裕もない中、それ以上のものの実現が求められているのです。 

最も有意義な安全装備

18~40歳

  1. 誤った情報に対抗する仕組み 
  2. ユーザー自身が安全をコントロールできる機能 
  3. 信頼と安全に関する業界横断的な基準

40歳以上

  1. ユーザー自身が安全をコントロールできる機能
  2. 悪質な利用者に対してペナルティを与える仕組みが組み込まれていること
  3. 誤った情報に対抗する仕組み

大胆な一歩を踏み出す、責任を持って革新する

人々が参加し、また戻ってきたくなるようなメタバースの構築。そのためには2つの側面で責任を果たす必要があります。1つ目は信頼です。プライバシー、セキュリティ、レジリエンス(高精度、低遅延の体験を含む)、知的財産権における信頼が重要です。実際、技術や製品ポリシー、運用がいかに設計され、展開されるかを形作る際に重要です。2つ目は人間性の側面です。安全性、持続可能性、インクルージョン、多様性、アクセシビリティ、そしてウェルビーイングなどが含まれ、メタバースにおけるユーザー・エクスペリエンスの設計とメタバース構築の基礎となります。ユーザーは、信頼性の高いオンライン・プラットフォームとより積極的に関わることがわかっています。こうしたフレームワークをメタバースに適用することで、ユーザーを鼓舞し、広い普及につながります。イノベーションの勃興期においては、常に未知の部分が存在します。しかし、私たちは、リーダーが探求し、理解すべき分野を特定しました。

デザイン時にデフォルトでプライバシーを具備:デフォルトで直感的なプライバシ保護を組み込み、革新的で透明性なアプローチを採る企業は、メタバースにおいてユーザーを惹きつけ、維持する可能性が高いです。強力なデータ保護の実践は、斬新な種類のデータが収集・処理される際に信頼のベースラインとなります。企業はまた、設計プロセス全体にインクルーシブの考えを組み込むことで、デジタル上での自己表現の規範を積極的に形づくる必要があります。メタバース空間でアバターを構成するパーツを作成するチームは、さまざまな髪型や民族的特徴、体型、神経多様性の要件など、ユーザーのあらゆるニーズに対応するために、彼らの多様性を十分に理解する必要があります。 

トークン化と相互運用性:エンタープライズ級のプラットフォームやソリューションなど、あらゆるデジタル資産の選択肢を検討する必要があります。ターゲット層が真に重視するものを明確にし、プライバシー、セキュリティ、安全性の懸念に対処する信頼できるテクノロジー・ソリューションとサービス・プロバイダーを選択します。ID、お金、モノをトークン化し、あるデジタル世界から別のデジタル世界へ持ち出すことを可能にするユニバーサル・デジタル・ウォレット・インフラストラクチャのようなイノベーションは、相互運用性を高めることができます。一方で、このレベルの相互運用性を実現するには、膨大な時間、調整、財源が必要となります。 

デジタルの安全性と持続可能性:企業、政府、市民社会は、仮想環境がデジタル上の安全性を高めるためのパートナーシップを組み、ユーザーの満足度を担保する必要があります。パートナーシップ全体で、メタバース上の危害を特定して対処し、有害コンテンツに対応するツールを構築し、プラットフォームの整合性やコミュニティ管理者をサポートする能力をもつ人材に投資する必要があります。加えて、現実世界の状況にも注意が必要です。メタバースを利用することで、どのように持続可能性を高めることができるのでしょうか?企業がコントロールするサステナビリティ・レバーを特定し、進捗を測定する主要な指標を決め、企業全体でメタバースのサステナビリティに対する説明責任を推進しましょう。

70%

強固なプライバシー、安全、セキュリティの仕組みが、メタバース体験への参加意欲や再訪問意欲に影響を与えると回答したユーザーは70%

次に何が来るのか?

メタバースはすでに、消費者が服を買う前にバーチャルで試着したり、同僚とプロジェクトで協力したりする場となっています。そして、今後メタバースはそれ以上のものになり得ます。もちろん、責任あるメタバース・フレームワークがあったとしても、安全な空間を構築する作業は試行錯誤でアジャイルなプロセスとなり、幅広い声を拾うとともにある種の哲学を要します。しかし、人生を変え、豊かにしてくれる新しいテクノロジーは結局社会に求められる範囲で活用され、むしろその実現を手助けすべきものであることは、誰もが認めるところです。テクノロジーを使って企業運営を変革するにしても、新しい方法で消費者と関わるにしても、永続的な成功を実現するためには、以下に挙げたポイントを促進する戦略が必要です。

1. 焦点を絞ったリーダーシップ

企業が責任を持ってメタバースを設計・展開できるよう、リーダーを任命します。リーダーは、プライバシー、セキュリティ、安全性に加え、信頼を維持するためのインクルージョン、多様性、持続可能性、ウェルビーイングに重点を置きます。

2. 責任あるイノベーション

企業全体でメタバースを活用するためのルールとガイダンスを確立する。ここで述べる8つの信頼や人間性が等しく重要であることを念頭に、包括的なフレームワークを活用します。これらは相互に関連しており、ある要素が他を犠牲にしてまで優先されるべきではありません。

3. 信頼される意思決定

信頼と安全性、そしてコンテンツモデレーションやブランドセーフティに関連する問題は、メタバースにおいてさらに複雑化し、重要性も増すでしょう。テクノロジーが企業にもたらす課題を読み解き、意思決定のフレームワークを適用することで、責任を持って戦略的にメタバースをナビゲートすることができます。

正しく構築すれば、メタバースは人生から撤退するための手段ではなく、人生を豊かにする付加的なレイヤーとして捉えられるでしょう。

筆者

Paul Daugherty

Group Chief Executive – Technology & Chief Technology Officer

Denise Zheng

Managing Director – Metaverse Continuum Business Group & Global Lead for Responsible Metaverse