課題―求める変化

偽造医薬品が流通してしまうことは、患者にとっては大変な脅威となります。 万一、患者がそうとは知らずに偽造医薬品を使用すれば、命にもかかわる危険にさらされることになります。近年では各国の政府が製薬業界に対し、予防対策を強く求めるようになっており、ヨーロッパでは製薬会社は適正流通基準 (Good Distribution Practices, GDP)に従って、サプライチェーン全体で医薬品の品質を担保するように定められています。そして、日本でも2018年にGDPのガイドラインが設けられました。 

GDPは医薬品サプライチェーンの品質担保を目的としたガイドラインで、製薬会社や物流会社、医薬品卸はGDPに従い、温度管理など医薬品の品質維持のため、流通時の状態を監視するよう求めています。これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行する以前から重視されてきた基準ですが、製薬各社が世界中で新型コロナワクチンの供給を推し進めている現在、その重要性はかつてないほど高まっています。

とはいえ、製薬会社がGDPを導入する上では相当なコスト負担が発生します。特に日本では医薬品の価格制度の見直しが行われ、製薬各社が薬価引き下げの圧力に直面する最中でもあり、非常に難しいタイミングでGDPの導入が求められました。

取り組み―技術と人間の創意工夫

製薬業界をめぐるこの課題に対し、業界の枠組みを超えた取り組みが提供されました。世界49カ国にネットワークを展開し、7万3,000人の従業員を擁する1世界有数の総合物流企業2である日本通運が、その包括的なインフラストラクチャを基盤とした業界横断的な新ソリューションを製薬会社に提供することを決定したのです。具体的には、IoTとブロックチェーンという2つのテクノロジーを基盤とし、製薬業界に特化した物理的なロジスティクスネットワークを運用するソリューションです。

GDPの導入に必要な各種ツールとトレーサビリティを国内の製薬業界に提供すべく、日本通運はアクセンチュアを協働パートナーに選びました。アクセンチュアは、IoTおよびブロックチェーンの分野におけるリーダーとしての豊富な専門知識と技術を生かし、標準化されたカスタマーインターフェースと柔軟性に優れたアーキテクチャを特長とする、製薬会社に最適なプラットフォームの構築に乗り出しました。

1 NXグループ統合報告書2021

2 2 A&A’s Top 25 Global Freight Forwarders

49カ国

ネットワークを展開

73K

従業員数

100B

ロジスティクス部門への総投資額(8.9億ドル)

さらにチームは、クラウドベースのトラッキングシステムの構築に向けて、半導体最大手のインテルとも協働。アクセンチュアはインテルと共に、輸送中の医薬品にインテルの電子タグを添付するシステムを構築しました。これ は電子タグを用いてサプライチェーン全体で温度とロケーションの追跡・記録を行うシステムで、倉庫や空港といったゲートウェイを医薬品が通過すると電子タグリーダーの読み込んだ情報がクラウドにアップロードされ、アクセンチュアが構築したブロックチェーン(分散型台帳)に保存される仕組みです。このシステムを用いることで、日本通運とその顧客は荷物をリアルタイムに追跡し、問題発生時には迅速に対応することができます。

物理的なロジスティクスについては、チームは1,000億円(8.9億ドル)を投じて製薬業界専用の施設を新設し、専用トラックも導入。医薬品の品質確保を目的に、新施設とトラックには温度管理機能が備えられています。

成果―創出された価値

チームは包括的なテストを完了した後、日本通運の顧客に向けて新たな医薬品ロジスティクスソリューションを導入し、新型コロナワクチンの供給プロセスの支援を行っていく計画です。ブロックチェーンベースのシステムは新型コロナワクチンや他の医薬品の品質確保に役立つほか、事務手続きの手間も軽減することで、顧客側のコスト削減にもつながります。

さらに、日本通運もこの新たなシステムを活用することで、各種の物流データを収集/分析し、これまでにないアプローチで顧客のニーズに応えていけるようになります。まさに同社は、AIなどの最新テクノロジーを駆使したデータマイニング/分析によって、ビジネスのさらなる成長を目指す「プラットフォーマー」へと変革を遂げようとしています。

日本通運ではすでに、この新たなプラットフォームをヨーロッパやインド、北米の市場にも展開していく計画を進めています。これにより、医薬品の輸送事業における新たな信頼性と透明性のスタンダードを確立することで、製薬業界にとどまらず、他の業界にも同様の価値が提供されることが期待されています。輸送やロジスティクスはもちろんのこと、変革を通じてグローバルサプライチェーン全体に大きなインパクトをもたらし、あらゆる業界がインテリジェントかつ効率的・安全に製品を提供できるプラットフォームへと成長していくはずです。

「このように製薬業界に共通の輸送システムを提案することが、従来のビジネスモデルの変革や全く新しいビジネス領域の開拓、新たな顧客関係の構築につながると確信しています。」

— 石井孝明 氏, 日本通運株式会社 代表取締役副社長

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