課題

住宅ローンビジネスの構造改革

以前より住宅ローンビジネスの構造改革に取り組んできた三菱UFJ銀行では、その取り組みの一環として「業務の自動化」を推進中です。その背景には住宅ローンビジネスにおける、収益性向上とお客さまの利便性向上の課題がありました。三菱UFJ銀行にとって住宅ローンは主要な収益基盤の1つであることから、2018年よりテクノロジーの活用による住宅ローンビジネスの構造改革に着手し、現在に至ります。

「人生最大の買い物である住宅購入を金融面でお手伝いすることは、お客さまにとっての重要性のみならず、大きな社会的意義を持っています。住宅ローンビジネスは、これからも個人向け取引の中核商品であり続けると考えています」。三菱UFJ銀行の住宅ローンビジネスをITシステム面でサポートしている三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社(以下、MUIT) 融資部 シニアマネージャー(上席調査役)坪井 智氏はプロジェクトの背景をこのように説明しました。

プロジェクトの目的は、あくまで「収益性向上」と「お客さまの利便性向上」です。「このプロジェクトは既存システムの単なるリプレースではありません。『人と紙』を前提とする非効率な業務プロセスを改革し、成果に直結させることを関係者間の共通認識としていました」と、MUIT 融資部 武田啓志氏は振り返ります。

「住宅ローン業務」の自動化をチャネルごとに実施

三菱UFJ銀行の住宅ローン新規受付には、「銀行の店頭」「各地域のローン拠点(不動産会社の仲介)」「Web」の3つのチャネル(ルート)があり、契約のプロセスにおいては「事前審査」「正式審査」「契約・実行」の3つのフェーズがあります。今回の「自動化1.1」プロジェクトでは、自動化の対象として「Webルートの事前審査」からスタートし、その後フェーズを重ねながら自動化する領域を段階的に拡大しています。

「事前審査の自動化は2018年9月にプロジェクトが発足し、2020年4月にリリースしました。現在はWebルートにおける『正式審査』の自動化を引き続きアクセンチュアが進めているほか、並行して『契約・実行』の自動化をMUIT社内での内製化で開発しています。さらに来期はフェーズ2として、他チャネルも自動化する予定です」。MUIT 融資部マネージャー(調査役)小川 温氏はこのように、住宅ローン全体の自動化が体系的に整理されて進行していることを紹介しました。

「人と紙」を前提としていた業務プロセスを自動化で改善し、収益性とお客さまの利便性向上に貢献します。

右より:ペガジャパン株式会社 アカウント・エグゼクティブ 橋本伸作氏、三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 融資部 シニアマネージャー(上席調査役)坪井智氏、同 武田啓志氏、アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部 ITソリューション マネジング・ディレクター 野崎浩俊、アクセンチュア 金融サービスグループ マネジング・ディレクター工藤大助
※新型コロナウイルスの感染予防のため、インタビューはマスク着用およびソーシャルディスタンスを確保して安全に行いました。マスクの取り外しは写真撮影時に限った一時的なものであり、飛沫等に配慮して撮影しております。

アクセンチュアの取り組み

オフショア活用を含む、合計34部署の連携

アクセンチュアはこれまで、三菱UFJフィナンシャル・グループの経営課題の解決に向けて様々なテーマや領域でご支援に取り組んでまいりました。今回の住宅ローン業務の自動化プロジェクトにおいても、根本的な課題認識の共有に始まり、要件定義や基本設計といったフェーズを通じて「住宅ローン業務の仕組みの効率化」の推進で中心的な役割を果たしています。

プロジェクト全体ではユーザー部門が8部署、システム側は26部署と、ステークホルダーの非常に多い開発体制となりました。一般的にこうした大規模開発においては要件が膨らみがちな傾向にありますが、本プロジェクトでは的確なスコープのコントロールにより、効果的なプロジェクト運営が実現しました。MUIT融資部としては初となるオフショアとの連携も行うなど、アクセンチュアは総合力で本プロジェクトを伴走しています。

本プロジェクトのキーソリューションであるPegaについて、坪井氏は選定の経緯を次のように解説します。

「統一されたUIでワークフローを管理できるほか、作業の切り分けも容易な点でPegaは非常に優れたソリューションであると評価しました。実装面においてもスクラッチ開発より優位性が高く、住宅ローン業務のような長くて複雑な業務プロセスを統合的に管理できるソリューションとしては、事実上のPega一択でした」(坪井氏)

内製化のための「人材育成」も同時進行

また、開発チームを率いた武田氏は「Pegaは開発効率の良いLow-Codeのソリューションでもあるため、最終目標は内製化です。アクセンチュアは当社メンバーへのスキル移譲に協力的で、ペガジャパンもハンズオン研修を積極的に提供いただけました。『事前審査』のPega開発に参画した当社社員は、引き続き『契約・実行』の開発も手掛けています。メンテナンスだけでなく、開発内製化においてアクセンチュアには人材育成の面でも貢献いただいています」と補足します。

小川氏は「アクセンチュアが持つPega導入の実績や、認定資格保有者など人材の層の厚さ、両社のアライアンスの強固さなどを総合的に評価し、パートナーとして最適だと感じました。オフショア活用も初めての試みだったため、海外メンバーの協働がうまくいくのかと当初は懸念しましたが、プロジェクトが始まってみるとアクセンチュアのオフショアメンバーの生産性や品質の高さを実感し、デメリットはまったくありませんでした」と、コンペでアクセンチュアを選定した経緯を述べ、坪井氏も「アクセンチュアは信頼できるという実感が意思決定の背中を押しました」と振り返ります。

三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 融資部 シニアマネージャー(上席調査役)坪井 智氏

人とカルチャー

幅広いステークホルダーを統括してOne Team

このプロジェクトはステークホルダーが多岐にわたることから、MUIT融資部がプロジェクトを統括する主幹としてチームの全体から細部までを複眼的に管理したことが成功要因だといえます。

プロジェクト推進においても、業務部門とIT部門が綿密にディスカッションする体制を整えつつ、MUITでは関係各社をビジネスパートナーとして対等な関係となることを意識したチームづくりがなされました。これにより、関係者全体が「One Team」として機能するカルチャーが醸成されたと言えます。

たとえば、利益率向上の目標を達成するために必要な業務改善はどうあるべきか、プロセスをどのように変革することで目標達成が可能となるのかの議論において、業務とIT、そしてパートナーであるアクセンチュアやペガジャパンが組織の垣根を越えて意見を出し合う体制を実現しています。

「当社の開発メンバーがアクセンチュアチームに混ざって経験を積んだほか、隔週開催の責任者級会議でそれぞれの課題の吸い上げとフォローを実践しました。コンポーネントの連携も仕様や機能分担を相互に確認していたことがチームとしてうまく行った要因だと思います」(坪井氏)

「標準ライブラリの利用」で属人化を回避

同時に開発現場でも各チームリーダーのミーティングが週次や日次で行われ、「改善点の確認や予兆として上がってきた情報の受け止め、プロジェクトマネジメントのガイドラインに沿った進行を徹底しました」と小川氏は説明します。

「案件の進め方においても、Pegaの標準的なライブラリを利用するという方針を定めたことで属人化の回避とプロジェクトのスコープの仕切りが容易になりました。スクラッチ開発の『何でもできる自由度の高さ』は、要件が膨らんだり、後々の運用における足かせになったりしかねません。ユーザーと共に『Pegaの得意なこと』をきちんと見極めたことが成功要因でした」(小川氏)

三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 融資部 武田啓志氏

創出された価値

業務量75%削減、所要時間最短2時間へ短縮

本プロジェクトは、自動化を住宅ローンの3ルートすべてに適用すべく現在進行形ですが、リリース済みのWebルートでの申込みにおいては「業務量の75%削減」が実現できており、紙資料(印刷物)も月間20,000枚の削減という実績がすでに達成できています。

全チャネルの申込み対応が自動化することで、よりインパクトのある成果が成し遂げられるとプロジェクト関係者は高いモチベーションで取り組んでいます。

自動化は住宅ローンを利用する顧客にとっても、従来は1日以上を必要としていた事前審査が最短2時間で完了するなど、利便性向上に大きく貢献しています。「従来のフロントシステムでは、とてもそのような短時間で業務を完了できません。お客さまサービスの向上にも寄与しています」(坪井氏)

全行規模でPegaをプラットフォームとして採用

なお三菱UFJフィナンシャル・グループでは、ローンケースマネジメントやアンチマネーロンダリングシステムなど、他の領域でもPegaを採用するなど、Pegaを全行規模のプラットフォームとしています。本プロジェクトの検討段階では、既存のフロントシステムを改良する案や、自動化ツールを間に挟みつつ現行システムを継続利用する案、住宅ローン用パッケージを導入して自動化を構築する案などが比較検討されましたが、最終的にはPegaが採択されました。

「ペガジャパンからハンズオン研修を提供いただいてPegaに触れたことで、ソリューションとしての優位性や特徴を理解しながら検討できたことも効果的でした。 Pegaの生産性の高さを十分に発揮するため、MUIT社員のスキルアップではアクセンチュアに協力いただきながら段階的に内製化体制を構築しました。『契約・実行』の開発でアクセンチュアにはCOE( Center of Excellence )をお願いしており、MUITに不足していた設計や実装課題の解決に関する知見を提供いただいています。人材育成を含めて支援いただけたのがこのプロジェクトのポイントです」(坪井氏)

生産性1.5倍で後続フェーズが進行中

今回のプロジェクトでは利用するPegaの「部品の共通化」が行われたことで後続の開発が1.5倍の生産性で進んでいるほか、開発作業を段階的に内製へと移行すべく人材育成も並行して進行中です。最後にお三方に今後の展望を伺いました。

「アクセンチュアやペガジャパンとの日常的な協働を通じてPegaのスキルを習得した当社メンバーが次のプロジェクトではリーダーとして働くなど、体制強化も実現しています。最終的にMUITでの完結を目指しています」(武田氏)

「ウォーターフォール開発しか経験がなかった我々が、アクセンチュアとペガジャパンの協力によりアジャイル開発のノウハウを獲得できました。これからは蓄積したナレッジをさらに活用していく考えです」(小川氏)

「今後は海外拠点への展開も検討しているほか、様々な業務領域でPegaを中心とした自動化を推進していきます。住宅ローン構造改革はその先駆けと位置付けており、Pegaのさらなる活用を幅広い業務領域へ展開していく予定です」(坪井氏)

アクセンチュアとペガジャパンは、これからも三菱UFJフィナンシャル・グループ各社をエンド・ツー・エンドで力強くご支援してまいります。

リモートでご参加いただいた三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 融資部 小川 温氏

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