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ブログ

モダナイゼーションにおける海外拠点の活用

所要時間:約5分

2023/03/14

はじめに

テクノロジーコンサルティング本部 金融サービスグループ マネジャーの田中 宏樹です。 AMO/J2C Origination & Planning チームでは金融機関の基幹系システムを刷新(モダナイゼーション)する際に、海外拠点を活用しております。今回は海外拠点を活用したモダナイゼーションに関する取り組みをご紹介します。

海外拠点(オフショア)の活用に至った背景

ITによる技術革新・新たなサービスの創出といったニーズが依然として高まる中で、案件遂行のために海外拠点であるオフショアリソースの活用は必要な要素となっています。この先10年間で日本のIT人材の数はより深刻化することになり、日本市場のみではIT人材を賄いきれなくなってきているのが現状です。また、過去10年間でIT人材の給与水準は上昇傾向にあり、日本のIT人材だけではコストが大幅に増加することが想定されます。日本以外で高い技術力を持ったIT人材の確保やコスト最適化のためにオフショアリソースの活用も重要となります。

金融業界では複雑化、老朽化した基幹系システムと複数のサブシステムをモダナイゼーションする必要性が生じております。このような風潮の中で、基幹系システムを高品質、且つ、低コストで刷新する必要があります。そこでアクセンチュアはATCI(Advanced Technology Center India)、ATCP(Advanced Technology Center Philippines)、ATCC(Advanced Technology Center China)といったインド、フィリピン、中国の海外拠点を活用してアプリケーション再構築やクラウド移行を含めたモダナイゼーションを進めております。海外拠点を採用する際に、考慮すべきポイントはコスト削減とデリバリ品質維持の両立です。海外拠点の強みとしてはモダナイゼーションを専門とするチームがあり、コストと品質それぞれに強みを持っていることです。富士通ホストに多い、「日本語COBOL」のモダナイゼーションには日本語が得意なATCCやニアショアである日本メンバーが活躍できる領域であったりするため、海外拠点のメンバーと日本メンバーが適材適所にお互いが協力して最大限の効果を創出できることがアクセンチュアの強みです。

実際に、金融の基幹系システムを刷新するために、海外拠点のメンバーと協力してアプリケーション再構築やインフラ基盤構築を実施してきました。今回は、アプリケーション再構築を海外拠点メンバーとどのように推進してきたかご紹介したいと思います。

モダナイゼーション手法の1つであるリビルドとは

モダナイゼーションと言っても、複数の手法があります。プラットフォームをオープン化し、アプリケーションは現行維持とする「リホスト」、オープンアーキテクチャを採用し、アプリケーションはCOBOLからJavaのように言語変換する「リライト」、オープンアーキテクチャを採用し、アプリケーションを再構築する「リビルド」、業界標準のパッケージを採用する「パッケージ」などがあります。今回、お伝えしたいのは「リビルド」です。OS・MWがバージョンアップや変更したことによりアプリケーションの変更が余儀なくされるシステム起因の場合や、業務的に今後も機能追加・拡張が発生し、営業力強化等の目的にフロントデジタルと結合していくシステムである場合に「リビルド」といったアプリケーション再構築の手法が採用されます。

Utilization of overseas offices in modernization
Utilization of overseas offices in modernization

「リビルド」はレガシーリスク・保守困難を解消でき、競争力強化が図れる一方、アプリケーションを再構築するためコストと技術的な難易度が高くなる傾向にあります。実際に、私もCOBOLからJavaに言語変換した上でアプリケーションを再構築するプロジェクトに携わった経験がありますが、レガシー言語で作られた現行資源の解析や、言語変換した上で、新しい要件を取り込むのは至難の業です。そこで、日本のメンバーは現行資産の分析、要件をヒアリングして仕様を明確化し、低いコストで高い技術力を持った海外拠点のメンバーは仕様に沿って、スピーディーに開発を行える体制・環境作りが大事です。

海外拠点を活用した「リビルド」を推進する際の要点

基幹系システムのアプリケーション再構築(リビルド)を海外拠点と協力しながら推進する上で、重要なポイントが2つあります。それは現行踏襲する箇所と新規開発する箇所の整理を踏まえた品質維持と円滑なコミュニケーションです。海外拠点を活用する際、よく、海外拠点メンバーが作成したアウトプットが想定と異なっていたり、要件の認識相違や課題によるスケジュールの遅延が生じたりすると言われています。海外拠点を活用して「リビルド」を推進する場合、仕様は日本のメンバーで明確にし、詳細設計や開発は海外拠点メンバーで対応するなど、明確に役割分担を決め、適切な頻度でTouch Pointを設けることでお互いの認識相違を無くしていきます。また、図や文章を用いたアウトプットイメージを提供することで、作業の手戻りを防ぎ、仕様に沿った開発ができているか確認することで海外拠点メンバーの作業効率・品質向上に貢献します。

Utilization of overseas offices in modernization
Utilization of overseas offices in modernization

目指す姿

金融業界の基幹系システムのアプリケーションを刷新するために、海外拠点を含む技術者やコンサルタントの育成・拡大が着実に進んでいます。今後、アクセンチュアではオフショアメンバーの中で日本の品質基準を踏まえた上で高い技術力とコミュニケーション能力を持った人材は仕様検討にも一部入っていただくことで、さらなるビジネス価値を創出していきます。例えば、ATCIでは「The Japan Experience Center」といったATCIの深い業界専門知識、テクノロジー、クラウド、モダナイゼーションと最適化(AMO:Application Modernization & Optimization)の能力を活かして日本品質基準に焦点を当てたセンターが開設されました。このように今後も日本のメンバーとオフショアである海外拠点のメンバーと協力することでお客様の複雑かつ重大な課題に対応できるようご支援します。

筆者

田中 宏樹

テクノロジー コンサルティング本部 マネジャー