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調査レポート

責任あるAIで成功を掴む:「信頼」がAIの価値を解き放つ

Amazon Web Servicesとの共同調査

5分(読了目安時間)

2024/11/29

概略

  • 高い可能性を持つAIですが、その活用に対し、企業は慎重な姿勢を取っています。今回の調査では74%の企業が、「過去1年以内に、リスクが原因で一時中断しているAIプロジェクトがある」と回答しています。

  • 責任あるAIはリスクの軽減やコンプライアンスの維持に役立つことは知られていますが、今回の調査により、さまざまな方法で価値創造にも貢献していることが示されました。

  • AIの信頼を構築してその価値を解き放つために、企業は価値志向で市場を先導し、「責任ある設計」を実現するためのプラットフォームアプローチを採用する必要があります。

 

完全に成熟した責任あるAI能力の価値とは何か?

責任あるAIの最高責任者であるアルナブ・チャクラボルティ氏が、AWS re:Inventエグゼクティブサミットでのパネルディスカッションの後、受賞歴のあるジャーナリストのケイティ・クーリック氏と対談しました。彼らは、完全に成熟した責任あるAI能力の価値に関するアクセンチュアとAWSの研究から、いくつかの重要なポイントをまとめました。

どんなテクノロジーも、私たちが活用することをためらえば、何の価値も生み出しません。

責任あるAIがリスクの軽減やコンプライアンスの維持に役立つことは知られていますが、アクセンチュアとAmazon Web Services(AWS)の共同調査により、価値創造の領域におけるAI特有の役割についても明らかになりました。この調査は15カ国、21業界の1,000人以上の経営幹部を対象に実施されました。

調査結果によると、責任あるAIは、顧客満足度やロイヤリティの向上をはじめ、製品の品質、人材の獲得と維持に至るまで、さまざまな方法で価値創造に貢献しています。そしてその一方で、規制遵守とリスク軽減も実現しているのです。

AIを上手に活用できる企業は、無限の可能性を手にしています。

AI活用に対し、企業は慎重姿勢を維持

56%

フォーチュン500企業のうち、年次報告でAIを「リスク要因」として挙げている企業の割合は、昨年の9%から大幅に増加しています。

信頼、責任あるAI、価値における新たな認識

信頼はあらゆるAI戦略の土台であり、AIの導入を促進してイノベーションを生み出し、価値創造を推進します。信頼はAIの価値創造における核となります。

責任あるAIに対する信頼がAIの導入を促進し、イノベーションを創出して最終的な価値に転換されることで、信頼がさらに深まる、という信頼のサイクルを示しています。
責任あるAIに対する信頼がAIの導入を促進し、イノベーションを創出して最終的な価値に転換されることで、信頼がさらに深まる、という信頼のサイクルを示しています。

企業が堅牢な責任あるAIのガバナンス・フレームワークに投資し、AIシステムの説明可能性と公平性を担保することで、人々の信頼は高まります。そして、信頼はAIの導入を促進してイノベーションを創出します。イノベーションは価値創造とビジネス成長の鍵となります。

責任あるAIは、AI投資の可能性を最大限に引き出すために欠かせない、最も理想的なAIです。また、信頼を構築するうえでも必要不可欠な存在となります。

82%

「責任あるAIにおける成熟したアプローチを明示することで、AI導入に対する従業員の信頼が大幅に向上し、イノベーションにつながる」と考えている企業の割合

25%

責任あるAIに投資している企業は、顧客のロイヤリティと満足度が25%向上すると予測しています

リマインダー:責任あるAIとは

責任あるAIとは、企業がAIの使用に伴う潜在的なリスクを回避しながら価値を創造し、信頼を構築するために、明確な意図を持ってAIの設計、開発、展開に取り組むアプローチを指します。責任あるAIを実現するために、組織は単に原則を策定するだけではなく、それを実際に施行し、組織全体で責任あるAIの能力を運用化する必要があります。

360度バリューの提供:責任あるAIの主要なバリューレバー

責任あるAIは、持続可能なビジネスの成功に不可欠な原動力です。では、企業はどのようにすればその価値を引き出せるのでしょうか。アクセンチュアの調査により、いくつかの異なる領域の価値手段に責任あるAIが与える具体的な影響と価値が明らかになりました。

アクセンチュアが提供する360度バリュー:財務、エクスペリエンス、リスクと規制、人材、サステナビリティ、インクルージョン&ダイバーシティ
アクセンチュアが提供する360度バリュー:財務、エクスペリエンス、リスクと規制、人材、サステナビリティ、インクルージョン&ダイバーシティ

64%の企業が、責任あるAIが契約獲得率の向上に強い、または非常に強い影響を与えると考えています。

企業の70%が「製品品質の大幅な改善」を、67%が「プロセスの工業化/開発サイクルの短期化における改善」を期待しています。

責任あるAIに投資している企業は、顧客のロイヤリティと満足度が25%向上すると予測しています。

78%の企業が、責任あるAIへの取り組みを明示することでブランド認知が大幅に向上すると考えています。

「今後5年以内に、AI関連の新しい法規制に適応するための十分な準備ができている」と回答した企業は1%未満でした。責任あるAIを完全に実装することで、規制への適応能力を大幅に向上させることができます。

45%の企業が、今後12カ月以内に25%以上の確率で重大なAIインシデントが発生する可能性があると考えています。

82%の企業が、責任あるAIへの成熟した取り組みを明示することで、AI導入に対する従業員の信頼が高まると考えています。

企業は責任あるAIを導入することで、人材の採用にかかる時間を20%短縮し、採用の質を21%向上させ、人材の定着率が21%向上することを期待しています。

今回の調査では、グリーンAIを効果的に導入することで、エネルギー消費量と二酸化炭素排出量を約40~60%削減できる可能性が示されています。

企業は、責任あるAIによって採用の多様性が21%向上すると考えています。

責任あるAIの成熟と価値創造を加速する

今回の調査では、72%の企業が「過去2年以内に、責任あるAIの取り組みに着手した」と回答しています。

責任あるAIの取り組みを開始した企業の割合と、取り組み期間を示しています。
責任あるAIの取り組みを開始した企業の割合と、取り組み期間を示しています。

今回の調査では、投資期間を短縮することで、企業は責任あるAIの成熟度をより早く高めることができ、価値創出までの時間を1年以上短縮できることも分かりました。これは、責任あるAIの導入が遅れている企業にとっては朗報です。投資初期から積極的なアプローチを取れば、通常5年かかる投資期間を3年に短縮できる可能性があり、先行投資している競合他社を追い越せるチャンスを得ることができます。

信頼を構築し、価値を解き放つために考慮すべき重要なポイント

価値志向でリードする

さまざまな分野における責任あるAIの影響を定期的に測定することで、AIが単なるコストではなく、成長を促進する重要な原動力であることを実証できます。

「責任ある設計」を実現する

責任あるAIをビジネスの中核に組み込み、初期段階から倫理的で透明性が高い公正なAIの活用を実践することが重要です。信頼はイノベーションと価値につながります。

プラットフォームアプローチを採用する

プラットフォームアプローチは、すべてのAIイニシアチブに責任あるAIの原則を組み込み、スケーラビリティ、リスク管理、運用効率を向上させます。

結論

信頼はあらゆる責任あるAI戦略の核であり、AIのトランステック(革新を促進する技術)としての可能性を解き放つ鍵となることを、企業は理解し始めています。

筆者

Arnab Chakraborty

Chief Responsible AI Officer

Jennifer Jackson

Global Lead for Accenture AWS Business Group & Senior Managing Director