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調査レポート

ラグジュアリーの永続性:顧客の声に耳を傾ける

ラグジュアリーの魅力と顧客の声が交わるとき

5分(読了目安時間)

2026/01/13

概略

  • ラグジュアリー業界は、これまで高いレジリエンスを維持してきましたが、ついに転換点を迎えています。顧客の購買意欲は依然として高いものの、ロイヤルティは揺らぎつつあります。

  • セグメント全体で、顧客は、卓越性、意義、アイデンティティ、帰属感、そして個人的なつながりなど、自分が求めている価値をより積極的に発信するようになっています。

  • この状況でブランドが成功を収めるには、エンゲージメントの在り方を根本から見直す必要があります。顧客により深く耳を傾け、ニーズを先読みし、驚きを提供し、長期にわたって顧客に寄り添うことが求められます。

ラグジュアリー業界は2026年、一つの逆説に直面しています。関税、地政学的な緊張、世界的な需要の不均衡にもかかわらず、この業界は極めて高いレジリエンスを維持しています。しかし、その強さの裏で、ロイヤルティはより脆くなり、その獲得が難しくなっています。アクセンチュアが2024年11月に発表した「ラグジュアリーの永続性」レポートでは、こうした緊張関係をブランドの視点から検証し、一部のラグジュアリーリーダー企業がオペレーショナルエクセレンスとブランド価値を同時に高め、好循環を生み出していることを示しました。

2026年度版の「ラグジュアリーの永続性:顧客の声に耳を傾ける」では、顧客に焦点を当て、13カ国3,435名のラグジュアリー顧客から得た知見をもとに、顧客がラグジュアリーをどう定義し、何が彼らに真に響き、なぜ一部のブランドが長く愛され続けるのかを探ります。

顧客はさまざまなニュアンスでラグジュアリーの本質を捉える

顧客がラグジュアリーを語るとき、必ず上位に挙がるのは「品質」「希少性」「エレガンス」の3つです。しかし、この共通認識の裏には、より複雑な現実が潜んでいます。ラグジュアリー業界の顧客は、一枚岩ではなく、期待が大きく異なる多様なアイデンティティの集合体です。

市場の一角には、若くグローバルな視野を持ち、デジタルに精通した層がいます。彼らのラグジュアリー観は、美意識、コミュニティが発するシグナル、そして文化の速度によって形成されています。2つ目のグループは、近い年齢層ですが、デジタルへの親和性を保ちながら、価値観と目的意識をより強く意識しているグループです。3つ目のグループは、より年齢層や地位が高く、伝統や起源・由来、ブランドの権威、熟練の職人技への信頼を通じてラグジュアリーを解釈しています。

各グループが重視する要素は異なり、グローバルなメゾンを率いることは、かつてなく複雑で要求水準の高い仕事となっています。

ブランドの高い魅力にもかかわらず、共感のギャップが拡大

これら3つの特徴的なグループ全てにおいて、顧客は依然としてラグジュアリーブランドの魅力を理解しており、かつ明確に言語化しています。

63%

ラグジュアリーブランドが変化するライフスタイルや期待に合わせて進化していると回答した顧客の割合

60%

ブランドのストーリーテリングが顧客の共感を生み、感情的に惹きつけると回答した顧客の割合

65%

ラグジュアリーブランドは依然として文化に影響を与え、現在の価値観を反映していると考える顧客の割合

しかし、こうしたラグジュアリーブランドへの憧れの反面、ブランドとのつながりが薄れているという感覚も広まっています。顧客の37%は、ラグジュアリーブランドへの共感や長期的な愛着を維持することが困難になっていると回答しています。ブランドと顧客の間のロイヤルティは、崩れつつあります。

50%

ブランドが夢を生み出す存在ではなく、利益優先のビジネスになりつつあると感じている顧客の割合

37%

「価格に見合う価値」が低下していると回答した顧客の割合

35%

ブランドの個性がなくなり、インスピレーションを与えるものではなくなっていると回答した顧客の割合

では、ラグジュアリー業界の顧客が本当に重視するものとは何か?

品質、エレガンス、感情、アイデンティティの組み合わせです。この文脈において、何よりも重要な問いがあります。「ラグジュアリーブランドは、品質・職人技・希少性という根幹を守りながら、製品そのものと同様に意図的で、個人的で、長続きする関係をいかに築けるのでしょうか?」

一部のリーダー企業はすでに、品質・感情・アイデンティティを組み合わせることでそれを実現しています。その結果、ラグジュアリー業界の顧客の90%以上が、お気に入りのブランドによって自分の欲求が満たされていると回答しています。

43%

お気に入りのラグジュアリーブランドが「卓越した品質と職人技を体現している」と回答した顧客の割合

38%

お気に入りのブランドの特徴として、エレガンスと時代を超えた洗練さを挙げている顧客の割合

36%

ブランドは「自身を特別でユニークな存在に感じさせてくれる」と回答した顧客の割合

顧客は、信頼性が高く、シームレスで、真にプレミアムなラグジュアリー体験を可能にする目には見えない価値を重視しています。

図1:ラグジュアリーブランドへの顧客エンゲージメントに影響する主な舞台裏要因
図1:ラグジュアリーブランドへの顧客エンゲージメントに影響する主な舞台裏要因

ラグジュアリーブランドが顧客の共感を得るための3つの必須事項

オペレーショナルエクセレンスを共感に変える「舞台裏」の推進力を構築する

ラグジュアリーを支えるすべての要素が重要です。69%の顧客が配送・物流のスピードと精確さを重視し、76%がスタッフの専門知識とプロ意識がブランドへのエンゲージメントを左右すると回答しています。これに応えるため、ブランドには、信頼性の高い品質、納期、物流のほか、商品への愛着を長持ちさせるカスタマーケア・修理・アフターサービス、そして顧客の好みや人生の重要な節目をプライバシーを尊重しながら把握できるデジタルツールやデータツールといった、サービスとテクノロジーの堅牢なアーキテクチャが必要です。これらはすべて、顧客に耳を傾け、それに応答し、一貫して実行するブランドを支えています。

帰属意識を生み出す継続的な関係性を築く

顧客体験には、個別のタッチポイントの連続ではなく、物語としての一貫した流れが必要です。その理由として、62%の顧客がオンラインショッピングに対してもリアル店舗と同様の個別対応とエンゲージメントを期待し、61%が購入後もブランドとのつながりを求めています。また59%にとって、限定的なコミュニティへの帰属感が重要とされています。そのため、ブランドは「購入前・購入中・購入後」の明確な流れを設計し、ブランドの美意識を顧客の実際の体験に落とし込む必要があります。また、成功を測る指標も工夫が必要です。コンバージョン率は引き続き重要ですが、継続性の追跡も重要になります。リピート訪問、顧客の掘り起こし、コミュニティへの参加、長期的なエンゲージメントの深化を考えてみてください。

「顧客関係の職人」を新たなリーダーシップの象徴として高める

ブランドの独自性、信頼性の低下、そして利益優先という印象を持つ顧客が増えるにつれ、ブランドはガバナンスの再定義を迫られています。「顧客関係の職人」が果たす役割は、この変化における顧客接点での対応であり、ブランドストーリーを伝える通訳者として、顧客にとっての共感と魅力を守ります。この役割は顧客に最も近い場所でその変化を体現します。彼らは、絆を脅かすシグナル、新たな行動パターン、緊張や誤解を察知し、顧客のリアルな体験をブランドに伝えることで、魅力づくりの戦略的な担い手となるのです。しかし、この役割の可能性を十分に発揮させるには、組織が適切な環境を整える必要があります。傾聴、文化理解、対話の技術を磨く研修、顧客と真に向き合うための時間、そして読みにくいダッシュボードではなくシンプルで信頼できるツールを提供し、スキルを適切に身に付けさせる必要があります。

今後の展望

ラグジュアリー業界は、レジリエンスに優れていますが、そのレジリエンスは今、地域、顧客、体験にかつてなく依存しています。ラグジュアリーの次なる時代に求められるのは、危機を耐え抜く力だけではありません。嵐の中にあっても顧客が自らブランドを離れないことを選ぶほど、強く、真摯な関係を築く力です。成功を収めるブランドとは、この変化を明確なビジョン、勇気、そして高い対応力を持って受け入れ、顧客との関係を商品の副産物としてではなく、究極のラグジュアリー体験として捉えるブランドです。

筆者

Jill Standish

Senior Managing Director – Global Industry Sector Lead, Retail

Amal Benichou

Managing Director – Global Luxury Lead & Expert – Paris, France

Arianna Galante

Managing Director – Song Account Lead, Luxury