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調査レポート

ラボから製造ラインへ:バイオファーマの再構築

インテリジェントテクノロジーで、よりスマートかつ迅速に、スケーラブルなバイオ医薬品製造を実現する。

5分(読了目安時間)

2026/02/10

概略

  • バイオ医薬品は現在、臨床パイプラインの55%を占めており、分子の複雑化が進む中、医薬品製造へのプレッシャーが高まっています。

  • 2019~2024年のFDA CRLを分析した結果、医薬品上市遅延の64%は化学や製造、品質管理に関する問題に起因していました。

  • 強固なデータ基盤とインフラ基盤は、市場投入までの時間短縮、コスト削減、サプライチェーン効率の向上を実現します。

インテリジェントテクノロジーがバイオ医薬品製造の進歩を加速する

アクセンチュアは、バイオ医薬品製造およびテクニカルオペレーションにおけるデジタルトランスフォーメーションの進捗について、包括的な調査を実施しました。

製造部門は今や、患者への医薬品供給においてクリティカルパスに位置しています。スピード、信頼性、品質を確保するには、ラボから製造ラインまでの一貫した連携が不可欠な転換期を迎えています。

製品ライフサイクル全体にインテリジェントテクノロジーをスケールさせることで、バイオ医薬品のリーダー企業はコスト削減、上市の加速、より信頼性が高く柔軟な製造システムの構築を実現できます。その範囲は、ロボットによる高速プロセス設計から、AIを活用したリアルタイムの分析・意思決定まで多岐にわたります。

しかし、こうした恩恵を実現できている企業はごくわずかです。多くの企業はデジタル変革の途中で行き詰まっています。調査対象の経営幹部のうち、自社がバイオ医薬品の製造・技術部門において「連携型組織」として機能していると回答したのは35%にとどまりました。

デジタル施策のスケール化を阻む障壁

目に見える進歩はあるものの、ほとんどのバイオ医薬品企業はデジタル施策のスケール化を試みる際、繰り返し同じ障壁に直面しています。

  • デジタルパイロットはリスクとインパクトが低い領域に限定されることが多く、より広範な変革を妨げています。

  • コアデータインフラおよびシステムは、大規模なデジタルプログラムを支える準備が整っていません。

  • デジタルの取り組みは個別の部門内に閉じていることが多く、断片的な施策に終始しています。

その結果として生まれるのは、投資対効果が限定的な場当たり的な解決策、スケールできないデジタル施策、そして増え続ける「行き詰まり」です。こうした分断は、描いた目標と実際の実行との乖離を広げます。放置すれば、業界のデジタル推進力が失速し、高コストの手戻りや機会損失につながりかねません。

バイオ医薬品のリーダー企業にとって、製造変革が必要かどうかはもはや問題ではありません。問われているのは、いかに迅速に障壁を乗り越え、成功した取り組みをスケールできるかです。インテリジェントテクノロジーを製品開発の各工程に組み込むことで、これまでにない規模とスピードで業務を効率化し、構想から実行へのギャップを埋めることができます。

変曲点を越えて(産業化フェーズへの移行を示す図)

出典:Accenture Analysis

インテリジェントテクノロジーで製品開発ライフサイクルを再構築する

人材とインテリジェントテクノロジーを組み合わせることで、バイオ医薬品企業は製品開発の全工程を革新できる可能性があります。特に先進的な治療技術の領域においてその効果は顕著です。創薬におけるAI活用はすでに開発期間の短縮に成果を上げており、構想から臨床試験まで、数年かかっていたプロセスを数カ月で実現する事例も生まれています。

R&Dの加速がもたらす経済的恩恵を最大限に引き出すには、製品開発ラボから生産ラインまで、ライフサイクル全体を最適化する必要があります。インテリジェントテクノロジーは、製造・技術部門のあらゆる段階・機能においてその中核を担います。

クライアントとのプロジェクト実績、業界事例研究、技術文献から、製品開発へのインテリジェントテクノロジー導入がもたらす以下の効果が明らかになっています。

  • 市場投入までの期間を最大40%短縮

  • プロセス開発のスループットを30%向上

  • 上流工程(細胞培養)での収率を400%超向上。さらに下流工程や結合ステップにわたる累積的な改善も可能で、コストやCO2排出量を削減し、将来必要となる生産設備の規模も抑えられます。

  • バッチのリードタイムを最大50%削減し、仕掛在庫を最小化します。

  • 逸脱調査の効率化により、分析時間を50%超短縮します。

デジタルの価値を解き放つロードマップ

イノベーションをスケールさせるには、人材・データ・テクノロジーを中心に据えた相互接続されたシステムが必要です。それによって初めて、データのデジタル化とインテリジェントテクノロジーを本格的に活用できるようになります。

こうした強固な基盤があることで、真にレジリエントな事業運営の構築が可能となります。地政学的な政策変動やサプライチェーンの混乱を乗り越え、AIが加速する開発タイムラインに対応し、複雑なパイプラインを管理するために、製薬企業は以下の3つの重点領域に注力すべきです。

取るべきステップ

価値を起点に行動する

製造・技術部門は、価値を起点とした視点で推進されるとき、真のイノベーションを生み出します。投資対効果と「何もしないことによるコスト」を優先することで、バイオ医薬品企業はイノベーションを加速し、業務を改善し、長期的な成長を実現できます。個別の実証実験の枠を超え、中核となるプロセスとシステムを再構築することで、デジタル変革の価値を最大限に引き出せます。

強固でセキュアなデータ・システム基盤を構築する

サイロ化されたシステムに分散する断片的で不整合なデータは、開発を遅らせ、技術移転を複雑にし、規制当局への申請を遅延させます。テクノロジーを基盤とするバックボーンとして機能する強固なデジタルコアは、技術移転や規制対応のアップデートをシームレスに統合し、バイオ医薬品企業の承認取得を加速します。

ワークフローと働き方を変革する

バイオ医薬品企業の次の変革段階では、働き方そのものの全面的な刷新が求められます。インテリジェントテクノロジーの導入とは、仕事の進め方、人材のスキル、そしてラボ業務を支援するデジタルツール環境を再構築することを意味します。目的は人を置き換えることではなく、AIツールや自律型のエージェント機能を活用することで、一人ひとりがより高い成果を上げ、競争力を高められるよう支援することです。

バイオ医薬品製造の未来はテクノロジーが牽引する

バイオ医薬品企業がラボから製造ラインに至る全バリューチェーンにわたってインテリジェントテクノロジーを採用するにつれ、収益拡大、上市曲線の加速、治療薬のライフサイクル延長という真の機会が生まれます。これは、企業の事業運営の見方と管理方法を変える根本的な転換であり、新工場や新ラボの建設による物理的拡張を超え、「未来のライフサイクル」へと移行するものです。

変革をリードする企業はその恩恵を享受できるでしょう。価値を起点に行動し、デジタルコアを強化し、ワークフローを変革することで、事業運営のあり方を再定義し、収益性を向上させ、最終的には患者に貢献します。

寄稿者

著者一同は、本レポートへの貢献に対し、以下の方々に感謝の意を表します。

  • Brendan Hughes Ph.D BPHughesCMCConsulting

  • Barry Heavey Former Accenture Life Sciences Industry X and Supply Chain & Operations, Global Lead. Now Head of Data Analytics, Sartorius

  • Amanda Rubin, Bilal Butt, Camille Planty, Ciara Mc Nally, Joanna Lisiecka, Kamila Ochedalska-Szymanska and Kristina Tomes

出典

1 AI活用による製造業の価値最大化

2 AI駆動による、自己原資型サプライチェーン

3 From jobs to value - reinventing talent strategy with a human+ AI workforce

4 Special Report: The AI Skills Gap - Knowledge at Wharton

筆者

Hagen Späth

Accenture Global Industry X and Supply Chain Lead for Life Sciences

Anne Marie O'Halloran

Managing Director – Life Sciences, Global Supply Chain and Industry X North America

Selen Karaca-Griffin

Principal Director – Accenture Research, Products and Life Sciences