調査レポート
サイバー人材モデルの変革を通じて、内部からレジリエンスを高める
10-分(読了目安時間)
2026/06/02
調査レポート
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2026/06/02
サイバーセキュリティは、専門的なIT機能から、企業におけるレジリエンスの主要な原動力へと進化しています。しかし、それを支える人材モデルがITの進化に追いついていません。世界中のサイバーセキュリティ分野の役職のほぼ半数が満たされていません。この問題は、単に専門知識を持つ人材の不足が原因ではありません。その人材が、エンタープライズレベルで事業を行うために必要な技術的な専門性とビジネス上の洞察力をバランス良く兼ね備えているかどうかが問題です。
550,000件を超えるサイバーセキュリティ分野の求人情報と専門家のプロファイルを分析したアクセンチュアの調査によると、最新のサイバーセキュリティの需要と労働市場の供給との間に構造的なひずみが生じていることが明らかになりました。
このギャップを定義する2つのサイバーセキュリティ人材プロファイルを特定しました。
| 指揮者 | 実行者 | |
|---|---|---|
| 定義 | 技術的な専門性、ビジネス上の洞察力、戦略的なリーダーシップ、ソフトスキルを兼ね備えた人材 | 主に、技術的なセキュリティタスクと制御を実行する人材 |
| 企業での役割 | リスクを評価して意思決定に落とし込み、変革の中にセキュリティを組み込み、部門間のコラボレーションを図る | 制御を実装し、脅威を監視し、システムを運用する |
現代の組織では、より多くの指揮者を必要としているものの、労働市場ではより多くの実行者が生まれ続けています。その結果、ツールの運用に最適化された人材は供給されますが、企業のレジリエンスを向上させることはできません。実行者をさらに採用しても、このギャップを埋めることはできません。
サイバーセキュリティの役職は進化しており、その需要は次の3つの主要な側面にわたって拡大しています:高度な技術的サイバーセキュリティの専門知識、企業レベルでの事業運営に必要な戦略的リーダーシップとソフトスキル、そして特にAIなどの新しいテクノロジーに関連する専門的なテクノロジースキル。
労働市場に関するデータによると、人材プロファイルがこの需要パターンを反映していないことが明らかになっています。例えば、サイバーセキュリティエンジニアの役職では、人材プロファイルを見ると、求人情報で必要とされているよりも、サイバーセキュリティに関する技術的な深い専門知識とリーダーシップ能力が低いことがわかります。
AI関連のサイバーセキュリティスキルに対する需要が、今後の課題をさらに複雑にしています。 これらのスキルに対する需要は、2020年以降2.5倍以上に増加しましたが、人材の能力はそれに追いついていません。AIの規模が拡大するにつれ、組織はこれらのスキルを積極的に社内で育成する必要があります。
さらに、認知度の問題もあります。すべてのIT関連の求人情報においてサイバーセキュリティが占める割合はわずか3.5%にすぎず、ブランディングやプロモーション、あるいは社会に向けた発信が限定的です。少数の人材に対する競争は熾烈です。
組織が依然として人材の育成と確保に苦戦している状態では、採用しても解決策にはなりません。高い業務上のプレッシャー、キャリアパスの不足、限られた学習機会により、多くのサイバー専門家は専門知識が成熟する前に離職してしまいます。
1.8
現在のサイバーセキュリティ専門家の平均在職期間。3.3年(2005年~2015年)から短縮しています。
< 30%
構造化されたスキルアッププログラムに投資している組織の割合。1
49%
人材不足がサイバーセキュリティ機能に重大な影響を与えていると考えている組織の割合。2
高等教育機関でも、変わり続けるスキル需要への対応に苦慮しています。24か国にわたる100校の大学におけるサイバーセキュリティプログラムの評価によると、現在、企業からの需要の中心となっている、サイバー法、リスクマネジメント、エンタープライズアーキテクチャ、エグゼクティブコミュニケーションなどの分野で持続的なギャップがあることが明らかになっています。
今日の脅威アクターは数週間で進化します。コンピテンシー要件が上がるスピードが、人材パイプラインが適応できるスピードを上回っています。一方、サイバーセキュリティ部門は、全従業員のサイバーリテラシーに対してより大きな責任を負うようになっていますが、組織における人的リスクへの管理はいまだに不十分なままとなっています。規制面の説明責任は、個々のサイバーリーダーへと移行しており、法律に関するより高い習熟度が求められ、またそうした役割を担うことのリスクが高まっています。
87%
AI関連の脆弱性が最も急速に高まっているサイバーリスクであると認識しているリーダーの割合。 3
94%
AIが今後1年以内にサイバーセキュリティにおける変革を主導する最も重要な原動力になると予想するリーダーの割合。 4
わずか18%
役割に応じたサイバー意識向上プログラムを提供している組織の割合。 5
長年にわたり、企業ではツール、制御、専門家を追加することで、増え続ける脅威に対応してきました。企業は、労働市場が不足しているスキルを補ってくれると考えています。 しかし、このモデルはもはや機能せず、事後対応のパターンからもその理由が伺えます。
サイバーインシデントが発生した場合、組織の対応は予測可能です。チームを再編し、予算を拡大し、新しいリーダーを任命し、新しいツールに投資することで、組織を短期的に安定させることができます。しかし、サイバーセキュリティ人材を採用、オンボード、育成し、そして事業全体に組み込む方法を根本的に再設計する組織はほとんどありません。
役割、スキル、運用モデルを再設計することなく、事後対応を行うと、人ではなくテクノロジーだけが最適化されるため、将来的な人材の隔たりは拡大し続けることになります。
ギャップを埋めるには、能力の育成方法、業務の編成方法、人間の専門知識の拡大方法について、構造的な見直しが必要です。3つのアクションを同時に行うことで、組織は市場での持続的な供給不足にもかかわらず、持続可能なサイバー機能を構築できます。
組織が必要とするハイブリッドな専門家は、外部市場から十分なスピードで供給されていません。リーダーは、内部から指揮者レベルの人材を育成し、離職率ではなく専門知識を高める文化を醸成する必要があります。
サイバーセキュリティは、企業全体の横断的な機能となっているにもかかわらず、そのキャリア構造は、依然として狭い垂直的な縦割り構造のままとなっています。専門家たちは成長の限界に達すると、それまでに培った経験を携えて組織を去っていきます。指揮者レベルの能力は、役割のデザイン、キャリアパス、そして企業全体を見渡す経験を通じて育成される必要があります。
人材を再設計しても、現代の脅威の量とスピードに単独では対応できません。目指すべきは、AIによる能力強化であり、人間の代わりとなるのではなく、人間の能力を強化します。
これらのアクションを実行する組織は、希少なサイバー人材の獲得競争をやめ、その人材育成に乗り出します。その結果、今日の企業を守るだけでなく、今後のあらゆる障害を乗り越えて強くなるサイバーセキュリティ機能が生まれます。
1.ISACA、『State of Cybersecurity 2025』、2025年9月29日発行。
2.アクセンチュア、『State of Cyber Resilience 2025』、2025年6月25日発行。
3.世界経済フォーラム、『Global Cybersecurity Outlook 2026』、2026年1月12日発行。
4.同上。
5.アクセンチュア、『State of Cyber Resilience 2025』、2025年6月25日発行。