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調査レポート

CIOのためのAIトークノミクスガイド

AIトークン支出を可視化・管理し、事業成果につなげるには。

10分(読了目安時間)

2026/09/10

概略

  • AIトークン支出の8割は、定量的な事業成果に紐付けられていません。
  • 経営層の80%が「AIは価値を生み出している」と回答する一方、事業成果に紐付けられるトークン支出は20%未満です。
  • CIOは二重の課題に直面しています。トークン消費量を予測できないこと。そして、その支出が生み出した成果を説明できないことです。
  • CIOに求められる新たな役割は、トークン消費を、予測困難な「経費」から、CEOが数値化し取締役会が評価できる「投資」へ転換することです。

これまで企業は、AI投資の必要性を説明してきました。今問われているのは、その経済合理性です。トークンコストは、新たな主要支出として急速に増えています。その伸びに、投資対効果の検証が追いついていません。プロンプトや推論、AIエージェントとのやり取りにかかるコストが増すなか、トークノミクス(AIトークンを経営資源として捉え、コストと価値を管理する考え方)は経営課題となっています。

アクセンチュアは、世界17か国の経営層750名を対象に調査を実施し、Fortune 500企業のテクノロジー・財務部門のリーダー15名にインタビューを行いました。トークン支出のうち、売上への貢献、コスト回避、財務部門が活用できる数値に換算した生産性向上など、定量的な財務成果に紐付けられるのは2割未満です。

背景には二つの課題があります。企業は、四半期ごとのトークン消費量と支出を正確に予測できず、支出後の成果も説明できていません。これが二重の課題を生んでいます。コストを予測できなければ、財務部門はAI予算の拡大に慎重になります。価値が見えなければ、取締役会はCEOに説明を求め、CEOはCFOに統制を求め、CFOはCIOに対応を求めます。CIOには、AI支出を予測可能にし、適切に管理しながら、その価値を実証することが求められています。

経営層の5人に4人は、AIが測定可能な成果を生み出していると回答しています。一方、トークン支出と価値を結び付けられているのは5人に1人未満です。多くの企業は、CFOが判断し、CEOが数値で示し、取締役会が評価できる財務的な形でAI支出を説明できていません。

「問うべきは、トークンをいくつ消費したかではありません。そのトークンが、どのような成果を生み出したかです」

Field CTO for AI, Cybersecurity and Data, Global Technology Infrastructure Company

78%

今後24か月で見込まれるトークン消費量の増加率

3社に1社

年末を待たずに年間のトークン予算を使い切る企業

わずか35%

最大規模のAIユースケースでさえ、事業成果1件あたりのコストを算出できる企業

真の問題は、今後も増え続けること

この二重の課題は、数字にも表れています。調査対象企業が昨年AIトークンに費やした金額は、合計約25億米ドルでした。トークン支出は、インフラ、ソフトウェアの開発・保守に次ぐ、3番目に大きなAIコスト要因となっています。

より深刻なのは今後の増加です。企業は、今後24か月でトークン消費量が78%増加すると見込んでいます。価格が19%下落するとの予測を加味しても、最適化を行わなければ、トークン支出総額は同期間に約36億米ドルへ達する見通しです。企業ごとの差も大きく、年間2,000万米ドル以上を支出するグローバルテクノロジー企業、AI推論に1億5,000万~2億米ドルを投じる欧州の保険会社、AI支出上限を2億5,000万米ドルに設定する政府系請負企業もあります。

現時点で、トークン支出は取締役会の主要議題になっていないかもしれません。しかし、このまま増え続ければ、CIOと財務部門が気付いたときには、運用コストが重大な財務リスクになっているおそれがあります。

インタビューでは、米国の大手金融機関のテクノロジー責任者が、トークン支出が6か月で5~10倍に増えたと語っています。欧州の大手銀行では、年間トークン支出が12か月でほぼゼロから500万ユーロに達し、一つのワークロードだけで週20万ユーロを消費しています。

「これは現実の問題です。コストは刻々と増えています。複数の組織やチームに利用が分散している場合、トークン支出の把握はとりわけ困難です」

Chief Technology Officer, Global Financial Data and Media Company

トークン価格が下がっても、問題は解決しません。経営層の10人に9人は、価格低下分をコスト削減に充てるのではなく、AI活用の拡大に振り向けると回答しています。価格がさらに25%下落した場合でも、節約分を積み立てると答えたのは20人に1人だけでした。

トークン価格が下落した場合、経営層はどう対応するか

トークン価格が25%以上下落した場合、どのように対応しますか。
トークン価格が25%以上下落した場合、どのように対応しますか。

予測できない支出、証明できない価値

多くの企業は、ワークロード単位でトークン消費量を把握できていません。支出がワークロードに紐付いていなければ予測できず、価値も証明できません。つまり、企業は「予測できないAI支出」と「証明できない価値」を抱えています。その背景には、気付かないうちにAI予算を圧迫する六つの盲点があります。

CIOに求められること

根本的な解決には、ワークロード単位で利用状況と責任主体を可視化し、財務的な説明責任を明確にする必要があります。先進企業とそれ以外を分けるのは、次の五つの取り組みです。なかでも可視化は、残る四つの前提となります。また、他のどの施策よりも効果が高い施策がありますが、導入している企業は、10%未満にとどまります。

01

AI活用の拡大前に利用状況を可視化する

すべてのAI利用について、ワークロード名、担当チーム、使用モデル、トークンコスト、出力を記録できるAIゲートウェイまたはオブザーバビリティレイヤーを導入します。可視化がなければ、他の施策も実効性を持ちません。

データ

53%

特定のユーザーまたはチームまで追跡できるトークン使用量

02

利用チームがコストを負担する仕組みにする

トークンを使用したチームに、そのコストを配分します。まずはエンジニアリング部門と、消費量の多い3~4部門から始めます。

ショーバックは使用量を可視化できますが、費用負担は伴いません。行動変容につなげるには、他のインセンティブとの連動が必要です。一方、チャージバック(社内課金)は、使用量に応じてコストを各チームに配分する仕組みです。本調査では、コスト最適化とAIが生み出す価値の可視化に最も強く関連する施策でしたが、導入企業はごくわずかです。効果を引き出すには、周辺のガバナンス体制も整える必要があります。

各チームが自らの使用分を負担することで、管理者は支出の妥当性を確認し、開発者はコストを踏まえてモデルを選ぶようになります。

データ

わずか7%

AIコストの管理にチャージバック(社内課金)を導入している企業

03

タスクに合ったモデルに振り分ける

フロンティアモデルが必要なワークロードは、複雑な推論、複数情報源の統合、重要度の高い生成を伴う約10%に限られます。それ以外は、中位モデルやオープンウェイトモデルに振り分けます。モデルの振り分けは開発者個人の判断に委ねず、ゲートウェイで制御します。

データ

90%

9,000件を超えるタスクのうち、フロンティアモデルを必要とせず、中位モデルで対応できるタスク

04

AI導入前に価値を定義する

新たなAIワークロードに投資する前に、三つの項目を明確にします。現在のプロセスにかかるコストまたは時間、AIによって改善する具体的な財務成果、その成果を金額で測定する方法です。これらが明確になるまで、本番稼働へ進めません。複雑な仕組みは必要ありません。ただし、支出後に投資を正当化するのではなく、支出前に定義することが重要です。価値の指標は部門によって異なります。カスタマー業務なら自己解決率、ソフトウェア開発ならサイクルタイム、バックオフィスなら1件あたりの処理時間などです。指標は異なっても、事前に定義するという原則は変わりません。

データ

20%未満

定量的な財務成果に紐付けられるトークン支出

05

従業員のAI活用力を高める

モデルの振り分けを誤る主因は、判断力ではなく、明確な選定基準がないことです。開発者や従業員はモデルごとのコスト差を把握できず、低コストモデルで十分かどうかを判断する基準もないため、最も高性能なモデルを選びがちです。必要な人がコストを確認できるようにし、適切なモデルが自然に選ばれる初期設定にします。人による判断は、本当に必要なケースに絞ります。

データ

54%

タスクに必要な水準を上回る、高性能・高コストのモデルに振り分けられているAIリクエスト

成否を分けるのは管理の仕組み

AI活用の成否を分けるのは、管理の仕組みです。先進企業は、トークンが説明困難なコストになる前に管理し、事前に定義した事業価値と結び付けています。  

これはCIOだけの役割ではありません。CFOは測定可能な価値をAI投資の条件とし、CHROは従業員にコスト意識を根付かせる必要があります。事業部門のリーダーには、すべてのワークロードに立ち上げ時から責任者を置くことが求められます。

AI投資をめぐる問いは、すでに取締役会からCEOへ、CEOからCFOへ、そしてCIOへと及んでいます。今のうちにワークロードの可視化、財務的な説明責任、モデル振り分けのルールを整えるCIOは、こうした問いに答えを持ち、期待ではなく根拠に基づいて、確信を持ってAI活用を拡大できます。

本調査について

本調査は、年間売上高10億米ドルを超える企業の経営層750名を対象に、世界17か国で実施しました。あわせて、2026年6月から7月にかけて、Fortune 500企業のテクノロジー・財務部門のリーダー15名に詳細インタビューを行いました。

筆者

Ajoy Menon

Digital Core Reinvention Partner Lead

Lan Guan

Chief AI and Data Officer; AI and Data Reinvention Engine Lead

James Burrows

Lead – Technology Strategy & Transformation

Surya Mukherjee

Principal Director – Accenture Research