ウェルスマネジメント企業にとってアジア地域は重要な市場であり、市場で優位性を確立することは容易ではないことを企業は十分に理解しています。今回の調査によると、ウェルスマネジメント企業は2025年までに運用資産残高を約2倍、収益を60％増やすという目標を設定しています（2021年対比）。

企業がこの野心的な成長目標を達成するためには、富裕層投資家の既存顧客を維持するとともに、新規顧客の獲得にも注力していかねばなりません。また同時に、現職のリレーションシップマネジャーに加え、すでに有能な人材が不足していると言われる市場で新たな人材を確保していく必要があります。

今回の富裕層投資家を対象とした調査では、投資家の好みについて興味深い4つの 傾向が明らかになりました。

• 現在、投資家の多く（40％）が、本心ではリレーションシップマネジャーと一緒に投資機会を検討した上で、最終的な投資判断を自身で行いたいと考えています。
• 4分の3以上の投資家 が、優先的に求める事項として、「アドバイザリーサービスを通じて多様な投資商品やソリューションを利用できること」「資産の管理・保全」「ファイナンシャルプランニングとアドバイスを受けることができること」「マーケットに関するデータや調査結果など、有益な情報提供があること」の4つを挙げています。
• 約4分の3の投資家が、2022年末までに暗号通貨や暗号資産ファンドなどのデジタル資産を保有したいと考えており、ウェルスマネジメント企業がデジタル資産のプロダクトを増やすことに期待しています。しかし、現時点で対応を予定しているウェルスマネジメント企業はほとんどありません。
• また、2022年のESG投資の普及率は、前年の2倍以上となる70％にのぼることが予想されています。多くのウェルスマネジメント企業も注目すべきと認識している通り、投資家はより的を絞ったESG投資商品を求めています。
• 投資家のほとんどが2021年に自身のウェルスマネジメント企業が達成した投資リターンに満足しているにもかかわらず、約30％の投資家が、現在取引しているウェルスマネジメント企業との契約を2022年内に解約する意向を示しています。

ウェルスマネジメント企業には、過去の成果に満足している時間はありません。既に一部の企業は変革を進め、次世代型のアドバイザリーサービスを展開し始めています。しかしながら、商品の魅力だけで未来の成功を実現することは困難であり、既存顧客のニーズを満たし、新規顧客を魅了する企業となるためには、リレーションシップマネジャーの活躍 が重要になります。企業がリレーションシップマネジャーをエンパワーメントすることは、人材の流出抑止や新たな人材の獲得を促進することにも繋がります。もし企業がそれらに対処できなかった場合には、2025年までの成長目標を達成することは不可能であると考えるべきでしょう。

アジア市場でウェルスマネジメント事業を成功させるためには次世代型のアドバイザリーサービスへの移行が不可欠です。移行を成功させるためには次の4つの取り組みが必要になります。

• アドバイザリーサービスの内容と機能を再構築する
• 営業プロセスや営業姿勢を評価する（商品ありきのアドバイスではなく、アドバイスに基づく商品選定にシフトできているか）
• 有能な人材を育成または採用し、市場の変動性に素早く対処できる体制を確立する
• 変革を成功させるために必要な管理機能を構築するために構造化されたアプローチを採用する

特に4つめの「変革を成功させるために必要な管理機能の構築」は企業にとって重要な課題となります。ほとんどの企業が「何をすべきか」を理解しているにもかかわらず、「どのように行うべきか」を見失い、変革が頓挫するケースはよく発生します。調査結果では、ウェルスマネジメント企業の約半数が通常業務の延長として変革を捉えていますが、それは大きな誤りです。企業が本気で変革を実現させたいのであれば、変革実行のための専門チームを組成して包括的に一連の変革プログラムを主導する体制を構築すべきです。

次世代型のアドバイザリーサービスに移行できた企業だけが、有望な顧客のプライマリ企業として認められ 、有能なリレーションシップマネジャーが活躍することによって、市場の勝者となる機会を掴み、2025年までの野心的な目標を達成する可能性を大幅に高めるでしょう。