第1のD ――「Define:人材定義」
4Dサイクルでは、目的が不明確なままの研修実施を戒めています。まずは自社が求めるデジタル人材を定義し、必要となる人材の質・量を明確化します。このプロセスでは必ず自社の現状把握を伴うため、現実と理想の乖離状況も可視化します。
つまり、自社のDX戦略のなかに、デジタル人材育成をどのように位置付けるのかという、経営戦略との一体化がプロセスの第1歩です。
第2のD ――「Discover:評価・採用・選抜」
自社に必要なデジタル人材を定義したら、その人材をどのように評価するのかといった人事制度との調整を実施します。従業員にはデジタルスキルの習得のモチベーションとなる新しい評価・報酬体系を提示する必要があり、かつインセンティブにもなるメリハリの効いた制度設計へと転換しなければなりません。
新しい人材を獲得する場面でも、この新評価体系は効果を発揮します。特に個々人のデジタル人材としてのスキルアセスメントは、評価の客観性を担保する上で重要です。
第3のD ――「Develop:人材育成」
上記の2つのDを経て、ようやくどのような研修プログラムを実施するべきかの輪郭が明らかとなります。ただし、Developでは日常業務から離れた空間での研修だけでなく、日頃の業務を通じたスキル開発も重視しており、「実業務に活かす」ための施策であるべきと提唱しています。
第4のD ――「Deploy:適正配置・モニタ」
本論考の冒頭で、研修で学んだ知識や経験を活用する場がないといった従業員の声を紹介しました。育成した人材が自社に貢献するには、そのスキルを発揮できる場を経営層が提供する以外にありません。つまり、人材育成の仕上げとして適切なポジションで実践を重ねることが必須となります。
これは単なる異動や組織改変ではなく、自社のDX戦略と同調した配置の適正化を意味します。また、人材が活躍し続けるためには、環境の継続的なモニタリング・改善も必須です。Deployは、組織全体のパフォーマンス最大化のための実行フェーズであるとも言い換えられます。
第5のD ――「Data:データ・テクノロジー」
4Dサイクルを支える基盤がデータです。人材の需給状況やスキルアップの実態を効果測定するだけでなく、自社の人材マネジメントモデルが適正に運用されているか、経営層の期待に則した改革がなされているかの判断には、テクノロジーが重要です。また、データを使って育成状況を可視化することは、従業員にとっても納得感の醸成、目指す姿とのギャップ把握、モチベーション強化に有効と言えます。