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500万人のノルウェー国民の医療情報は、従来、各機関に任され、管理体制にもばらつきがありました。そしてこの状況が、患者に関する重要な情報の利用を難しくしていました。
医療従事者が患者の重要な情報を入手するのは難しく、時間もかかり、その上、情報の質もそれぞれ異なっていたため、信頼性も高くありませんでした3。事実、緊急入院に関する調査では、39%の患者の投薬リストが見つからなかったという結果もあります4。
このような課題を克服するために、新たなシステムの導入を決め、一貫性のある情報があらゆる医療サービス機関の間で共有でき、また、患者も自分自身の記録を見られるようにすることにしました。これは、ヨーロッパでは類を見ない、先進的な取り組みとなりました。
1 Bakken et al, Mangelfull kommunikasjon om legemiddelbruk i
primærhelsetjenesten, Tidsskr Nor Lægeforen nr. 13–14, 2007; 127:1766–9
2 Frydenberg K Brekke M, Kommunikasjon om medikamentbruk i henvisninger,
innleggelsesskriv og epikriser, Tidsskr Nor Legeforen nr. 9–10, 2011; 131: 942–5
1(ノルウェー医師会会報13–14, 2007; 127: 1766–9:医療の根幹となる患者への投薬についての不十分な情報交換)
2 (ノルウェー医師会会報9–10, 2011; 131: 942–5:紹介状、入院時の診療情報、退院時の報告書類における患者への投薬についての情報交換)
アクセンチュアは、当局と共同で新しいシステムの設計と導入を実施しました。手始めに開始した試験プロジェクトでは、最終的に4つの地方自治体の住民40万人まで対象者を広げ、患者に欠かせない情報を以下の医療関連機関で収集・共有しました。
試験プロジェクトの成功を受けて全国展開が行われました。アクセンチュアは、他の国々(シンガポールやオーストラリア)で実施した類似プロジェクトの経験と、ノルウェー国内の他の産業分野で行った類似の導入プロジェクトの経験を活用し、プロジェクトの迅速な立案により、実現までのスピードを加速できたと同時に、重要なシステムのパフォーマンスへの配慮にも力を入れることができ、さらにデータのプライバシーも確保できました。
アクセンチュアと当局の長期にわたる関係と、医療費払い戻し制度プロジェクト、国民向けポータルサイト、症例管理システムなどの各種プロジェクトを共同で行った経験は、組織の文化や、組織としてあるべき必要条件を明確に理解する機会ともなりました。
新しいデジタルシステムにより、ノルウェー保健局は、国民医療分野全体でシームレスな情報共有の実現に近づく重要な一歩を踏み出しました。これは、地域や医療関連ビジネス、ケアレベルを超えて、臨床情報を共有できるという、ノルウェー初の国内システムになります。
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ノルウェーの全国民(520万人)がシステムを利用可能に
6,000人の医療従事者がシステムを活用
30秒に1回の割合で医療従事者がシステムを利用6
TESTIMONIAL
「薬を過剰に服用した患者が来院したことがありました。彼女からは、服用に関する情報を得られませんでしたが、国内のカルテから、2日前に薬局で鎮静剤を入手していたことが分かりました。医療担当者は、カルテから彼女のおおよその服用量を特定し、すぐに正しい治療(対応策)を行いました」
- 救急医療コミュニケーションセンター(Emergency Medical Communication Centre)
患者側も、本人の医療情報の記録を見られるようになりました。また、ポータルサイトを通して本人の情報を更新できるので、患者が自分の健康管理に積極的に関与することが可能です。新しいシステムは、将来的に「国民1人に1つの記録」にまで発展させ、あらゆる医療サービス間での連携と協力を目指す基盤となっています。
また同時に、患者と医療関係者は、国内のカルテを共有するという前例のない活用方法の恩恵を受けています。その結果、患者の安全性や医療サービス間相互の連携が向上し、患者がより安全に、健康的な生活を送れるようにするという、保険局の目的に対応したシステムになりました。