再生可能エネルギーは出力調整可能に、すなわち制御しやすくなり、オンデマンド利用が可能になったこと で需要調整力の強化 (Dispatchability)が高まりつつあります。そのため再生可能エネルギー事業者に、卸 売市場の送配電リスク管理の向上とアンシラリーサービス提供において企業が重要な役割を担う機会と市場 のバランスの確保 がもたらされています。
「従来のエネルギー および電力グリッドが持つ調整力 と安定性とは対照的に、再生可能エネルギーが持つ 不確実性の高い 変動特性はグリッドを不安定にさせる」というのが一般的な概念です。この常識に真っ向 から対立するような挑戦的な見解となりますが、この安定性の課題が電力需要のピーク時のバランス を保 つためのアプローチを促進し、再生可能エネルギーの変動特性を補うことができると考えています。

現在は、再生可能エネルギーによる電力のほとんどが発電所 から直接供給されていますが、一部の市場で は出力調整可能な再生可能エネルギーの送配電が実現されています。カリフォルニア州、アリゾナ州、英 国、オーストラリアでは、ストレージおよびバッテリーの活用や太陽光発電の最適化により、再生可能エネ ルギーにおける送配電の可能性を拡大する方針を示しています。
太陽光パネルやトラッキングシステム、スマートインバーターなどの市場価格が下がったことにより発電事 業者ではソーラーパネルを増設して、太陽光の少ない時間でもより多くの電力を生産できるようにし、同時 に電力需要のピーク時には出力を抑えるという運用を行っています。アクセンチュアのクライアント事例を 見ても、電力の不均衡コスト(不安定性)が高い市場では、風力発電所や太陽光発電所にバッテリーを追加 設置して発電電力量をコミットすることで不安定性を低減しています。また発電所のO&M事業者はデジタ ルソリューションを活用して、太陽光と風力を組み合わせた電力の発電制御に係る検証を行うなど、さまざ まな再生可能エネルギー源を組み合わせ、相互連動した需給調整を進めることで、電力の需給調整機能 を 最適化する取り組みを進めています。

このような再生可能エネルギーの発電量の拡大が進展する傾向 が長く続くと、電力需要のピーク時に対処 するために従来の火力発電を広範にわたり使用し続ける必要性と需要の有無について改めて検討する議論が 生まれ、発電ポートフォリオを見直す決断を下す発電事業者が増えていくことになるでしょう。 規制当局は、再生可能エネルギーにおける送配電の可用性を高めピーク時の電力需要にも対応できるように ストレージおよびバッテリーの利用を奨励しています。例えば、ピーク時の再生可能エネルギーによる電力 量を規定しているアリゾナ州の「Clean Peak Standard(クリーン・ピーク・スタンダード)」や、太陽光発 電のダックカーブ現象に対するカーボンフリー資源の活用の提案を電力事業者に求めるカリフォルニア州の 「SB338」など、新しい規制を順守する上でも、ストレージおよびバッテリー利用の重要性とその存在感は 確実に高まっています。
ストレージを利用しない場合には、デジタルテクノロジーによって再生可能エネルギーの制御を実現できる 可能性もあります。このことは、従来は送配電事業者がアンシラリーサービスの提供を通じて電力システム を制御し、それをサポートする発電事業者の役割が拡大し始めている点にも現れています。2017年には、 システムの慣性と無効電力を含む5つの主要なシステム要件について述べられた英国のNational Grid社のレ ポートに呼応して、Scottish Renewables社が再生可能エネルギーで各要件を満たすための方法(またはすでに要件を満たしている方法)についての調査報告を行っています。

オーストラリアも規制当局が再生可能エネルギーの出力調整機能の強化を推進する市場の1つです。Australian Energy Market Commission (AEMC)はすべての風力発電所および太陽光発電所に対して有効電力の出力を制御する能力を要求するための規制変更を決定しています。これにより周波数および電圧変動への寄与を制限するだけでなく、電圧を制御するための無効電力の管理 が可能になります。また、あるオーストラリア企業は、再生可能エネルギーの発電 を最適化するための新たな選択肢を模索しています。これらの施策は風力と太陽光、バッテリー、水力などの要素を組み合わせることで、各要素が他要素の発電特性 を補って機能するハイブリッド発電所の設立にもつながります。Vestas社のKennedyプロジェクトでは、オングリッド風力および太陽光とバッテリーを組み合わせた世界初の実用規模のハイブリッドエネルギーストレージをクイーンズランド州中央北部に建設しています。
カリフォルニア州では、国立再生可能エネルギー研究所(NREL)とFirst Solar社によるデモンストレーションプロジェクトが再生可能エネルギーの出力調整能力を一段と進化させています。スマートインバーターやグリッドに優しい電力制御機能を備えた実用規模の太陽光発電所では、発電事業者がアンシラリーサービスを提供することで、太陽光発電の大規模統合に必要なグリッドの安定性と信頼性を向上できることを実証しています。
いずれの例も、多くの電力企業が再生可能エネルギーの出力調整能力に懐疑的な中で、実現に向けて積極的に取り組んだ結果、デジタル、ストレージ、ハイブリッド発電所などによる新しいアプローチの有効性を証明しています。エネルギーミックスにおける再生可能エネルギー電力量の増加に伴い、グリッドの不安定性を引き起こす可能性が高まることから、再生可能エネルギーにおける出力調整能力や慣性力に係る需給調整機能の高度化に伴う課題はますます重要になります

すべての再生可能エネルギーで電力の出力制御が可能になるわけではありません。しかし、いったんある割合まで到達すると、「化石燃料による 発電所のビジネスケースにどう影響するか」「二酸化炭素排出に関する規制を順守した上で、能動的な管理が可能な再生可能エネルギーとストレージによる電力需要ギャップの課題を解決できるのはいつ頃か」「再生可能エネルギーの不確実性の特性から発生するリスクの低減やアンシラリーサービスのローカライズなどによって、送配電事業者はグリッド設備の補強投資と混雑コストをどこまで節減できるのか」というような議論が交わされるようになるでしょう。
電力業界では今までと同様に将来の展望について規制当局が強い発言権を持ち続けますが、電力関連の規制は再生可能エネルギーの出力調整能力を進化させる方向で進められており、そう遠くない未来には、安定した再生可能エネルギーによる電力供給が一般的となり、これまでの常識にしばられない電 力業界の常識やトレンド、サービスはすっかり様変わりしていることでしょう。

メリッサ・スターク

再生可能エネルギーグループ グローバル統括​

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