水力発電は古くから用いられている最大規模の再生可能エネルギー源です。世界的に見ると、すべての河川流量における総電力量は1,152GWで、世界中の再生可能エネルギー発電設備で生産される総電力量のおよそ53%に相当します。大規模な水力発電設備の多くは長年の使用で老朽化しており、改修や刷新のための投資が必要な状態です。2050年までには、すべての水力発電設備の半数で改修が必要になると予想されています。
水力発電は他の再生可能エネルギーと両立して機能する性質があることから、再び注目されています。今のところ唯一、価格競争力を持った大規模蓄電設備である揚水発電をはじめ、水力発電用貯水池に太陽光パネルを浮かべて電力を生産する「floatovoltaics」(Floating Photovoltaics)や、風力や地熱などの他の再生可能エネルギー源と水力を組み合わせたハイブリッド発電など、水力が重要な役割を担う新しいテクノロジーが生まれています。

世界規模の水力発電事業者がビジネス課題に取り組む上で、重要な2つの領域が存在することが分かっています。1つは改善の需要が高い領域で、データと情報を活用してO&M(運用および保守)のパフォーマンスを改善する必要がある、いわゆる古典的な領域になります。この領域では分散型発電所などの労働力および設備における生産性向上を中心とした戦略を展開し、より合理化された安全な設備保全プロセスを推進します。

ビッグデータ、アナリティクスでさらなる効率化・収益性向上

そしてもう1つは、革新すべき領域です。水力発電事業では、より変革に満ちた開発、すなわち水力発電事業のデジタル化とビッグデータ、アナリティクスを実装することへの需要が高まりつつあります。アクセンチュアはある水力発電企業と緊密に連携して、発電所のパフォーマンスやO&Mのアクティビティ、企業内外におけるエネルギー管理システムなどのデータを幅広く収集し、それらを分析するためのまったく新しいデータ駆動型のケイパビリティを構築しています。発生したイベントやアラートだけでなく、水位、取水量および流量、タービンと振動、電力や温度など、複数のシグナルから生じるデータをつなげることによって、ビッグデータアナリティクスソリューションは、これまでにないインサイトと電力制御の創出に大きな効果を発揮します。
すべての情報をクラウドベースのデータレイクに集約することで、さらなる効率化や収益性の向上などの新たな価値を生み出し、エネルギーミックスにおける水力発電技術の進化を促進することができます。
データの視覚化と強力かつ高度なアナリティクスを実装することで、運用および商業部門に新しいリアルタイムモニタリングと管理機能を提供できるようになります。これらの機能はエンドツーエンドの可視性と制御能力の向上をもたらすため、運用の効率化やコスト削減、生産の最適化などによって回収可能利益が増え、企業は複数の主要な事業分野をまたがる複合利益を得ることができます。また、予知保全機能では、従業員の生産性向上と、生産性の低下を招く障害や電力の供給停止の発生機会を減らすことができます。リアルタイム分析では、運用および商業部門の意思決定を強化と潜在的な危険の正確な予測が可能になり、現場のアジリティと従業員の安全性が向上します。

これらの新しいケイパビリティは企業の収益に良好な影響をもたらします。
効率化に伴い利益は0.5~1%増加する一方で、生産性損失を5~15%、保守費を2~5%、それぞれ抑えられることが分かっています。
水力発電事業者が実際に利益を得るためにはどのような行動を取るべきでしょうか? デジタルテクノロジーが現実的な価値をもたらすことは確実です。しかし、ただテクノロジーを導入するだけでは十分ではなく、個々の事業の具体的な背景と運用状況に基づく詳細なビジネスケースの実装が必要不可欠です。企業はデジタル化を急ぐ前に、必要な要件と新たなビジネスのユーザーエクスペリエンスについて慎重に検討することが重要になります。水力発電事業者は、この最初のステップに丁寧に取り組み価値あるデジタル化を実現することで、莫大な利益を獲得できるでしょう。

クリスチャン・コルベッティ

アクセンチュア
素材・エネルギー本部
マネジング・ディレクター


山崎 智

アクセンチュア株式会社
素材・エネルギー本部
マネジング・ディレクター

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