変化の激しいデジタル変革期において、企業が生き残っていくためには、自社のデジタルトランスフォーメーションを支えることのできるIT基盤が必要であり、そのためには、「守りのIT」と言われる社内の業務効率化、コスト削減に目を向けるだけでなく、IoT、AI(人工知能)といったデジタル技術の活用を推進する「攻めのIT」により注力していくことが急務であります。しかしながら、日本企業では、基幹システムのレガシーシステム化(老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステム)の問題が深刻化しており、経済産業省が2018年9月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)レポート」によると、約7割の企業が、レガシーシステムがデジタルトランスフォーメーションの足かせとなっていると回答しています。

企業が保有しているレガシーシステムをいかに戦略的にモダナイゼーションすべきか、その勘所を事例を用いてご紹介します。

デジタル時代のメインフレーム

現在、企業が運用保守をしているレガシーシステムの大部分はメインフレームにあります。レガシーシステムをいかにモダナイゼーションするかは、今後、デジタルネイティブ世代が運用を担うシステムはどうあるべきか、システムをどう進化させるか、という話ともイコールです。

近年のITを強力に牽引したSMAC(Social、Mobile、Analytics、Cloud)に加え、数年以内にDARQ(Distributed Ledgers(分散型台帳技術)、Artificial Intelligence (人工知能)、Extended Reality(拡張現実)、Quantum Computing(量子コンピューティング))の利用が本格的に普及します。メインフレームは役目を終え、徐々に姿を消していくでしょう。しかし、経済産業省が2018年9月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)レポート」で指摘されている「2025年の崖」(レガシーシステムが企業の競争力を低下させ、新しいテクノロジーを活用できる企業とそうでない企業の差が決定的となる問題)にもある通り、崖からの転落を防ぐには数百億円規模の投資が必要となります。

費用の問題だけでなく、多くの企業で2025年の崖を飛び越える準備が整っていません。問題点は2つあります。

  1. 経営者の視点:現在安定稼働しているので、既存システムをこのまま維持すればよいのではないか。
  2. 情報システム部門の視点:デジタル時代の技術は流行り廃りが早い。そのような環境に基幹システムを任せることはできない。

たしかに基幹業務系のアプリケーションは、インフラのライフサイクルを念頭に置いて設計する必要があります。全体最適を実現するには、堅牢な基盤の構築とデジタル化とを両輪で考えることが重要だと考えます。

SMAC and DARQ
エンタープライズデータの80%はメインフレームにある

それでは2025年までにメインフレームは自然消滅するのかというと、そうではありません。世界的な統計でみると、メインフレームは当面は現役であることが分かります。

  • 世界の上位10社の保険会社のITシステムは、10社中10社ともメイフレームで運用されている
  • 世界のトップ100の銀行の92%がメインフレームを使っている
  • 航空会社でもメインフレームの利用は一般的である
  • エンタープライズデータの80%はメインフレームにある
  • メインフレームで最も多いアプリケーションはCOBOLで実装されており、220億行のCOBOLが全トランザクションの70%を実行している

メインフレームはこれまで、スリーナイン(99.9%)やファイブナイン(99.999%)という可用性や高度なセキュリティを実現してきました。ITエンジニアにとっても、数十年にわたって自社の業務を支えてきた誇りもあるでしょう。メインフレームは今なお、実質的にグローバル企業の基盤であり続けています。

CDOがDXを先導する

メインフレームに掛かるコストが大きすぎて企業のデジタル投資が進まず、日本企業の国際競争力を抑えているという危機感は、多くの経営者に共通するものと思われます。だからこそ、ここで守りから攻めへ転じることが重要なのです。企業のデジタル化とデータ活用を担う“CDO(チーフ・デジタル・データ・オフィサー)”の役職がユーザー企業に定着し、CDOが自社のDXを先導する時代が到来するでしょう。

日本企業のメインフレームには、システム・オブ・レコード(SOR)としてのデータが膨大に蓄積されているのが特徴です。終身雇用ベースのITエンジニアがコツコツと仕事をし、現場業務部門の要望に応えながら数十年をかけて作ってきたシステムのマイグレーションは一朝一夕ではできません。

マイグレーション手法は複数ありますが、いずれの場合でも3~5年を必要とする巨大プロジェクトとなります。現行システムの内容と業務を理解し、確実なDXのプランを描くことが重要なのです。

時代の波を乗り越えてきたレガシーシステム

しかし、なぜレガシーシステムが今日まで残ってしまったのでしょうか。これまで日本企業のITシステムが直面した大きな波は2つあります。

第1の波:日付データを2ケタから4ケタへ改修するために莫大なコストを要した「2000年(Y2K)問題」

第2の波:メインフレームで構築したシステムを熟知している団塊の世代の大量退職により人材が現場から去る「2007年問題」

現存するレガシーシステムは、大規模改修でY2K問題を乗り越え、ノウハウの継承を経て2007年問題もくぐりぬけたものばかりですが、マイグレーションの難易度があまりにも高いため、過去に移行を断念してきたシステムが大部分です。そうした最高難度のシステムだけが現存しているのが現実です。この3月に、アクセンチュアではレガシーシステムを刷新するための体制を強化しました。デジタルへの投資とレガシーシステムのマイグレーション、これらを両輪で進められる体制をアクセンチュアではご用意しています。

●アクセンチュアが強化しているレガシーシステムのマイグレーション体制の一例
  • レガシーシステムに関する人材や知的財産を持つ30以上の企業と協業体制を構築
  • 20年以上にわたって蓄積してきた脱レガシーシステムの知見を整備
  • COBOLや他の下位言語を含む20以上の言語に対応できる人材を参集
●直近の事例
  • 内容
    ある大手企業グループ内に残っていた最後のメインフレームの解体(同社内の他の基幹システムはすべてオープン系へ移行し、Javaで開発されている)
  • アプローチ
    言語:維持管理するメンバーの負担増を回避するためCOBOL to COBOLは避け、すべてJavaで書き直す。ただし“COBOLのようなJava”で記述することはせず、保守メンテがしやすい記述の仕方で統一
    インフラ:オープン系インフラと統合。一部の作業をアクセンチュアの大連デリバリー・センターにアウトソーシング
Java trend

並行して、アクセンチュアが特に力を入れているのがエコシステムの形成です。

もはや特定の一社だけでは、レガシーシステムの移行は荷が重すぎる時代です。各社の得意領域を組み合わせなければ、時代の大波を耐え抜いたレガシーシステムをマイグレーションすることはできません。IBMやTISとはリフト&シフトの三社協議を進めているほか、HPとはVirtualized NonStopに取り組んでいますし、AWS上のCOBOLで話題を集めたBlu Ageとも協業関係にあります。

アクセンチュアはレガシーシステムのデジタル化のための知見を日々蓄積しつつ、パートナー企業とのエコシステム形成に取り組んでいます。レガシーシステムのマイグレーションはぜひアクセンチュアにご相談ください。

お問い合わせは、下記リンク先のフォームよりご連絡ください。

お問い合わせ

中野 恭秀

テクノロジーコンサルティング本部 アソシエイト・ディレクター

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