2019年4月23日、アクセンチュアとアマゾン ウェブサービス ジャパン(以下、AWS)の共催によるイベント『デジタル化を進める製造業の挑戦と未来展望』が開催されました。

本記事では、イベント後半の模様をご紹介します。(前編の記事はこちら

AWSの技術本部長が紹介する、Amazonの強みの源泉と事例

アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
技術統括本部
本部長
岡嵜 禎氏

イベントの後半では、アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社の岡嵜 禎氏(技術統括本部 本部長)が『製造業の成長を支えるAWSクラウドの役割とは 〜IoT、機械学習、そしてAI〜』と題して講演を行いました。

「AmazonはGAFAの1角をなす大企業だと認識されていますが、なぜビジネスをスピーディに展開できるのか。それは小規模チームの集合体だからです。各チームが有機的に連携し、巨大な組織体を構成しています。組織だけでなくシステムも同様です。だからこそ巨大企業でありながら、スタートアップ企業のような俊敏性を失わずにイノベーションを起こし続けられるのです」(岡嵜氏)

Amazonが徹底している「ピザ2枚ルール」は非常に明確なルールでありながら、生産性を非常に高める手法として知られています。それは会議だけでなく、倉庫業務や開発業務などでも同様に適用されています。つまりマイクロサービスのようなチーム構成が行われ、常に業務課題についてスピーディに議論し、改善が行われているということになります。

「小規模チームがある程度のケイパビリティを持つと同時に、セルフサービスプラットフォームという考え方で開発の人月を減らしています」と岡嵜氏は説明します。

Amazonのイノベーションを支える仕組み

「事業変革を実行するときには、クラウドを活用することで『まずは試してみる』ことが容易になり、グローバル規模でのスケールも可能となります。加えて、IoT、機械学習、ブロックチェーンなどのテクノロジーがサービスとして常時利用できることもAWSを利用するメリットです。AWSは、お客様の声に常に耳を傾け、必要なサービスを提供しています。」(岡嵜氏)

もちろん、製造業の方からも多くのフィードバックを頂き、その結果がサービスに反映され、お客様は、AWSを活用してファクトリーオートメーションやビッグデータの分析による課題発見・解決アプローチの発見などを行ってていると岡嵜氏は強調します。

岡嵜氏は国内外の具体的な事例を交えながら紹介し、「インダストリアルクラウド」のケースではフォルクスワーゲンの事例を解説しました。

「フォルクスワーゲン様の世界122箇所の工場のネットワークがクラウドで一元化されました。全世界の工場データをリアルタイムに収集して可視化、活用していく取り組みが進んでおり、収集されたデータは、3万箇所に及ぶ同社のサプライヤーの拠点でも活用されます」(岡嵜氏)

最後に岡嵜氏は来場者へ、次のようなメッセージで講演を結びました。

「テクノロジーは適用して終わりではありません。新しいものを継続的に取り入れながら改善し続けるマインドを持っていただければと思います。」(岡嵜氏)

エッジ領域のインテリジェント化が必要

ゲームチェンジャーの登場は予測不可能。これからのものづくり企業の生存戦略とは

ダイキン工業株式会社
執行役員 空調商品開発担当
テクノロジー・イノベーションセンター長
米田裕二氏

イベントの最後のコンテンツにあたるパネルディスカッションに先立ち、ゲストスピーチとして、ダイキン工業株式会社の米田裕二氏(執行役員 空調商品開発担当 テクノロジー・イノベーションセンター長)が登壇しました。

ダイキン工業は空調と化学事業を併せ持つ世界唯一の企業であると同時に、海外での売上比率が80%を超えているグローバルカンパニーです。ダイキン工業においてもデジタル時代にどう戦い、生き抜いていくかが喫緊の課題であると米田氏は語ります。

「デジタルの時代は産業構造が従来と違います。ライバル企業が予想外の方向から、突然に現れます。業界内の同業他社の動向は読むことができますが、創造的破壊やゲームチェンジを起こすようなプレイヤーの登場を予知することは困難です」(米田氏)

デジタル化の時代ではビジネスモデルを考え、必要な商材を整え、次に研究開発をするといったことが同時並行で進みます。従来のものづくり企業が取ってきたプロセスでは、もはや生き残れない時代だと米田氏は説明します。

デジタル革命の時代

ダイキン工業の目標は、品質の良い空気のプロバイダー。これからは「Air as a Service」にビジネスチャンスがあると見ています。米田氏は空調を基盤としつつ、技術をモットーにAI活用などによって事業領域を拡大していくと今後の展望を話ました。そのポイントは3つです。

  1. ものづくりで圧倒的な差別化を行う
  2. エネルギーソリューションなどを含めて、省電・節電の効率をさらに高める
  3. 空間データを含めて、新たなビジネスモデルの構築を目指す

ダイキン工業ではオフィス空間のデータを集約するプラットフォームを構築し、データをパートナー企業間で利用できる環境を整備しています。

「中心にいるのは人です。価値は人に関する情報や環境のセンシング、空間デザインといったものへと移っていくでしょう。インテリジェント化された空間における空調機のあり方を模索することで、ものづくり企業として製品開発・製造に軸足を置きつつ、デジタル化への対応を模索しています」(米田氏)

このように、ダイキン工業ではイノベーションを創出するための取り組みを全社的に進めている様子が紹介されました。

空気・空間のデータを活用した協創プラットフォーム

イノベーション実現のモデルに必要なのは「オーナーシップ」

左から
アクセンチュア株式会社
デジタルコンサルティング本部
インダストリーX.0 日本統括
マネジング・ディレクター
河野 真一郎(モデレーター)

ダイキン工業株式会社
執行役員 空調商品開発担当
テクノロジー・イノベーションセンター長
米田 裕二氏(パネリスト)

アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
技術統括本部 本部長
岡嵜 禎氏(パネリスト)

イベントの最後を飾るのは登壇者によるパネルディスカッションです。『真のデジタルトランスフォーメーション成功へ、今取り組むべきこと』をテーマとして、AWS岡嵜氏、ダイキン工業 米田氏をパネリストに迎え、アクセンチュア 河野がモデレーターを務めました。

河野はまず、パネリストの各講演内容を総括しつつ、今後、各企業のパートナーシップによるエコシステム形成は、どのようなビジョンのもとに進めていくべきかについてパネリストに意見を求めました。

米田氏は「エコシステムを呼びかけると、賛同いただけるパートナーが多いことに驚きました」と振り返り、はじめに取り組みをアピールするアドバルーンを揚げたことで、多様な企業から反響があったことから、想定以上の企業が集まったことを強調しました。「やはり各社とも共通の困りごとや課題があり、協力関係を強化したいと考えているように思います」(米田氏)

岡嵜氏はエコシステム形成のうえでの課題として、一方ではまだまだ「自社にそういうカルチャーや風土がない」ということを上げる企業が多いと指摘します。また、「デジタル化への抵抗勢力が企業内には多く潜んでいることと、トランスフォーメーション実現のための人材不足を挙げる企業も多いです」と語りました。

さらにエンタープライズとスタートアップとの協業について話が及ぶと、岡嵜氏は「機械学習など先端分野を手がけるスタートアップの若いエンジニアに、ダイキン工業さんのデータを見せたら面白さを感じて、新しいアイデアや提案を持ってきてくれるようなケースが増えるのではないか」と語りました。「従来型ではないコラボレーションで、新しい融合のモデルを構築できたら良いのではないかと思います」(岡嵜氏)

米田氏は、社内の抵抗勢力とどう折り合いをつけるかについて、「どのような社外組織をパートナーとして協業するかがポイントだと思います。各業界のトッププレイヤー企業とのコラボについて反対者はまずいません。そうした協業相手と取り組みを進めてしまうことで、『そこまで進んでいるならば応援するしかない』というムードを醸成します」と話します。

デジタルトランスフォーメーションの実施に抵抗勢力はつきものであると河野は説明しつつ、そうした方々を良い方向へ巻き込んでいくためにも、協業などで既成事実を作ることの有効性について語られました。

人材不足について話題が進むと、岡嵜氏は「デジタル化に着手しやすい領域と、そうでない領域があります。事業とテクノロジーを結びつける実際的なサービスを企画することで、それを面白いと感じる人材が自然と集まることが理想ではないか」と意見を述べつつ、「重要なことはオーナーシップ。デジタル化の推進でも、エコシステム形成でも、自社内でたしかなオーナーシップを発揮することが不可欠だと考えています」と説明しました。

ダイキン工業での状況として米田氏は次のように話します。「ダイキン工業内でもデジタル化の即戦力はいませんでした。そこで大学の力を借りて、機械系を卒業した新入社員に対して、情報系のテクノロジーやトレンドを教える取り組みをしています。社内データを使って現場で実装するトレーニングを重ねたことで、徐々にハイレベルなデータ分析が可能になってきました」(米田氏)

河野は、岡嵜氏が講演で語った「ピザ2枚ルール」を振り返り、「本質的に重要なことは主体性と自律性を持たせ、それを保つことです。経営幹部はアドバイスするにとどまり、イノベーション実現のためのオーナーシップは各チームが持つ。ビジネス変革は未来を最適化することでもありますので、経営層がビジョンを現場メンバーへ適切に説明することが肝要かと思います」と語りました。

これについて米田氏、岡嵜氏も同意し、河野は製造業においては製品と戦略がセットであること、スモールスタートでありながら、ときに耐え、ときに焦らず、グローバルビジネスとして世界市場を的確に捉えて取り組むことが重要であるとまとめました。

イノベーション創出とコア事業のクラウド化を支援するAABG

アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
パートナーアライアンス統括本部長
渡邉 宗行氏

クロージングに登壇したアマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社の渡邉宗行氏(パートナーアライアンス統括本部長)は、AWSとアクセンチュアが2015年以降、ビジネスの上流からITインフラまでを総合的に網羅する、お客様の課題解決のためのビジネスグループとしてAABGが発足して協業していることを解説しました。

「実は日本で最初にAWSをご利用いただいたお客様は小規模スタートアップのお客様でした。クラウドのメリットを理解されており、クラウド活用を必然のものとし考えていたみなさまです。次がゲーム会社のお客様。ゲームがヒットすると凄まじい量のサーバーが必要となりますが、ブレイクしないと過剰投資になってしまいます。従量課金のクラウドはまさに打って付けだったのです」(渡邉氏)

その後のクラウドの急成長は、広く知られている通りです。クラウドに預ける方がよりセキュアであることや、事業継続性の観点でも優位なことが知られるようになり、今日ではコスト削減だけでなく、クイックな展開やグローバル対応の俊敏性、最新テクノロジーのメリットを享受しやすくなるといった利点も認知されています。

結果的にエンタープライズ企業でのクラウド利用は、今日も拡大の一途をたどっているのです

渡邉氏は「デジタル化とイノベーションの話において重要なことは、それがユーザーエクスペリエンスを向上させる点にあります。新事業でクラウドを活用することと並行して、既存のコア事業もクラウドを検討する時代に入りました」と強調しつつ、最後に来場者へ向けて次のように締めくくりました。

「漠然としたクラウドへの不安や懸念の払拭のため、AABGはお客様へのご支援を丁寧に進めてまいります」(渡邉氏)

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