2019年4月23日、アクセンチュアとアマゾン ウェブサービス ジャパン(以下、AWS)の共催によるイベント『デジタル化を進める製造業の挑戦と未来展望』が開催されました。

会場となったAWS 目黒オフィスにあるセミナールームを埋めた来場者は約100人。製造業のお客様を中心に、「今後の産業界全体がデジタル化によってどのように変化していくのか」についての関心が高い経営者やCxOクラスの方々、IT・経営企画部門の皆様が集いました。製造業の企業はどのように自社の未来を切り開いていくべきか、そのヒントを掴もうと、熱気のあるイベントとなりました。

本記事では、イベントの模様を前後編の2回に分けてお届けします。

DX実現の2つの壁と、成功にむけた3つポイント

アクセンチュア株式会社
テクノロジーコンサルティング本部
インテリジェントクラウド アンド インフラストラクチャー グループ
マネジング・ディレクター
西村 雅史

開幕の挨拶に立ったアクセンチュア株式会社の西村 雅史(テクノロジーコンサルティング本部 インテリジェントクラウド アンド インフラストラクチャー グループ マネジング・ディレクター)は、「デジタルフォーメーション(DX)やデジタル化の実現といったことが、お客様のメインストリームになってきていることを肌で感じます」と現在の企業を取り巻く状況ついて触れました。
西村は、DXを実現するうえで、主な障壁は2つあると説明しています。

  1. マネタイズの壁
    新しい事業構想の設計やPoC(Proof of Concept:概念実証)が行われても、後に続く工程で事業化やマネタイズの壁にぶつかります。
  2. デジタルケイパビリティ育成の遅れ
    日本企業の多くにおいて、デジタルに関する知見やノウハウ、実績・人材が不足しています。この課題には、①デジタルが与えるインパクトへの認識が不足している場合、②既存ビジネス優勢の意識が強く、デジタルビジネスの並立・共存・転換がうまくいっていない場合などのケースがあります。

一方で、日本国内で成功例も着実に増えています。西村は「DX成功のポイント」は3つあると語ります。

  1. コスト削減よりも、創出されるビジネス成果(アウトカム)にフォーカスする
  2. 投資するだけでなく、オペレーティングモデルも再構築する
  3. エコシステムパートナーと連携する

自社のビジネスをデジタル化することで、どのような成果を創出したいのか、その「目的」にフォーカスすること。2点目は、ビジネスの現場からマネジメント層までのオペレーションを再構築し、全社レベルで最適化すること。3点目は、それらを実現しつつデジタル人材を獲得していく。これら3つのポイントを獲得することにより組織にデジタルのケイパビリティを実装することが可能となります。特に「デジタル人材をいかに獲得するか」は喫緊の課題だといえるでしょう。

デジタルの時代においては、1社だけで消費者や生活者に満足いくサービスを提供しきることは困難です。他社と相互補完するエコシステムパートナー関係を構築し、チューニングしながら最適なリレーションを組成している例が成功事例には多く見られると西村は説明しました。

クラウドが加速する2つの変革。ITとデジタルの近未来

アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社
アライアンス統括本部
第一ストラテジックパートナー本部
本部長
相田 哲也氏

アクセンチュア株式会社
テクノロジーコンサルティング本部
シニア・マネジャー 兼
AABG(Accenture AWS Business Group)Japan Go-to-Market Lead
関 良太

続いての講演では、アマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社の相田 哲也氏(アライアンス統括本部 第一ストラテジックパートナー本部 本部長)と、アクセンチュア株式会社の関 良太(テクノロジーコンサルティング本部 シニア・マネジャー 兼 AABG(Accenture AWS Business Group)Japan Go-to-Market Lead)が登壇し、「AABG(アクセンチュアAWSビジネスグループ)」の取り組みについて説明しました。

アクセンチュアとAWSは、お客様のDX実現とイノベーション創出をより高度に支援すべく、AABGという事業体(ビジネスグループ)を2015年末に立ち上げました。Security強化やSAP導入、マイクロソフトのサービスに特化したワークロードなどを共同開発するとともに、AIやクラウドのフル活用、高度なセキュリティなどのサービスをお客様に届けることをミッションとして掲げている組織です。

「クラウドには、変革を加速させる2つのエンジンとしての役割があります。1つはITトランスフォーメーションを推進するツールとして、もう1つはDXを実現させるツールとしてです。それらを両輪として、AWSは多くのお客様に積極的に活用いただいています」と相田氏は現況を説明します。

続いて、関がエンタープライズ企業における「ワイズピボット(賢明なピボット=事業転換)」とクラウドの関係性について紹介しました。

「大企業のお客様がDXを実現していく上では、事業転換の舵取りが非常に難しいテーマです。自社の有する既存の中核事業を効率化・強化しながら、数多くのトライ&エラーから新規事業を創出し拡大させながら事業転換を図る。そのために必要なアクションが4つのアプローチを組み合わせることによる事業転換と考えます。AABGはクラウドの活用によってお客様の包括的な変革プログラムをご支援しています」(関)

デジタル時代のコラボレーションを促進する「意思疎通」の方法とは

アクセンチュア株式会社
デジタルコンサルティング本部
インダストリーX.0 日本統括
マネジング・ディレクター
河野 真一郎

続いて、『インダストリーX.0が変える製造業の未来と日本の挑戦』と題し、アクセンチュアの河野 真一郎(デジタルコンサルティング本部 インダストリーX.0 日本統括 マネジング・ディレクター)が講演を行いました。

河野の講演については2018年11月に大阪で開催された講演(記事はこちら)でインダストリーX.0についての基本をご紹介しましたので、本記事ではアップデート部分を中心にレポートします。河野は今回、2019年4月に開催されたハノーバー・メッセで受けた印象とインダストリーX.0の最新状況を解説しました。

「インダストリーX.0の時代では、製造業の企業においてはプロダクトだけでなく、新しいサービスや顧客体験を包含する提案を消費者へ届けることが必要です。それはいわば、スマートコネクテッド・プロダクトの発明、あるいは消費者・生活者との協働によるプロダクトの創出、製品からサービスへの変換による新ビジネスモデルの構築とも言い換えることができます」(河野)

2019年のハノーバー・メッセ(ドイツで開催された世界最大級の産業見本市)における主要なテーマは「インテグレーテッド・インダストリー」や「インダストリアル・インテリジェンス」でした。展示企業においても「他社とパートナーを組んでエコシステムを形成する」といった考え方が、もはやビジネスの前提となっていることを感じたと河野は説明します。

一例として、Keurig(キューリグ)が発表したカクテルマシンを紹介しました。このプロダクトはKeurigと、酒類メーカー大手のAnheuser-Busch InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)によるジョイントベンチャーのDrinkworks(ドリンクワークス)が発売した、ユーザーが自宅で本格的なカクテルを楽しめるマシンです。

「実はアクセンチュアが筐体のプロダクトデザインやソフトウェアの設計、IoTの組み込みなどからデジタルマーケティング、PR動画作成などまで幅広く担当しつつ、お客様との協働で作りあげました。以前よりKeurigは新しいハードウェアを開発したいと考えていましたが、何から手をつけたらよいのか考えあぐねていました。そこにコンサルティングとしてアクセンチュアが参画しました。同時に、飲料すなわち“容積を減らすことが物理的に不可能な商品”のイノベーションを模索していたAB InBevには、“飲料をデジタル化する”という発想を提案しました」(河野)

飲料のデジタル化とはどういうことなのか、河野は次のように解説します。酒類商品で最も付加価値が高いのはリカーや香料、フルーツの果汁などです。一方、水や炭酸水はコモディティであり、物流コストのかかる素材です。水や炭酸水がすでに消費者の自宅にあり、高付加価値の材料のみを小袋状の「ポッド」で提供すれば、自社商品のコア部分だけを低い物流コストで提供できます。Keurigのカクテルマシンは、このようなイノベーティブな発想で作られた商品なのです。

ハードウェアや機能がそのまま商品の訴求力となり、利益の源泉となった時代は、はるか過去のものとなりました。2020年以降はAIやアナリティクス、その他の新テクノロジーが利益の源泉の70%以上を占める時代となります。

しかし、多様なケイパビリティの人材が集まれば集まるほど、メンバーが使う言語やプロトコルが複雑になり、意思疎通が困難になるバベルの塔のような現象が起こります。適切な共通言語を模索し、ときに通訳を担当することが、デジタル時代においてはアクセンチュアのような組織に求められていることなのです。

後編では、製造業を支えるAWSの役割、そしてゲストのダイキン工業の米田裕二氏によるスピーチとパネルディスカッションのもようを紹介します。

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