アクセンチュア・ストラテジー 調査レポート

レポートの概要

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  • これまで「信頼」という要素は、企業が抱えるさまざまな課題の中でさほど重視されることはなく、ビジネスにおいてどれほどの価値と影響力を持っているのかは解明されてきませんでした。
  • 企業が信頼を損なう不祥事が増加し、消費者の関心が高まるにつれて、企業にとって社会的な信頼の構築と維持は避けて通ることのできない課題となっています。
  • アクセンチュア・ストラテジーの「コンペティティブ・アジリティ・インデックス」という新しい測定指標を用いることで、「信頼」が企業の利益に与える影響力を定量化し評価することができます。
  • 企業が真の競争力を持つためには、信頼の構築と維持を事業戦略の重要課題として認識する必要があります。


食品汚染や個人情報の流出、サイバーセキュリティ侵害など、企業の信頼を揺るがす事例が次々と報告されており、消費者は企業の信頼に関わる取り組みを厳しく評価しています。デジタル化が進み透明性が増す現代社会では、企業の信頼低下はいつでも起こり得る身近で重大なリスクです。

しかし日本企業の多くは、依然として「信頼」を直接的な価値を生まない無形の要素のように捉えています。企業イメージの付加価値的なものとしては理解しているものの、ビジネスへの直接的な価値や影響力は明確にされてきませんでした。今回、アクセンチュア・ストラテジーはコンペティティブ・アジリティ・インデックスを用いた最新調査を実施し、「信頼」が企業の収益に及ぼす影響を測定しました。調査結果からは、多くの企業が信頼問題に直面している現実と、「信頼」は業績に直結する有形の要素であるという事実が明らかになりました。

この調査結果レポートが示すように、企業活動の透明性が重視される現代社会において、信頼の維持・向上は企業の競争力を確保するために必要不可欠な要素と言えます。国内のみならずグローバルで活躍する日本企業においても、事業の成長と収益性、持続可能性と信頼のバランスを保った経営戦略の立案・実行が、中長期的な企業価値の向上にとってますます重要になっています。

海老原 城一

戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター

透明性が求められる現代では、多くの事業活動と同様に信頼を構築するための手法が重要視され始めています。企業においても、企業の明確な意志のもとで、信頼を構築し適切に持続できる文化を確立し、企業のDNAとして戦略や日常業務に確実に定着させるための取り組みが求められています。

収益へのリスク

アクセンチュア・ストラテジーが提唱する、このインデックスは、「信頼」が企業の収益に及ぼす影響を数値化しています。7,000社を超える企業を対象に、企業の競争力として相互に関連する「成長力」「利益率」「サステナビリティと信頼」の3項目について、スコアリングし評価しました。2018年の分析では、対象企業の半数以上(54%)が、過去2年半のいずれかの時点で、信頼を損なう深刻な事態に直面していたことが明らかになりました。さらに、信頼低下を経験した企業のインデックス数値は平均で2ポイント低下していることもわかりました。このインデックスのスコアが1ポイント低下するごとに、企業の収益は大幅に落ち込む危険性があります。

信頼低下を経験したすべての企業の合計損失は、少なくとも1,800億ドルに相当します。

深刻な信頼低下に直面した年商300億ドルの米国小売企業では、将来的に40億ドルの収益を失う可能性があります。 特に日本企業は、グローバル企業に比べて、インデックス数値が、旅行・運輸業では6.4ポイント、消費財およびサービス業では3.5ポイント、製造業では1.9ポイント低いことが明らかになっており、これらの業種の競争力の低下が懸念されます。

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アクセンチュア・ストラテジーでは「信頼」を「コンピテンス、誠実さ、正直さ、透明性、コミットメント、目的、親しみやすさの一貫した体験」と定義しています。信頼問題はあらゆる活動や状況下で起こり得るものであり、企業に信頼の低下と実際的な損失をもたらします。このインデックスでは消費者、従業員、サプライヤー、メディア、アナリスト、投資家という6つのステークホルダー・グループの視点から、これらの状況についてスコアリングし測定していきます。

しかし今日では、消費者は非常に多くの選択肢を持ち、その中から企業を選ぶ基準として、「自分の価値観に合致しているか」を重視しています。

また、就職活動では会社の評判や活動がますます重視されており、企業が優秀な人材を獲得するためにも従業員の信頼を獲得することが不可欠です。従業員は「自分の価値観に合った具体的で日常的な活動」を企業に期待する傾向がこれまで以上に強くなっています。

さらに、現在のビジネスバリューチェーンのカギを握るサプライヤーなどのパートナーと良好な信頼関係を構築することができれば、より柔軟性のあるイノベーションサイクルの加速が実現します。

「信頼」は大衆の意見によっても左右されます。企業に影響を及ぼすような意見が、さまざまなメディアを通じてリアルタイムで展開されます。

アナリストや投資家も、業績だけではなく環境への取り組みや社会貢献など、企業のあらゆる活動における「信頼」を注視しています。

ビジネスにおける信頼:利益に及ぼすインパクト

「信頼」が重要な要素であることは明らかです。「重要」の意味を「企業価値として認識されるあらゆる要素に影響する可能性を持つ」と定義すると、今や「信頼」はその最たるものと言えます。2017年に、調査対象の15業種のうち10業種で信頼低下が見られ、各企業は信頼の回復に向けて早急に体制を整える必要があることを示しています。

信頼低下を経験した企業と経験しなかった企業を比較してみるとある傾向が見つかりました。信頼低下を経験した企業は、そうでない企業に比べて、インデックスのスコアが著しく低下していたのです。企業の総合スコアでは、ごく一部の割合を占めるだけだった「信頼」の要素が、収益とEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)に大きな影響を与えていることがわかりました。

Competitive agility index graph: 33% Growth, 33% Sustainability & Trust, 33% Profitability

平均数値は業界ごとに異なるものの、信頼が低下した際には、すべての業界で収益、EBITDAともに大幅な低下が見られました。以下は業界別の傾向です。

利益を守る

企業がどれだけ努力したとしても、信頼問題の発生を完全に防ぐことは不可能です。しかし、「成長力」「利益率」「サステナビリティと信頼」のそれぞれにバランスの取れた戦略を立てることで、問題発生の機会を減らし、万一問題が生じた際にも影響を最小限にとどめることができます。

立ち位置を知る 企業が自らの立ち位置を知る唯一の方法は、「信頼」を評価することであり、そこにサイエンスを取り入れることです。

信頼を企業文化の基盤に組み込む 企業の経営陣は「信頼」をビジネス戦略の中核要素とし、社内のあらゆる階層における、すべてのチームが戦略に沿って有言実行していかなければなりません

戦略全体で信頼が果たす役割を高める 信頼をどれほど損なうかを検討することなく、コストの削減や利益率の改善を主要な戦略として選択する企業は少なくないでしょう。しかし中長期的に考えれば、企業は成長につながるあらゆるステークホルダーとの確固たる信頼関係を築く必要があります。

「信頼」は企業において最も重要な要素です。戦略の一部であり、その他の要素と相互に関連して企業の利益や競争力に重大な影響を及ぼします。信頼に関わる不祥事が起きて法的トラブルに発展した場合に、企業が被るリスクについて正しく把握しておくことは、企業にとって新たな常識になりつつあります。

「信頼」は利益と本質的に結び付いている要素です。企業が真の競争力を獲得するためには、「信頼」が戦略のインプット、アウトプット両方における重要な要素であることを十分に認識する必要があります。

「信頼」が企業利益に及ぼす影響についての詳細はレポート全文をご覧ください。

ジェシカ・ロング

アクセンチュア・ストラテジー サステナビリティ担当マネジング・ディレクター

クリス・ロアーク

アクセンチュア・ストラテジー マネジング・ディレクター

ビル・テオフィル

アクセンチュア・ストラテジー シニア・マネジング・ディレクター

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基本情報

信頼に関わる問題が企業の競争力の主要な評価指標に与えるマイナスの影響を数値化する手法について

所要時間:15分

企業における「信頼」の価値

競争に打ち勝つ俊敏性を獲得する

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