調査レポート

概略

概略

  • リテール企業が生き残るためには、まったく新しいオペレーティングモデルの策定や経営幹部の役割の見直しを通じて、現在の業務運営のあり方を強化しなければなりません。
  • リテール企業が単に製品を販売するだけの従来の手法から脱却し、製品をサービスや体験と組み合わせて販売する新たなモデルへの変革を遂げるためには、目的主導型(Purpose-Led)のオペレーティングモデルの策定が不可欠です。
  • リテール企業はチャネルに依存しないシームレスなアプローチを効果的に活用することで、製品、サービス、体験を個々の市場に合わせて微調整しながら提供できるようになります。
  • リテール企業は今こそ、データとの関係性を見直す必要があります。利益や製品ではなく、データこそが真の競争優位性をもたらすからです。


さまざまな変化やディスラプションの波にさらされているにもかかわらず、リテール業界は今なお、50年前のオペレーティングモデルに固執し続けています。言うまでもなく、これは大きな弱点となります。業界のルールを塗り替える革新的な企業は、まったく新しいオペレーティングモデルを基盤とした斬新なビジネスモデルによって、新たな分野を開拓しています。既存のモデルから脱却することのできない企業は、彼らに追いつくことすらできず、スピーディな対策が講じられないがために、市場からの撤退を余儀なくされる例もあります。

リテール企業に今必要なものは、業界の現実にマッチした新たなオペレーティングモデルです。目的主導型、かつデータドリブンで、市場にフォーカスしながら顧客ニーズに即応して、事業効率を改善できるオペレーティングモデルが求められています。そのためにも経営幹部の役割の見直しが必要であり、損益計算書をこれまでとは違った手法で管理すると同時に、デジタルとアナリティクスを業務に組み込むことが不可欠となります。リテール企業は今すぐにでも必要な対策を講じなければ、すでに忘れ去られた市場から退場した企業の二の舞を演じることになりかねません。

2011~2018年の間で、リテール業界におけるディスラプションの発生率は37%増加しています。これはアクセンチュアの「ディスラプタビリティ・インデックス」においても、すべての業界の中で2番目に高い増加率です。

事業目的は「新製品」として機能する

アクセンチュア・ストラテジーの調査では、今や消費者を購入者に転換するのは製品ではなく、「事業目的」であることが明らかになりました。リテール企業の新しいオペレーティングモデルが事業目的を基盤に構築されなければならないのも、それが主な理由です。さらに、新たなオペレーティングモデルにはサブスクリプションやマーケットプレース、レンタル、再販売、リテール・アズ・ア・サービス(RaaS)といったさまざまなビジネスモデルに対応できる柔軟性も必要です。こうしたビジネスモデルを基盤とすることで、事業目的にかなった製品・サービスをより一層提供しやすくなります。

またリテール企業では、専任の経営幹部が製品と事業目的をつなぐ点を線にするサポートをしますが、新たなオペレーティングモデルではチーフプロダクトオフィサー(Chief Product Officer, CPO)がこの役割を担います。製品の開発・製造を推進することで、それらをサービスや体験と結びつけることがCPOの役割です。また、必要に応じて信頼できるパートナー企業とのエコシステムを構築し、製品・サービス・体験の提供を支えながらブランドの目的を達成し、新たな収益源を生み出します。

市場は新たなチャネル

従来のリテールオペレーティングモデルはチャネルごとの販売モデルを厳守していたため、消費者視点に基づいてデータドリブンの統合的な販売ができませんでした。従来のモデルは顧客のニーズや要望に「耳を傾ける」のではなく、顧客が購入すべきものをプロの販売員が「教える」という形で、大半の購入の意思決定が行われています。これでは顧客中心とは言えず、大規模な展開におけるコスト効率にも問題が出てきます。

現在のリテール企業に求められているのは、シームレスでチャネルレスなアプローチ、つまり市場にフォーカスしたオペレーティングモデルです。それを実現するためには、まずオンラインとオフラインの販売チームとマーケティングチームが、チーフコマーシャルオフィサー(Chief Commercial Officer, CCO)の下で1つの組織として協働する必要があります。また、CCOはデータインサイトを活用しながら顧客の心をつかむものは何か、個々の市場の独自性はどこにあるかについて特定します。抜本的な変革を行うためには、損益計算書の構成を製品ベースから市場ベースへと再編成し、顧客生涯価値を測定することも大切です。

データこそが事業の新たな基盤

リテール企業は膨大なデータを保有しています。にもかかわらず、従来のビジネスモデルやオペレーティングモデルに起因するいくつかの理由から、データの最適化に追い付けていないのが現状です。しかし、データを全社の共有基盤として利用するモデルにシフトすることで、顧客への製品・サービス提供やオペレーションに関する意思決定を改善できるようになります。また、デジタルテクノロジーに投資してコストを削減し、新たな領域に再投資することによって売上の拡大につなげることも可能です。こうしたシステムは最新かつ柔軟性に優れ、デジタルの領域を切り離し、さらにAPIを利用できるものでなければなりません。これによって、エコシステムとのシームレスな統合が実現します。

新たなリテールオペレーティングモデルでは、チーフデジタルオフィサー(Chief Digital Officer, CDO)がデータプラットフォームや人工知能(AI)、機械学習などを用いた能力開発への投資を行い、従業員へのエンパワーメントを推進するとともに、ルーチンタスクを排除して効率化を図ります。つまり、CDOの役割とは、CPOCCOが変化し続ける顧客ニーズや市場ニーズに即応できるようにサポートすることです。

25%

自社がデータドリブンな企業であると回答した従来型のリテール企業の割合(全業界で最も低い数字)。

16%

自社の事業をデジタルビジネスと見なしている従来型のリテール企業の割合。

変化を受け入れる

新たなオペレーティングモデルの構築は、リテール企業にとって極めて重要な意味を持ち、大きな変化をもたらすことにつながります。これを実現するには、経営幹部はまず以下の4つの基本事項にフォーカスする必要があります。

全脳的思考でリーダーシップを発揮する

リーダーは右脳の創造性と左脳の分析的思考の両方を駆使しながら。リテール事業における「芸術と科学」を極める必要があります。

リソースを最大限に活用し、成長を促進させる

ボトムアップ型のゼロベース予算を採用し、時代遅れのアセットを減らすと同時に、リソース活用の方法を見直して売上の拡大を図りましょう。

新たな収益源を創出する

対象の顧客に対する深い理解に基づいて、新たなバリュープロポジション(価値提案)に注力しなければなりません。

最適なケイパビリティを外部から調達する

スキルギャップを埋めるためには、外部からの協力を仰ぐことも重要です。ワークフォースを「構築する」「買い取る」「借りる」かについてのスマートな判断が肝要です。

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