食品会社は今、消費者の食べたいと思うものを事前に把握して提供する、あるいは顧客として認識できた消費者に新たな刺激や満足感をもたらす方法で、消費者に新たな商品はサービスを提供することができるようになっています。これらを実現するには、人工知能(AI)の活用をはじめ、購入プロセス以外のところで消費者との関係性構築を図るゲーミフィケーションの手法などをモデルにして、消費者に関する理解をさらに深める必要があります。これらの強力なツールは、食品大手が取引先との関係を見直し、新たなライバルとして台頭するスタートアップを打ち負かすとともに、「リビング・ポートフォリオ」「リビング・マーケティング」「リビング・サービス」を通じて、急速に変化し続ける消費者の嗜好に応える「ハイパーレリバンス(単なる製品の購入者と製造者を超えた強い関係性)」の実現に大いに役立つはずです。

食品会社はこれまで、消費者とのつながりを軽視する傾向がありました。
しかし、消費者との繋がり・関係性を取り戻すことは可能です。

ネスレの創業者であるアンリ・ネスレは、母乳が出にくい母親のニーズに応える画期的な商品として「粉ミルク」を開発しました。(*1)ダノンの創業者であるイサーク・カラッソは、近隣に住む多くの幼児が消化器系に問題を抱えていることを知り、解決策として故郷のバルカン半島からヨーグルトの種菌を輸入し、ヨーグルトを作るようになりました。(*2)これらの例からも分かるように、食品会社はもともと消費者に対する深い理解と共感によって繁栄を実現してきました。しかしながら、今日の食品業界大手と消費者とのつながりは、希薄になってしまっています。

次の食品のトレンドをうまく予測することができず、新製品を適切な市場にタイムリーに送り込むことに奮闘する、あるグローバル食品大手の経営幹部の言葉を引用しましょう。「パーティがあるたびに遅れてしまう。到着したと思ったら、会場のビルを間違えている、そんな感じだ。たとえば、デンマークでメキシコ料理が流行っていることが分かったとする。しかし、すぐに小売業者や地元のライバルがすでに市場を占有していることが明らかになる」。小売業者は自社で収集した自社の顧客データを使って消費者への理解を深め、ブランドの商品と同様の、もしくはそれ以上に消費者のニーズにマッチしたPB商品・サービスを提供することができます。また、インポッシブル・フーズ(Impossible Foods*3)やヘイロートップ(Halo Top*4)といったスタートアップは、組織としての俊敏性や独自のフォーカスポイントなどを生かし、消費者のニーズや期待を素早く明らかにして、それらに応えています。

食品・飲料品会社は、失われつつある消費者とのつながりを積極的に取り戻していくことで、このパワーバランスを変えることが可能です。リビング・ビジネスの世界で生き残るためには、食品会社は以下を実践しなければなりません。

  • 先入観を捨て、新たな視点で消費者を見る。そのために高度なAIや機械学習を利用して、消費者が日々生み出している膨大なオンラインコンテンツの分析を行う。
  • 得られた知見をもとに消費者との新たな関係を築き、購入プロセス以外のところでも消費者とのつながりを生み出す。
  • これらの新たな知見や消費者との関係を武器に、食品・飲料品会社はより強固なポジションから商品・サービス、体験を開発して、グローバル、ローカル、さらにはハイパーローカルな規模でレリバンスを確立できるようになります。

オンラインコンテンツ分析を利用して消費者を新たな視点から理解する

1枚の写真が1,000の言葉を語れるなら、数十億枚の写真は一体どれだけの物語を語れるでしょうか?食品・飲料品会社は他業界の取り組みをモデルにすることで、消費者の物語を理解する術を学ぶことができます。たとえば、グローバルでビジネスを展開するファストファッション企業の多くはトレンドを予測し、そのトレンドが生まれてすぐにそのニーズに応えることによって成長を遂げてきました。ファストファッション企業は今、トレンドセッターの人間的な直感に機械学習を応用した強力な技術を組み合わせることで、InstagramやPinterestといったSNSプラットフォームの画像からパターンやトレンドを発見しています。彼らはこうした能力を活用し、地域や国、場合によっては都市ごとに隔週で新しいコレクションを投入しているのです。

テキストの文脈を理解できる自然言語処理アルゴリズムに機械学習を組み合わせることで、食品・飲料品会社はソーシャルメディアなどからオンラインデータを収集し、次に流行りそうな料理やレシピ、画期的な食材をはじめ、新しいライフスタイルや哲学、健康関連のトレンドなどを予測できるようになります。また、そうしたトレンドが局地的なものか、一時的なものか、あるいは継続的で今後も成長が見込めるものなのかについても知ることができます。さらには、トレンドやレリバンスが世界各地に広がっていく可能性を秘めているかどうかを、事前に予測することも可能です。

あるいは、これらのデータから消費者のニーズやモチベーション、パーソナリティ、アーキタイプといった知見を引き出し、マクロ/ミクロセグメンテーションを行うことで消費者との関係の再構築に活用することもできます。

購入プロセス以外のところでも消費者とのつながりを生み出す

このように、食品・飲料品会社はオンライン分析によって消費者をより明確に理解することで、膨大な機会を発掘することができます。では、さらにもう一歩踏み込んで、消費者1人ひとりとつながりを構築できたらどうでしょうか?

従来のようなポイント制度やリワードシステムに基づくロイヤルティプログラムによって、これらのゴールを達成しようと尽力している企業もあります。しかしながら、この種のプログラムは購入プロセスのみを対象としたものであり、関係の構築よりもリワードの提供に焦点を当てたものです。食品・飲料品会社に必要なのは、消費者とつながりを通じて真のロイヤルティを生み出すための新しいイニシアチブです。そのためには、購入プロセス以外の部分にもしっかりと目を向け、消費者のモチベーションに一層有意義な方法で応えていかなければなりません。ゲーミフィケーションの原則を応用して消費者とのつながりを構築すれば、食品・飲料品ブランドとのインタラクションを消費者と企業の双方にとって刺激的、かつ満足感のあるものへと変えることができます。

ここでもまた、食品・飲料品会社は他の業界から学ぶことができます。たとえば、スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーは先ごろ、バスケットボール選手のステフィン・カリーをフィーチャーしたゲームアプリをリリースしました。カリー選手が試合で得意のスリーポイントシュートを決めるとアプリが起動し、カリー選手に関するトリビアクイズを出題します。そして正解者は、アンダーアーマーのシューズやNBAのプレーオフチケット、ショップで使えるクレジットポイントをもらえるという仕組みです。これはNBAとカリー選手のファンのモチベーションを深く掘り下げて得た知見から、ファンとアンダーアーマーの双方にとってメリットとなる真のつながりを生み出すアプリと言えるでしょう。(*5)

ゲームは意思決定や競争心、自主性、つながりといった人のさまざまなモチベーションを満たすため、何度でもプレイしたいという気持ちを起こさせます。食品・飲料品会社もオンライン分析によるマクロ/ミクロセグメンテーションを活用してゲームを基盤としたプログラムを開発し、楽しくてポジティブでパーソナライズされた体験を消費者に提供することができます。これにより、自社のビジネスゴールを達成する一方でユーザーのモチベーションにも応え、学習や成長を実現することができます。

まとめ

変化し続ける顧客のニーズに継続的に応え、ハイパーレリバンスを実現できない企業は、瞬く間にライバルに後れをとることになります。食品・飲料品会社には、小売業者やスタートアップに勝るレリバンスを再び確立するチャンスがあります。ただし、そうしたチャンスを生かすためには、今すぐにでも新たな視点から消費者を見つめ直すことが不可欠であり、互いにメリットを得られるようなポジティブな方法でつながりを再構築する必要があります。現代の食品・飲料品会社は、オンラインデータという極めて強力かつ信頼の置ける、有望な情報源を分析/利用することができます。ゲーミフィケーションの原則をもとに、これらの情報を消費者との直接的なエンゲージメントと組み合わせることにより、これまでになかった新たなアプローチでハイパーレリバンスを実現することができます。つまり、食品・飲料品会社は創業者たちの残した遺産を再び有効活用して、真のリビング・ビジネス企業へと変革を遂げられるはずです。

出典:

1 ネスレS.Aの歩み
《最終閲覧日》:2019年11月

2 アクティビア/ビオの歴史
《最終閲覧日》:2019年11月

3 インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)
《最終閲覧日》:2019年11月

4 ヘイロートップ(Halo Top)
《最終閲覧日》:2019年11月

5 Under Armour Launches In-Game Steph Curry App, Pushes Brand-Customer Interaction (May 07,2018)
《最終閲覧日》:2019年11月

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