調査レポート

概略

概略

  • 新たな経済環境によってバイオファーマ企業には、「ニューサイエンス」の活用による変革が求められています。
  • ニューサイエンスにより高度なサイエンスとテクノロジーを独自の手法で組み合わせ活用することでバイオファーマ企業は81%の収益成長の可能性があるとされています。ただし、その開発・導入に莫大なコストが発生します。
  • バイオファーマ企業はニューサイエンスを活用することで、収益性を高め、イノベーションと成長、そしてより優れた患者アウトカムを提供できるようになります。
  • バイオファーマ企業は今こそ、これまでの治療法の研究開発に要するコストの方程式を見直すべきです。治療法の運用という従来の観点からではなく、新しい治療法の発見・開発・商用化という観点から、新たな利益方程式を導き出す必要があります。


変化の時代において、バイオファーマ企業が業界をリードするには?

新たな経済環境によって、バイオファーマ企業は変革を迫られています。パンデミックによって、業界は前例のないさまざまな対応を余儀なくされ、世界中のサイエンスコミュニティは新しい方法で協働することになりました。また、官民のパートナーシップはイノベーションを加速し、両者共通のニーズに応えようとしました。この混乱の中で脚光を浴びることになったのが、テクノロジーとサイエンスです。

テクノロジーは、リモートワークへの移行をはじめ、患者への遠隔治療の提供、バーチャルな臨床試験の実施、サプライチェーンの再構築を可能にしました。

一方、サイエンスはリモートワークが推奨される環境においても、複数の新型コロナウイルスワクチンの開発を記録的なスピードで実現させました。

バイオファーマ業界は、今後も医薬のイノベーション、アクセスとアフォーダビリティの実現に向けた新たな道のりを切り拓いていくことができるのでしょうか。社会システム及び患者レベルでの持続的な費用負担の課題に対処しながらも、全ての疾患に対して新しい治療法を発見・開発・提供し続けるためには、この1年間で得た教訓をどのように活かしていくべきなのでしょうか。

最良のサイエンスとヘルスケアテクノロジーを独自の手法で組み合わせた「ニューサイエンス」によって、高精度かつ効果的な治療法の研究開発が可能になり、未解決の疾患ニーズを満たしつつありますが、ここには高額なコストというネックがあります。

動画でアクセンチュアのリーダーから学ぶ

ニューサイエンス:バイオファーマ企業の成長を促す新たな現実|アクセンチュア

バイオファーマ:顧客との経済関係を見直す

ニューサイエンスを活用することで、収益性と患者の健康増進を両立させ、かつてないイノベーションの実現と優れた患者アウトカムの提供が可能になります。

サイエンス分野におけるイノベーションへの投資には、すべてのステークホルダーの負担が伴いますが、ここで最も大きな負担を感じているのが患者です。従って、患者に最大の投資利益率をもたらすことを最優先の目標に掲げることが重要です。

アクセンチュアは独自の調査を通じて、このコンセプトを支える3つの主な論点を導き出しました。

ニューサイエンスの重要性がかつてないほど高まっている

サイエンス分野のイノベーションは、バイオファーマ企業の成長を後押しします。また、サイエンスの進歩に伴い、私たちのイノベーションに対するアプローチも変化します。そのため、今後は患者や人々にもたらされる利益の測定の仕方が今後更に重要になります。​

新たな経済環境が収益性の確保を困難に

増加したコストをこれまでの様に消費者に転嫁する手法は、もはや持続可能とは言えません。バイオファーマ企業は、政府機関、消費者、および保険者(Payer)から、コストの削減を迫られています。

未来を見据えた企業だけが成功できる

バイオファーマ業界は新たな経済環境を踏まえ、価値を創造・獲得・共有する方法を見直す必要があります。

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1.ニューサイエンスの重要性がかつてないほど高まっている

ニューサイエンスは、予想を上回る成長を促しながら、これまでのオペレーションを刷新し、イノベーションの新たな機会をもたらします。

81%

ニューサイエンスの活用によって、2021~2026年に予測されるバイオファーマ企業の収益成長率。同時期に予測される業界全体の売上増加率である61%、2017~2022年の従来予測である54%を上回る。

69%

2022~2026年にニューサイエンスによる治療法の平均正味現在価値(NPV)が、従来の治療法の平均NPVを上回ることになるだろうと予想する割合。

76%

過去5年間に実施された新たな治療法の開発プロジェクトに、ニューサイエンスを用いた治療法が占める割合。

2.新たな経済環境が収益性の確保を困難に

バイオファーマ業界は、これまで民間部門における急激かつ不可逆的な変化と、政策や規制の強化といった課題に直面してきました。そして、あらゆる方向からの圧力にさらされてきたバイオファーマ業界は現在、大きな転換点を迎えています。

Anticipated profitability pressures today versus 5 years from now

仮により効果的でパーソナライズされた治療法を開発できたとしても、現状のシステムではそのコストを十分に賄うことができません。業界は今、次のような圧力に直面しています。

1.消費者が治療費を払えない

アメリカでは、一世帯の平均保険料が過去5年間で22%、過去10年間で55%増えています。

2.政府機関がコストを管理できない

アメリカでは、ヘルスケア部門への財政支出が2019年に約4兆ドル(約440兆円)に達しました。これはGDPの17%以上に相当し、全財政支出の24%を占めるほどです。

3.保険者が負担を感じている

財務状況を重視する傾向が強まったことで、薬剤給付管理会社(PBM)、保険者、医療機関(HCP)、および患者の間で摩擦が生じています。

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3.利益方程式の両方の側面に配慮できる、未来を見据えた企業こそが成功を勝ち取る

上記のような圧力の多くは新しいものではありませんが、民間部門における継続的な利益の縮小、人口動態の変化、政策の見直しに起因するディスラプションなどを背景に、変化の機運が高まりを見せています。では、バイオファーマ業界は今後、具体的にどのような施策を講じるべきなのでしょうか。

アクセンチュアでは、バイオファーマ業界は価値を創造・獲得・共有する手法を見直すべきだと考えています。今日に至るまで、業界はビジネスモデルの抜本的な変革に背を向けてきました。しかしようやく、変化の兆しが見え始めています。

顧客との経済関係を見直す

まず、顧客、ステークホルダー、および市場との経済関係を見直すことが重要です。そこで、バイオファーマ企業の成功に不可欠となる3つのアクションをご紹介します。

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利益方程式に注目する

バイオファーマ企業は、利益方程式の両サイドから目下の課題に対処する必要があります。

まず、治療法の研究開発にかかるコストを現在の数十億ドルから数百ドルにまで削減しなければなりません。記録的なスピードで新型コロナウイルスワクチンの開発を実現したように、開発および商用化プロセスのイノベーションを活用する必要があります。

次に、顧客との経済関係を見直す機会を捉え、最も重要な領域で埋もれた価値を発掘し、共有することです。

その実現に向けて、アクセンチュアでは治療費開発に要するコストを調整する、5つの主な要素を明らかにしました。バイオファーマ企業は、以下のアプローチ・利点を積極的に活用することが推奨されます。

データドリブンによる新薬の発見

高度なバイオマーカー発見技術とディープラーニング、マルチモーダルモデルを組み合わせる。

ニューサイエンスによる効率性

成功確率の向上、患者コホートの縮小、全体的なゲノム効率の向上。

臨床試験のバーチャル化、ハイブリッド化、および分散化

インシリコやデジタルツインといった技術やデジタルテクノロジーを活用して、患者にとって身近な臨床試験を可能にする。

規制分野のイノベーション

より効率的な治験プロトコルや、安全性とリスクのバランスを取るため新しい方法を活用する。

バーチャルな販売モデル

セールスチームによる過剰販売を排除し、コストを削減する。

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大局的な視点では、バイオファーマ業界は単に市場の変化に対処するのではなく、さらに一歩踏み込んで、自ら市場を形成する新たな機会を模索すべきです。かつてないペースで変化を遂げているヘルスケアエコシステムの中で、バイオファーマ企業は最も重要な領域で経済関係を見直すとともに、未来を切り拓く役割を積極的に果たしていかなければなりません。

まとめ

ニューサイエンスには、医療の精度や効果を飛躍的に高める大きな可能性が潜在しています。しかし、コストの増大によって、多くの人々がこの新たな医療を利用できなくなる可能性も否定できません。アクセンチュアはこの1年間で得た教訓を生かすことで、社会システム及び患者レベルでの費用負担の課題を解決し、全ての疾患に新しい治療法を発見・開発・提供することが可能だと考えています。近い将来、バイオファーマ業界は変革によって生まれ変わることができるはずです。そして、この変革は必ず実現しなければならないものなのです。



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