ボルト1本からデジタル化。「デジタルツイン」の最新活用事例
2020/08/31
2020/08/31
アクセンチュア インタラクティブグループに属するMackevisionは6月9日・10日の2日間にわたって開催されたマーケティングや広告、テクノロジー、ブランドに関するイベント「Advertising Week JAPAC 2020」に参加し、「マーケティングにおけるデジタルツインの価値創造」と題して講演を行いました。
MackevisionはCGI(computer generated imagery:コンピューター生成画像)の分野でマーケットをリードしているグローバル企業です。データに基づく「3Dビジュアライゼーション」やアニメーション、視覚効果で知見とケイパビリティを有しており、これらの技術を必要とする製造業界やエンターテインメント業界から特に高い評価をいただいています。
1994年にドイツで創業したMackevisionは現在、日本を含む世界各国に拠点を持ち、グローバルマーケットにおけるリーダーとしてのポジションを強化しています。20年以上にわたってMackevisionが培ってきた高度な「3Dビジュアライゼーション」は、昨今のAR/VRでの活用を始めとして、様々な業界のデジタル変革(トランスフォーメーション)を強力に推進するソリューションとなっています。
今回の講演でフォーカスしている「デジタルツイン」は、3Dビジュアライゼーションを駆使して現実世界の環境や物体をバーチャル空間で再現する技術。先進的な企業のデザイナーやマーケター、エンジニアなどの間で認知度が拡大しているものの、本格的な利用の広がりはまさにこれからといえるでしょう。
中国と日本の拠点をオンラインでつないで実施された今回の講演においても、デジタルツインがどのようなものか、いかにして各産業で活用されているかなどが紹介されました。
講演ではまず、ビアトリクス・フリッシュが「MackevisionはCGIに強みを持つ企業」であることを紹介すると、東京のスタジオから出演している大江田 政輝が「最近のお客様企業はデジタルツインに強い関心をお持ちです」と補足しました。
「ポスト・コロナの現代社会においては、デジタル空間で商品、プロセスやサービスを再現できるデジタルツインの重要性が高まっています。しかし、デジタルツインの概念そのものは以前から存在するもので、特にプロダクトのバーチャルモデルとして製造業界を中心に取り入れられてきました」(フリッシュ)
講演者プロフィール(左から)
ビアトリクス・フリッシュ(Beatrix Frisch)
Managing Director, Regional Director APAC
Mackevision part of Accenture
大江田 政輝(Masaki Oeda)
インタラクティブ本部
ヨハネス・ラァメンジー(Johannes Rammensee)Head of Production Asia
Mackevision part of Accenture
現在のデジタルツインは次のような特徴を備えていると、ヨハネス・ラァメンジーは解説しました。
「リアルタイムレンダリングは、高度な3D映像とインタラクティブ性が求められるゲーム業界で洗練されてきた技術です。また、Mackevisionのデジタルツインの自動車は一般的な“Car Configurator”とは本質的に異なり、内部構造やパーツの1つひとつがCADデータに基づいて構築されています。つまり画面上にある“実車そのもの”なのです」(ラァメンジー)
すべてソースマテリアルをデータとして取り込んでいることから、更新を簡単に行えることもデジタルツインの強みです。ユーザーの希望をリアルタイムに反映できるため、デジタルマーケティングやオンラインマーケティングにおける強力なツールになります。
同時に、工業製品の修理やメンテナンスの分野でも、専門技術者の育成において高い学習効果を得られるなどの価値を発揮します。ラァメンジーは「パーツのボルト1本から再現できますので、安全な環境でトレーニングを積んでから実物での実習に移行できます」と説明します。
ラァメンジーはデジタルツインの活用法として、ジュエリーなどのラグジュアリー商品やファッション/アパレルの業界でも注目度が高まっている点を強調します。
「ステイ・ホームが求められている昨今のライフスタイルにおいて、デジタルツインは実店舗でのショッピングに匹敵するエクスペリエンスを提供できるテクノロジーです。たとえばあるシューズメーカーでは、ユーザーが色やデザインだけでなく、テクスチャーを確認でき、サイズが適切かどうかもチェックできる環境をデジタルツインで提供している事例があります」(ラァメンジー)
デジタルツインは3Dであるため、あらゆる角度を表現できます。世界中のプラットフォームで利用可能かつ、オプションは無限大であり、エンドユーザーの好みや選択に合わせて独創的なオンデマンド・コンテンツを生成できます。こうしたことから企業は、商品のストーリーをより幅広くユーザーへ伝えることが可能となります。
「外見だけのビジュアルを自動生成する場合は、見た目に関係するデータだけを組み合わせれば完了できますが、エンドユーザーの注文に合わせた製品の製造まで連携させる場合は、内部構造や素材・部品に関するより複雑なデータを取り込むことが重要となります」とラァメンジーは説明し、製品のハイパー・パーソナライズの実現にもデジタルツインが有効であることを強調しました。
企業がデジタルツインをいかに導入すべきかについても講演では触れられました。近年、製造業界ではデジタルファクトリーの取り組みを推進している企業が増えています。そうした企業の製品はエンジニアリングデータに基づいて製造されていることから、デジタルツインへの移行の第1ステップを完了していると言えます。
なお、CADやExcelの図面がある場合、Mackevisionにて処理することも可能です。「手元にあるデータを使ってゼロを1にすることができます」(フリッシュ)。
もちろん、プロダクトだけでなく、サービスビジネスにおいてもデジタルツインは活用可能です。いわば「スタジオ」のように利用することで、エンドユーザーに「バーチャル・ショールーム」のエクスペリエンスが提供可能になります。
セッションの最後にフリッシュは、Mackevisionが約25年にわたってCGIを活用するビジネスに取り組んできたことに触れ、お客様企業が期待するデジタル化を力強くご支援可能なことを紹介して講演を締めくくりました。