高齢化と少子化が同時進行する日本社会において、私たち一人ひとりの健康寿命を延ばし、同時に持続可能なヘルスケアシステムを実現させることは、容易ではありません。国民の予防意識の低さ、イノベーションの不足、医療資源の偏在など、ヘルスケアには「不都合な真実」とも呼べるさまざまな課題が存在しているためです。そうした「不都合な真実」をステークホルダーごとに紐解き、未来に向けて求められる変革について解説します。また、健康寿命の延伸と持続的なヘルスケアシステム構築を実現するための「ありたき未来」とは、どのようなものなのでしょうか。

※本論考は2022年5月16日に発売された日経MOOK『ヘルスケアの進化』(日本経済新聞出版)でも更に詳しく紹介されています。詳しくはこちら。購入する

低い予防意識が医療費押上げ 疾病リスクの予測と予防介入を

日本人は他国に比べ、予防への対価意識が低い傾向があり、生活習慣病の医療費は全体の13%を占めています。その背景として、日本は国民皆保険であり、生活習慣の改善など予防に関しては自己責任であることが挙げられます。そのため予防は国民自らのセルフケアが必要となりますが、お金を払ってまで予防や健康増進につなげようとするインセンティブが小さいのです。一方私的保険が中心の米英では健康維持が個人の自己責任であり、それに向けたエコノミクスが働きます。保険料引き下げのため、積極的に予防に投資をしています。病気への予防意識を高めるためには、制度面の改革のみならず、自身の疾病リスクを予測し、それに向けた対応策を考えることが必要です。その結果、医療費抑制につなげることが求められます。

対症療法的なアプローチ中心 アウトカムベースにシフトを

現行の日本医療制度では対症療法的なアプローチが中心で、医療行為に対して償還される、いわば出来高払いのシステムとなり、アウトカム(医療行為の結果、成果として「持続的に健康である状態」にあること)に支払われるインセンティブが低いことが問題となっています。医療行為自体が対症療法的なアプローチからいかに根治させるかというアウトカムベースのアプローチにシフトしていけるかが、未来に向けて求められています。

求められる世界市場での存在 新しい治療法への挑戦を

製薬企業については、世界の医療品市場で、日本のプレゼンスが低下してきているという課題に直面しています。その最大の要因は薬価制度の改変にあります。政府は医療費抑制のため診療報酬改定とともに薬価を抑制する方針を打ち出し、薬価が下がる一方治験コストや期間のかかる日本市場は世界の製薬企業に敬遠されつつあるのです。そうなると、懸念されるのがドラッグラグ(他国で承認された薬が日本で承認されるまでの時間)です。国内のドラッグラグは厚生労働省やPMDA(医療品医療機器総合機構)の働きかけによって非常に改善してきている一方で、未承認薬が増え続けています。しかし、国内においてアウトカムに根差したイノベーションも出てきています。従来のビジネスモデルを見直し、新しい治療法への挑戦や本当の意味でのイノベーションを起こしていくことが重要となります。

医療資源偏在と低い労働生産性 ネットワーク化と最適化を

日本の病院は、医療資源の偏在や20年来労働生産性が上がっていないことが原因で、4割が赤字経営に陥っているといわれています。日本の医療機関は大半が個人経営、個々の医療機関がそれぞれの経営的なインセンティブを重視して診療報酬の高い急性期病院を志向し、結果として連携が進んでいません。国民がどこにいても均質で質の高い医療、自分に合った医療を受けられる状態とするためには、偏在する医療資源を個々の役割に従っていかに連携していくかが重要となります。個別最適化されている病院経営も、連携に応じて最適化を図っていくアプローチが求められます。

介護度向上のインセンティブ化を

高齢化が進む日本において、自宅で終末期を過ごしたいと考えている人が約半数に上るのに対し、現実は約8割の人が病院で亡くなっています。一方で、介護事業者の立場上高齢者の介護度を改善していくインセンティブが働きづらく、かつ人材不足も深刻な問題となっています。国民が病気や介護と向き合いながらいかにして自分らしい生活を安定して送ることができるかがカギとなり、そのためには介護度を上げることによるインセンティブをつくり、介護職員の人材不足を解消していくような変革が求められます。

自分らしく生きる未来に向け求められる5つのシナリオ

ここまで各ステークホルダーが抱える課題と、未来に起こすべき変革について考察してきました。それらを踏まえ、健康寿命の延伸と持続的なヘルスケアシステム構築を実現するための5つの未来シナリオを提示します。

  1. 早期の疾患予測・予防
  2. 薬による対症療法から根本治療へ
  3. どこにいても必要な医療にアクセスできるメディカルネットワークの実現
  4. サステナブルな介護システムの確立
  5. ウェルビーイング社会の構築

これら5つの未来像ごとに章を立て、専門家へのインタビューや対談、アクセンチュアの専門コンサルタントの論考を展開して議論を深めます。製薬会社トップや医療研究者、医療行政経験者など各分野の第一線の有識者が多数登場します。

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石川 雅崇

執行役員 ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ日本統括 兼 ライフサイエンス プラクティス日本統括


濵田 晋太朗

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター

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