大企業との合弁で、スタートアップの機動力を発揮しながら建設業界の課題解決に挑むランドログ

セミナー後半、パネルディスカッション前のショート講演として、株式会社ランドログ CDO(Chief Digital Officer)明石 宗一郎氏と株式会社FOMM 代表取締役社長 鶴巻 日出夫氏が登壇し、自社のビジネスの概要や将来展望について語りました。

「建設業界では2025年までに130万人の労働者ギャップが予測されています。業界全体は54兆円規模であるにも関わらず、建設会社の94%は年商6億円以下の中小企業です。(ランドログの親会社の1社である)コマツが手がけている領域も限られているため、コマツの建機だけが効率化しても、建設現場全体の効率化への影響は限定的です。私たちはコマツの事業の延長線上にありながら、コマツがこれまで手がけてこなかった現況測量などの効率化(3日→30分)などのソリューションを提供しています」(明石氏)

株式会社ランドログ
CDO 明石 宗一郎氏

ランドログのビジネスモデルはAPIのCall数でユーザーに課金しています。直近では、ダンプカーの最適運用で現場監督やドライバーを支援し、日本の建設業界の効率化を目指しています。

明石氏が主要メンバーとして率いているランドログは建機大手のコマツなどとの合弁会社として設立されました。しかし、主要経営メンバーにコマツ出身者は少なく、ベンチャー企業的なカルチャーの色濃い「動物園的な環境」だと明石氏は話します。

「地に足をつけた事例を増やしていきます。大企業の合弁会社であるからこそ可能な、クライアントのトップマネジメントと直接協議しながら対話できることは強みです。一方でスタートアップ的な少数精鋭の動き方もできています。新たなイノベーション実現のためのプラットフォーム構築に邁進しています」(明石氏)

EVで世界のモビリティの変革に挑むFOMM

ショート講演の後半に登壇したFOMMの鶴巻氏は、「自動車は変革期にあります」と語ります。「電気自動車(EV)のカーシェアを推進していく考えです。世界の72.5億人が5人に1台の割合でシェアすると14.5億台のEVで十分です。世界中で利用されるコンパクトEVの開発を進めています」(鶴巻氏)。

「デジタル変革期におけるイノベーションの創発」セミナーレポート

株式会社FOMM
代表取締役社長
鶴巻 日出夫氏

スズキでエンジン設計やモトクロスの車体設計を経験し、トヨタ車体で超小型EV「コムス」の開発を担当した鶴巻氏はコンパクトEV開発における第一人者。鶴巻氏をリーダーとするFOMMは「First One Mile Mobility」を社名に掲げ、革新的モビリティ・サービス、「Battery cloud」と低速自動運転を実現させるなどで、自動車業界のマクドナルドを目指している企業です。

FOMMの製品の特徴として、水上移動が可能であることが挙げられます。すでに権利化もできて実際に人を乗せた状態で実験を済ませています。車両はヨーロッパのL7e規格で設計されており、これはバイクと自動車の中間のような規格とのこと。

また、「Battery Cloud」は、バッテリー残量などの情報とクラウドに接続した車両情報を取り込むことで、バッテリー切れになる前に適切な位置の充電ステーションへと誘導し、航続距離を最大化することを可能にします。

また、FOMMでは低速自動走行での配車も想定しており、話題になる責任分界点についても「利用者の元へ到着するまでの自動走行中の責任はFOMMが負い、運転中はユーザーの責任範囲となる」と明瞭にするなど、事業のモデルが明確であることも強調されました。

デジタル変革を次のステージへ。
3社3様のポジションと施策

セミナーの最後となるパネルディスカッションは、「デジタル変革を”次のステージ”へ、新ビジネスモデルの構築に挑む 〜新たな価値を生み出す全社横断のデジタル変革、その構想と実践〜」と題して、河野のファシリテーションのもと行われました。

ダイキン工業は自社のビジネス規模を生かして“空気のブランド化”に挑戦されています。ランドログは大企業とのジョイントベンチャーで変革を起こしながら現地に密着して現場の困りごとを文字通り泥臭く解決しており、FOMMは日本の技術者を中心とする31人の組織で、既存大手自動車メーカーがなし得なかった成果を出しています。

河野はこうした前提の中、「3人の登壇者それぞれが感じてきたビジネスにおけるハードルや、抵抗勢力への対応はどうされてきたのでしょか」と質問を投げかけました。

米田氏は、「まだ既存事業を脅かすほどになっておりませんので、まずは事業規模や存在感を大きくすることが先決」と述べ、明石氏は「コマツからは2つの時計が必要だという話をされます。ハードウェア設計製造は5年や10年といった長期間が必要です。一方ソフトウェアは1年以内にどんどん刷新されてしまいます。大企業としてはこの2つの時計を共存させるべき、という理解です」と話し、組織内対立を回避しつつベンチャーのようなスピード感の必要性を説きました。

また、鶴巻氏は、日本には適切な規格がないことから、国内向けには関係省庁や業界団体への働きかけをしつつ、世界市場に合わせた規格で提供していくことを解説しました。

続くディスカッションでは組織と人材の在り方に話し及び、米田氏は「ソリューション商品としての設計が課題です。パートナー企業といかに組んでいくかが大切です」と言います。

明石氏は人材の面で「あらゆることに詳しい人はいません。先端テクノロジー、建設現場、建機などそれぞれに知見を持つメンバーの組み合わせで価値を発揮していきます」と多様性の重要性を強調します。鶴巻氏は「大企業では役員の関心度合いでスピード感がまったく違います」とスピード感と当事者意識が必要だと話しました。

資金、人材、組織……
課題山積の中でも重要なことは「スピード感」と「危機感」

鶴巻氏は「モノづくり系ベンチャーには資金が集まりにくい問題がある昨今、ランドログさんを非常に羨ましく感じました。私はニューヨーク証券取引所などでも講演したことがありますが、投資を獲得することは本当に難しく、この6年間は資金調達に奔走してきた感があります」と振り返り、河野は「まさに切実な問題です」と業界の状況にコメントしました。

明石氏は「破壊的イノベーションは他業界のプレイヤー企業によってもたらされると考えていたので、ランドログが設立されたのだと思います。メーカーとはいえ、販売代理店と接するビジネスをしていると、エンドユーザーの課題が見つけにくいものです。私たちは自分もヘルメットを被って現場に行き、ユーザーの課題も足で見つけています」と述べました。

「ランドログさんのダイバーシティと意識に感心した」と米田氏は話し、「私たちはパートナーの知恵を借りてビジネスモデルの構築をしています。プラットフォームを持つIT企業にアプリを提供するベンダーの1社にならないよう、スピード感も見習わないといけません。顧客のニーズを取り込んで、より新しく、より強いビジネスモデルを模索したい」と語りました。

鶴巻氏が「個人レベルでは、危機感を持っている日本のビジネスパーソンは大勢いますが、組織になるとそれが弱くなるように思います。どのように解決するべきでしょうか」と問題提議すると、米田氏は「自分たちはボトムアップとトップダウンのミックス型で取り組んでいます」、明石氏は「コマツ経営層に強烈な危機感があり、自前主義に固執しないことが重要だと思います」と状況を紹介しました。

最後に米田氏は「異業種から参入してくるライバルは顧客ニーズをつかんでいますので、足元をストンとやられてしまいます。今後、顧客ニーズを握っておくことの重要性はますます高まります。ダイキン工業もサービスの比率を上げていき、顧客満足度を向上したいと考えています」と今後の抱負を語りました。

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