既存事業とDisruptor事業の管理の両立

最新テクノロジーを駆使したDisruptorが先進的サービスをスピーディに展開する今、経営は従来の既存事業の事業ポートフォリオ管理に加え自らDisruptor事業を早期に作り出し続けていく必要があります。このためにはDisruptor事業への戦略的投資のマネジメントが不可欠です。戦略的投資とは、従来の「川上R&D」×「製品」における投資管理に加え、「フロントR&D」×「サービス」領域におけるイノベーションへの投資管理が急務ということです。

「川上R&D」(既存製品の研究開発)に対して「フロントR&D」は、顧客接点の領域です。モバイル、IoTで顧客接点が飛躍的に増加し、Newテクノロジーを活用したサービスがあらゆるイノベーションを起こしています。そうした中、従来のポートフォリオ管理でキャッシュ創出を維持しつつ、新しく「フロントR&D」×「サービス」でのイノベーションに戦略投資を短サイクルで回すことで、早期に、ブレークするサービスを見極めることが重要となっています。

既存事業のポートフォリオ管理強化

今成功している欧米企業は10年前の事業ポートフォリオ約4割から戦略的撤退し、注力事業の割合を倍にするなどの選択と集中を進めました。
半面、日系企業のポートフォリオの多くは注力事業は微成長、撤退事業はあまりないという状況です。

ハイパフォーマー企業は、市場ポテンシャルと実力(生み出すキャッシュフロー)のマトリクスの中で各事業を明確に位置づけています。
「成長させる事業」「自律的に伸ばす事業」「他事業のためにキャッシュを稼ぐ事業」「撤退させる事業」を分類し、メリハリの効いた経営資源配分を実現してます。また、成長事業は受注、成熟事業はキャッシュフローを重視といったように、各事業の位置づけによりKPI管理も変えています。

多くの日系企業ではまだ、自事業で稼いだキャッシュを自事業に投資する形が一般的ですので、この事業横断的視点が欠けがちです。全体の中での各事業の位置づけは不明瞭かつ、画一的なKPIで事業管理しているため、「利益を気にせず成長を重視」「投資はせずにキャッシュ創出」といったメリハリの効いた経営資源配分ができないのです。


Disruptor事業のポートフォリオ管理強化

Disruptorとの競争に勝つためには実行のスピードや迅速な意思決定が不可欠です。事業特性に応じて状況を把握できる「デジタル先行指標」と、達成までの期間と閾値を明確にしたターゲット管理で自社のDisruptor事業を推進しなければいけません。加えて、Disruptor事業の見極めは早期に実施し、次なるDisruptor事業へ投資を振り向けることも必要なため、評価指標の閾値を明確にすることも重要です。新規・既存事業共に、時には撤退も視野に、柔軟な軌道修正を図ることが必要な時代となっています。

Disruptor事業のビジネスモデル管理指標例

各事業の成長ファクターに合わせた評価指標の例を紹介します。

①「コミュニティモデル」
少数の熱狂的顧客を梃子に飛躍的に利用者数増を実現していく Under Armourのようなモデルです。
同社は企業理念として「ALWAYS CONNECT:Live at the center of consumer’s life」を掲げ、フィットネスアプリ、ウェアラブルデバイス、スマートシューズ、ショップアプリを短期間でリリースし、世界最大のフィットネスプラットフォームを構築しました。デジタル体験の提供により消費者との日々の関係を構築し、シャツやシューズなどビジネス全体の成長を加速させることに成功した事例として注目を集めました。このように爆発的なカスタマー獲得がファクターになる場合には、「課金顧客数・Active User数」がデジタル先行指標となります。

②「損して得とれモデル」
初期コストは持ち出しするものの、継続利用で累積利益をプラスにしていくモデルで、アマゾンプライム会員のようなサービスが良く知られています。持ち出しで獲得した顧客の黒字化が重要なファクターとなるため、「Lifetime Value」がデジタル先行指標となります。

③「IoTモデル」
GEアビエーションの航空エンジンに代表されるサービス化です。同社は航空エンジンに大量のセンサーを取り付け、航空機全体のメンテナンスや運航計画を策定するサービスを提供しています。GEは航空機の遅延の原因の4割が機器トラブルであり、この機体起因の遅延が解消で航空会社の収益改善を目指しました。顧客の課題解決にIoTでサービス展開する場合は、業界課題の大きさ、課題解決推定額、Lifetime Valueといったデジタル先行指標を管理します。


ポートフォリオ管理によるスピーディな経営資源の再配分は事業部別のサイロ管理では達成できません。これは本社が経営して全社的な視点で実施すべきです。また日系企業は事業撤退にも消極的ですが、多くの企業が過去の遺産に縛られ新しい時代の事業環境で勝てなくなっています。今こそ、スピーディで柔軟な経営資源配分を実現するために、各事業の位置づけ、KPIの見直しと閾値の明確化といった、CFOの戦略的ポートフォリオ管理が重要となってきています。

関根 幸児

通信・メディア・ハイテク本部
アジア太平洋・アフリカ地区
財務・経営管理グループ統括
マネジング・ディレクター

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