調査レポート

概略

概略

  • 消費者行動の多様化と複雑化の傾向をデジタルが加速しており、消費財企業はテクノロジーを駆使した対応が求められている。
  • デジタルが消費者のライフスタイルをいかに変えるかを予測し、付加価値の高い商品・サービスの提供に備えなければならない。
  • ポストデジタル時代におけるセールスとマーケティングが押さえるべき3要素は「①ブログとSNS」「②Eコマースショップの拡大」「③検索エンジンの性能向上」である。
  • COVID-19の影響による「巣篭もり需要」をいかに商機とするかが問われている。


「大衆消費」時代の終焉と「デジタル時代の消費者行動」

「消費」がステータスとして豊かさの象徴となった19世紀以来、社会は「大衆(マス)」の消費行動への憧れに呼応するビジネスモデルを成立させ、いわゆる「ワンサイズフィッツオール(One size fits all)」方式の大量生産・大量販売・大量消費のサイクルを回し続けてきました。

しかし21世紀初頭、「憧れの対象」は多様化し、個々の消費者はしだいに「自らが真に求めるものを手に入れたい」と考える傾向を強めています。社会のデジタル化はこの流れを加速させ、消費者行動の変化と複雑化をもたらしているといえるでしょう。

10年後の社会では、どのようなライフスタイルが一般的となっているでしょうか。その予測は非常に困難ですが、1つ確実だと言えるのは「生活者がいつ、どこにいても、『願望』や『やりたいこと』がテクノロジーによって予測、実施され、デジタル技術のシームレスな連携によって付加価値の高いサービスが提供される時代」が到来するであろうということです。

たとえば、ユーザーの空腹状況を察知して、好みのレストランをレコメンドし、スマートデバイスがその生活者を自然にナビゲートします。満足したユーザーが帰宅し始めると、自宅のエアコンはユーザーが指示することなく自動で運転を開始し、最適な空調を準備しておくでしょう。

「専門家の予測」さえも凌駕する、テクノロジーの指数関数的な進化

こうした生活はSF的な夢物語なのでしょうか。まったくそんなことはありません。人は無意識のうちに将来予測を「線形成長(直線的な変化)」で行いがちですが、実際のテクノロジーの進化は「指数関数的な成長」を遂げます。したがって「水面下」で起きていた変化が社会の表舞台へと登場するとき、その変化は爆発的な勢いを持って普及と拡大が進むことになります。

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こうしたテクノロジーの進化スピードを見誤ってはなりません。ビジネスの環境変化や競争の激化において、企業が消費者の期待に応えるべき場面で、適切な経営と事業運営が行われていないという事態を招く恐れがあります。

デジタルによって消費者行動が多様化している現代においては、企業は従来の「機能的価値」「情緒的価値(ブランドから得るステータス)」を超越した「体験的価値(価値の共感)」を消費者の求めに応じて提供できることが、事業成長の成功の鍵となります。

ポストデジタル時代のセールス&マーケティングが押さえるべき3要素

デジタルが社会の隅々に浸透した現代は「ポストデジタル時代」であるとアクセンチュアは定義しています。昨今ではハードウェアの進化以上に消費者に影響を与え、かつ消費行動の急速な変化を後押ししている要素は次の3サービスであると整理できます。

①ブログとSNS
Eコマースショップの拡大
③検索エンジンの性能向上

2000年初頭に普及が拡大したデジタルメディア(①)は「双方向コミュニケーション」を容易にし、消費者自身が情報発信者の役割も担うようになりました。また、安心と手軽さを実現したEC(②)が急速に勢力を拡大。消費者は「カスタマーレビュー」を購買における検討材料とするだけでなく、自らもがレビューを投稿することでサイクル型の消費行動が確立しました。

それらを下支えしているのが検索エンジン(③)です。消費者は商品を検索し、商品や販売情報の比較・検討を行ってから実店舗へ足を運ぶという行動が当たり前のものとして定着しています。

企業のセールスとマーケティング活動は、こうした社会変化に追随できているでしょうか。営業担当やマーケターは、自らの業務が「デジタルを起点」としたものへ変革できているかどうか、早急に見直すべきであると言えます。

デジタルの浸透は、小規模ながらも先進的な「新興ブランド」にとって非常に有利な環境を提供しています。テクノロジーの活用によって消費者を「深く」捉え、データ分析に基づいて開発されたサービスや商品が消費者の強い支持を集めています。すでに消費財の各領域で既存の大手企業を脅かす新興ブランドが多数登場しています。

巣篭もり需要を商機へつなげる

しかし昨今のビジネス環境において、社会と経済に甚大な被害をもたらしたCOVID-19(新型コロナウイルス)の影響分析は避けて通れません。COVID-19の「総感染者数」と「消費者の不安指数」を比較すると、消費者はますます「慎重になっている」という傾向が見られます。

リモートやバーチャルなど、デジタル技術を駆使するコミュニケーション手段は、人々の接触と感染リスクを低減させる効果があることから、利用がますます拡大します。消費者は企業に対して「社会的責任」をより求めるようになり、「利益よりもパーパスを重視する」「消費者や従業員、社会に対して“正しい取り組みを”行っている」といった観点での企業評価が今まで以上に重視されるようになります。

従来のリテーラーにとって、消費者の生活導線を網羅したリッチな店舗網をいかに持ち、維持するかはビジネスにおける主要テーマでした。しかしデジタルチャネルの利用急増や「巣篭もり消費」が常態化する今、あらゆる企業の商戦の場がデジタル環境へと移行しています。

消費者は今、実店舗での買い物や購買するブランド選びにおいても慎重さを増しています。消費財メーカーやリテール企業は、より一層、適切なメッセージを発信することが重要です。企業は消費者が共鳴する取り組みを推進し、数少ない購買機会を確実にキャッチしていくことが求められるでしょう。

COVID-19の影響:「慎重であり続ける」消費者変化と、より重視される企業の「社会的責任」

60%

COVID-19の影響で、買い物の回数が減ったと消費者の60%が回答した。

44%

企業が利益よりもパーパスを大切にし、消費者、従業員、社会にとって正しい取り組みを行っている。

デジタル時代における「3つの成功要因」

こうした社会およびビジネス環境の変化を踏まえると、「デジタル技術を活用するためのポイント」は3要素へと整理できます。この3要素はいわば「デジタル時代におけるビジネスの成功要因」でもあり、新しい技術を受容し、対応できる人材を獲得するうえでも重要な要素です。

1)テクノロジーと消費者を学習し続ける

あえて「テクノロジー」というキーワードを消費者より前に置いていることには意味があります。消費者とタッチポイントを構築し、消費者のデータをトラッキングしていくには、前提として適切なテクノロジーとプラットフォームを選択しなければなりません。重要なことは「学び続ける」ことです。テクノロジーがどのようにしてビジネスのアイデアを実現し、事業を前進させるのか、テクノロジーの恩恵を受けるために、どのような消費者データを補足し続けるのか。これらは全て、継続的な学びが必要となります。

第2にテクノロジーを駆使することで、時間と場所を選ばずにデータを取得できる可能性について理解を深めることが必要です。第3にデータは科学的分析によって示唆を得て、アクションに結びつけるための手段です。消費者についての学びを深めていき、最適な打ち手を選択することが重要です。

2)データを行動に変える

消費者と「信頼」をベースとしたコミュニティを構築するうえでもデータが活用できます。消費者ビジネスにおいて顧客とのインタラクティブなコミュニケーションが重要であることは、今も昔も変わりません。消費者がデジタル環境へと移行していくのに合わせ、コミュニケーションもデジタル化が重要です。

このコミュニケーションにおいては双方向性が成功の鍵となります。企業自身が発する情報よりも第3者であるインフルエンサーの影響力を活用しなければなりません。消費者は、インフルエンサーが発信する情報は信頼性が高いと考える傾向にあることが心理学の研究でも証明されています。

この成功要因におけるポイントはデータを活用して魅力的なストーリーを消費者へ伝えることです。消費者は「情報発信者が誰であるか」を従来以上に慎重に観察しています。消費者が情報を入手する媒体は多様化しており、提供するストーリーが魅力的あれば消費者の関心により強くタッチできます。

行動にはフィードバックが重要です。消費者から提供されたデータに対し、事業の責任者はしっかりと反映することが求められます。消費者は自分たちが提供した情報が企業を動かし、商品・サービスの改善に貢献したと知ると、「より多くのデータを提供することで、企業はよりベネフィットを大きくしてくれるだろう」と考えます。これは消費者の信頼を勝ち取る取り組みであり、今後のビジネスにおける最重要項目の1つとなります。

3)これまでにない迅速さと俊敏さで実行する

今日のビジネスにおいて、経営者はかつてないほど「迅速であること」と「俊敏であること」が求められています。「テクノロジーと消費者を学習し続け」たうえで、「データを行動に変え」、得られたアウトプットを活用して今後の変化の全体像を捉え、迅速に意思決定することが重要です。

一方で、予測不能な事態に対して柔軟な対応ができる「俊敏であること」も不可欠ですが、精確な現状分析と実行のためには人材育成も必要となります。

レポートでは最後に、これら3つの成功要因を実現するために必要なアセットが「人材(ワークスタイルの選択肢の提供と評価制度の再構築)」「仕掛け」であることを明かしています。こうした取り組みを通じ、このレポートでは企業が環境適応能力の向上を提唱しています。

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